BHP Billiton は11月25日、同社取締役会は最早、Rio Tinto 買収が株主の利益になるとは考えないと発表した。
内容は以下の通り。
・これまでも買収が株主の利益になるなら買収を進めるとしてきた。
・現在も統合のメリット、途上国経済の成長に伴う天然資源の需要増について見方を変えてはいない。
両社のカルチャーは似ており、主な資産やインフラはオーバーラップしており、この組み合わせは素晴らしい。
・しかし、最近の世界経済の悪化と、その結果のコモディティ価格の低下がリスクを変えた。
・BHPはバランスシート面の強みを重視しており、統合による負債の増加及び資産売却が困難になったことがリスクを増やした。
・米国と豪州の独禁法当局は買収を認めたが、EUは鉄鉱石と原料炭の資産売却を要求すると思われる。
通常なら、しかるべき対応は可能である。
しかし、現在の状況下では、決められた期間内に正当な価格で資産売却が出来るかどうか分からない。
買収コストとリスクを増やす可能性がある。
・EUが対応策を要求しても、BHPはこれに応じない。その場合EUは買収を認めないであろう。
・このほか、以下の点が問題である。
・統合会社の負債が大きいが、短期的な情勢悪化により運営資金と返済資金が十分かどうか。
・Rio Tinto がやろうとしている非コア事業の売却ができるかどうか。
・もし、BHPが対応策を出さなくともEUが買収を認めた場合、BHPは株主総会に買収提案をすることが必要になる。
その場合は、取締役会としては株主に対し、これに反対するよう要請する。
・この18ヶ月の買収関係費用 450 百万ドルは2008年下期に費用処理する。
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2007年11月、BHP Billiton はRio Tinto に対し買収提案をしたことを発表した。
Rio Tinto の株式1株に対してBHP株3株を与えるという案で、1,400億ドル以上に相当するが、Rio はこの条件が同社の現状、将来性を考えると著しく安すぎるとし、拒否した。
2007/11/15 BHP Billiton がRio Tinto に買収提案
2008年2月6日にRio Tinto に対し買収提案を行なった。当初の案を修正し、BHP株3.4株としたが、Rioはこれを拒否した。
2008年5月30日、BHP Billiton は European Commission に対し Rio Tinto 買収の事前届出を行なった。
2008/6/6 BHP Billiton、EC に Rio Tinto 買収の事前届出
米国と豪州の独禁法当局は買収を問題なしとしたが、EUは異議告知書を送付した。来年1月に結論を出す。
中国と日本の独禁法当局も審査を行なっている。
公取委は11月14日、BHP Billiton から買収計画などの資料を受け取っている。
2008/10/3 豪州の独禁法当局、BHP Billton の Rio Tinto 買収にOK
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今回の売却断念に関し、豪州紙は次のような分析を行なっている。
・ | 両社の株価はこの3週間でそれぞれ、ほとんど30%下落している。 しかし、両社が似たような事業形態のため、買収条件は「Rio Tinto の株式1株に対してBHP株3.4株」という相対的なもの。 このため、株価下落は直接には影響しない。 コモディティ価格の下落も、シナジー効果を相対的に増やすことになる。 |
・ | 問題はRio Tinto が380億ドルでAlcan を買収した結果、Rioの負債が420億ドルとなっていることで、これまではBHPは余り懸念していなかった。 |
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・ | Rio は元々、非コア事業、特にAlcanの包装事業を売却して負債を減らすことを検討していた。 |
売却は最初は順調だったが、先月になり、本年末までの100億ドルの売却目標の達成が困難で、総額150億ドルの売却計画を見直す必要があると認めた。 | |
・ | 金融危機により、目標価額での売却は困難で、売却先も見つからない状態。 合併条件として資産売却を求められても、同様のことが起こる。 |
・ | Rioは更に、来年10月にはAlcan買収の借入金のうちの90億ドルの借り換えが必要となる。 |
・ | BHP自体は85億ドルしか借入金がないのに、Rioの420億ドルの借入金を自身のBSに載せるのかという問題に直面、今回の断念に至った。 |
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日本鉄鋼連盟会長の宗岡正二・新日本製鉄社長は25日、「欧州委員会から異議告知書が通知された段階で、BHPが買収を断念したことを歓迎する」とコメントした。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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