ダウ、カナダの農薬禁止で訴訟

| コメント(0)

Dow Agrosciences は10月22日、Quebec 州が同社の除草剤 2,4-D を禁止したのに対し、北米自由貿易協定(NAFTA)の第11章に基づいて、200万カナダドルの賠償を求めていることを明らかにした。

ケベック州は2003年に農薬の貯蔵販売使用を厳格に規制するための新農薬法案を発表した。
農薬の最小限で慎重な使用により、「ケベック州は健康と環境のために最も危険な農薬を禁止する、北米で最初の場所になる」とした。

この法律(The Pesticides Management Code)は2006年に成立した。

問題となったのは次の条項。
ほとんどの有害農薬について、ゴルフ・コースを除いて、公共、準公共の芝生、及び地方自治体の緑地帯で使用することを禁止。
ほとんどの有害農薬について、個人の芝生及び商用緑地帯で使用することを禁止。

禁止される農薬のなかに、2,4-D が含まれている。
農業用の使用は従来通り認められている。

The Pesticides Management Code の詳細は
   
http://www.mddep.gouv.qc.ca/pesticides/permis-en/code-gestion-en/index.htm

他の州や市町村も同様の規制を行なう方向にある。

Dowは、ケベック州は2002年に科学的根拠なしに、NAFTAの規定に違反して、2,4-Dに反対するキャンペーンを始めたと批判している。
重要な公共政策は科学的証拠、予見可能性、明確な原則に基づくべきで、透明な枠組みで運営されるべきだと主張している。

Dowでは、カナダでも米国でも欧州でも、2,4-D は科学的根拠に基づき、使用上の注意を守れば安全な農薬だと認められているとしている。
Health Canada Pest Management Regulatory Agency では本年5月2,4-D は芝生や農業用で、使用上の注意を守れば安全であるとの報告を行なった。

これに対して、カナダ環境のための医師連合では2,4-D といろいろの病気に関連があるとの科学的証拠があると反論している。

ケベック環境省では、禁止は科学的証拠に基づく、住民の福祉と健康のための予防措置であり、2,4-Dに対する姿勢を変える考えはないとしている。

.ーーー

NAFTA 第11章(「投資及び紛争処理」)は、加盟国の政策変更や規制強化が外国民間企業による訴訟の対象になるとする規定である。

もともとは投資の自由化や紛争処理に関する諸規則を定めており、その中の投資家の権利を国有化等から保護するために設けられている。資産を収用する場合は公平な扱いや補償支払いなど一定の義務を果たすことを定めている。

訴えは各国の裁判所ではなく、NAFTA の紛争処理パネルで決定される。

この規定が一般の法律に適用されて、当初は予期していなかったことが生じた。

カリフォルニア州が1999年に、MTBE がガソリンタンクからの漏洩等を通じて地下水を汚染しているとして、MTBE を段階的にエタノールに代える行政命令を発表した。
この行政命令に対してメタノールを米国内の子会社で製造しているカナダの
Methanex が、州政府の措置撤回と約10 億ドルの損害賠償金の支払いを求めてNAFTA 紛争処理パネルに訴えた。

メキシコでは米国のMetalcladは同社が買収した毒性廃棄物処理場の許可が地元の市や州から取り消されたとしてNAFTA に基づく訴えを起こした。

オハイオ州のS.D.Myer はPCB廃棄物をカナダから米国に輸出することをカナダ政府が一時的に禁止したことに対して損害を被ったとしてカナダ政府を訴えた。

デラウエア州のGL Farms はカナダがミルク販売で恣意的、差別的に干渉していると訴えている。

コネチカット州の Chemtura (旧 Crompton )はカナダが菜種(canola)の種子処理での農薬リンデン使用を禁止しているのを訴えている。

 


* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


コメントする

月別 アーカイブ