各社の中間決算が順次、発表されている。
2008年3月期には、石油化学各社は原料価格高騰分をフルに価格転嫁できず、減益となったが、9月中間決算では特に7-9月にナフサが大幅に上昇、これが転嫁できていないために、大幅な減益となっている。
既報のとおり、第4四半期にはナフサは大幅に値下がりする(60,000円/klを切る)ため、値上げへの需要家の抵抗は強く、中国市場では既に製品価格は下落しているため、下手をすると転嫁できないままとなる恐れもある。(7-9月にナフサは15千円/kl 弱のアップとなっているが、これはPE、PPでは30円/kgに相当する。)
各社は当然これは転嫁するという前提で年間予想をつくっている。(下記の通り、三井化学は年間の交易条件差をゼロとしている。)
各エチレンセンターは販売不振で減産に入っているため、価格転嫁が実現できない場合、大変なこととなる。
2008/10/31 第3四半期 国産ナフサ基準価格決定
住友化学と三井化学は棚卸資産の評価で後入先出法を採用している。
このため、最高値のナフサが全量、費用に落ちることとなり、売価に転嫁できない分がそのまま損失となる。
(逆に下期にナフサが下がると、下がった分がまるまる損益に反映される)
三菱化学や東ソーは総平均法を採用している。
この場合、上期は前期末の安いナフサとの平均で原価を計算し、売上原価も前期末の安い製品との平均で決まるため、損益への影響は緩和される。
(但し、下期はナフサ価格低下を受けて売価も下がるが、原価は9月末の高いものとの平均となるため、損益は悪化する)
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住友化学
単位:百万円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
07/9中 08/9中 増減 08/3 09/3
予想増減 基礎化学 79 -12 -91 106 -20 -126 石油化学 20 -101 -122 45 25 -20 精密化学 61 22 -40 114 75 -39 情報電子化学 -63 123 186 63 155 92 農業化学 108 123 14 209 235 26 医薬品 260 192 -67 465 310 -155 その他 22 -36 -58 37 -80 -117 全社 -5 -1 6 -15 - 15 営業損益合計 484 310 -174 1,024 700 -324
基礎化学、石油化学が赤字に転落した。基礎化学は合繊原料やメタアクリルを含む。
原料価格高騰、円高の影響が大きい。後入先出法の影響を受けている。なお、同社では下期のナフサ価格を54,000円/kl と想定している。
石油化学は下期で上期の赤字を取り消し、年間黒字予想としている。
情報電子化学は、偏光フィルムやカラーフィルターが生産能力の増強や生産性の向上が寄与して販売が大きく増加、大幅増益となった。
医薬品は研究開発費の増大で減益。
「ラービグ計画」は、2009年第1四半期の稼動開始を予定している。
サウジ・アラムコが運営してきたラービグの石油精製設備は、2008年10月1日をもって運営や修繕などの業務を含めPetroRabigh が全面的に引き継いだ。
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三井化学
単位:百万円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
07/9中 08/9中 増減 08/3 09/3
予想増減 基礎化学品 196 -2 -198 335 220 -115 機能材料 190 92 -98 359 190 -169 先端化学品 50 36 -14 108 90 -18 その他 14 -2 -16 34 -50 -21 全社 -23 -24 -1 -63 営業損益合計 427 100 -327 772 450 -322
機能材料(エラストマー、ウレタン材料等)、基礎化学品が大幅減益となった。
特に基礎化学品では〔変動費差+価格差〕の交易条件差が -150億円ある。(全社合計では-200億円)
同社も後入先出法の影響を受けている。
同社では年間の交易条件差はほぼゼロとしている。(下期の交易条件差は +200億円となる)
(前年との営業損益差は数量減 -120億円と 固定費増 -206億円)
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三菱ケミカルホールディングス
単位:百万円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
07/9中 08/9中 増減 08/3 09/3
予想増減 ケミカルズ 121 70 -51 109 70 -39 ポリマーズ 107 -5 -112 112 90 -22 エレクトロ・アプリケーションズ 168 106 -62 316 250 -66 デザインド・マテリアルズ 62 27 -35 97 80 -17 ヘルスケア 212 372 160 572 790 218 サービス 51 62 11 141 120 -21 全社 -56 -70 -14 -97 -150 -53 営業損益合計 665 562 -103 1,250 1,250 0
同社は今期からセグメントの組替を行った。
石油化学については、同社は総平均法を採用している。
上期では、製品と原料の価格差はケミカルズで-110億円、ポリマーズで-90億円あるが、総平均法による在庫評価益が162億円あり、減益幅が薄まった。(他に、数量差 -40億円、合理化・固定費差 -50億円など)
下期にはナフサ値下がりで逆に在庫評価損となるが、下期損益はケミカルズでゼロ(上期は+70億円)、ポリマーズは+95億円(上期は-5億円)となっており、当然上期の未転嫁分を下期に転嫁できると見ている。なお、本中間決算の営業外収益に昨年の鹿島事故の受取保険金 89.91億円が入っている。
ヘルスケアの増益は、2008年10月の田辺三菱製薬の合併に伴うもので、2008年上期の損益には田辺製薬分が入っていないことによる。これを加えると前年上半期及び前年年間と余り変わらない。
田辺三菱製薬 営業損益(億円)
07/3 08/3 増減 上期 下期 田辺製薬 305 184 ー ウエルファーマ 400 141 →田辺三菱 540 合計 704 725 21
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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