三菱レイヨン
各事業とも原燃料価格の高騰、円高の進行、期後半からの世界的な景気減速による需要減の影響を受け、減収減益となった。
上期損益は前年同期の109億円から1億円、年間損益は前年の143億円からゼロになる予想で、配当も昨年の年間11円を年間6円に減配する。
一般的には売価上昇により増収となる企業が多いが、同社の場合、アクリル繊維が中国市場需要減退、生産調整強化により、前年同期比-116億円の減収となった。同部門は赤字に転落する。
同社は退職給付会計の数理計算上差異を翌年度に営業費用計上しているが、前年度の損の半年分30億円を計上したのも影響した。
株式市場の低迷により、今後、各社とも(損益算入の方法により差があるが)影響を受けると思われる。
特別損失としてインドネシアの紡績会社(日本向け紡績糸供給基地)を売却し撤退する損失引当43.5億円を計上した。(後記)
単位:百万円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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同社は2006年3月期以降、退職給付会計の数理計算上差異の処理を変更し、前年度の差異を翌年度に一括営業費用に落としている。
2008年3月期は28億円の損が発生、前期分調整後、営業損益で-21億円(純損益で-12億円)の処理を行なった。
2009年3月期は同様に61億円の損が発生、営業損益で-60億円(純損益で-36億円)処理する。
営業損益対比 (億円)
07/9中 08/9中 増減 07/3 08/3 09/3
予想増減 化成品・樹脂 131 33 -98 387 223 87 -136 アクリル繊維・AN 15 -32 -47 22 7 -71 -78 炭素繊維・複合材料 67 20 -47 121 110 32 -78 アセテート・機能膜 16 7 -9 66 34 12 -22 全社 -1 1 2 1 0 0 0 合計 228 29 -199 597 375 60 -315 数理計算上差異を除外すると、以下の通りとなる。
営業損益対比 数理計算上差異除外 (億円)
07/9中 08/9中 増減 07/3 08/3 09/3
予想増減 化成品・樹脂 136 52 -84 295 236 125 -111 アクリル繊維・AN 15 -29 -44 1 10 -65 -75 炭素繊維・複合材料 69 25 -44 103 113 40 -73 アセテート・機能膜 16 10 -6 54 36 20 -16 全社 0 1 1 1 0 0 0 合計 235 60 -175 455 395 120 -275
前年上期対比の減益175億円の内訳は以下の通り。
原燃料価格 -122
販売価格 37(為替-39)
数量 -41
コストその他 -49
合計 -175
特別損失の事業整理損失引当金として、特別損失に4,352百万円を計上した。
インドネシアの紡績会社(アクリル繊維) P.T. Vonex Indonesia 保有全株式をインドネシア人実業家Choi Wijaya 氏に売却し、インドネシアにおける紡績事業から撤退する。
同社は1974年設立、三菱レイヨン97.3%、Choi Wijaya氏 2.7%(当初株主の双日から取得)の出資で、90年代以降、日本市場への紡績糸供給基地であったが、日本産地縮小により糸需要が減少、業績が悪化していた。
原料コスト上昇、世界的需要減退で事業環境が急速に悪化したため撤退する。2009年1月に経営権を譲渡、4月に株式を譲渡する。
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東ソー
単位:百万円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
07/9中 08/9中 増減 08/3 09/3
予想増減 石油化学 71 45 -26 150 76 -74 基礎原料 12 -8 -20 27 -90 -117 機能商品 207 66 -141 380 202 -178 サービス 17 18 1 34 32 -2 営業損益合計 307 120 -187 591 220 -371
前年同期比 -187億円のうち、
東ソー本体 -78億円(うち、売価差-購買価格差が-36億円)
連結子会社と調整が-108億円となっている。年間対比 -371億円は、
東ソー本体 -223億円(うち、売価差-購買価格差が-62億円)
連結子会社と調整が-148億円となっている。
基礎原料部門はVCM-PVCが中心で、機能製品部門にはウレタン原料がある。
同社はこれまでビニル・イソシアネート・チェーンに大きな投資をしてきたが、今後はこれらが足を引っ張る恐れがある。
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旭化成
ケミカルズの減益が大きい。
単位:百万円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
07/9中 08/9中 増減 08/3 09/3
予想増減 ケミカルズ 362 185 -177 652 435 -217 ホームズ 48 30 -18 214 230 16 ファーマ 77 102 24 127 150 23 せんい 35 17 -18 72 20 -52 エレクトロニクス 115 82 -32 222 140 -82 建材 21 8 -13 28 15 -13 サービス・エンジニアリング等 27 31 3 52 50 -2 全社 -49 -53 -5 -90 -90 0 営業損益合計 637 401 -236 1,277 950 -327
ケミカルズでは上期の前期比増減 -177億円の内訳は、
数量差 -23
売価差 216 (うち為替要因 -100)
コスト差等 -370
となっている。
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三菱ガス化学の上期の損益は、今後の日本の化学会社の損益の方向を示唆している。
・中国市場需要減退、生産調整強化による減収 | → | 日本市場の需要減退も、輸出は壊滅的に |
→ | それに伴う競争激化による値下げ競争 | |
・上期の原料価格未転嫁 | → | (競争激化による値下げ競争→) 上期の原料価格未転嫁分の転嫁も不可能に |
→ | 販売数量減、売価低下、減産によるコストアップで赤字に | |
・為替差損 | → | 円高で輸出及び海外事業損益で為替差損 |
・退職給付会計の数理計算上差異で損失処理 | → | 株価低落で損失増加 |
・事業整理損失 | → | 国内外での事業整理損失の増大 |
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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