三菱レイヨン、Lucite を買収

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三菱レイヨンは11月11日、世界最大手のMMAメーカー、Lucite International Group Limited の発行済み株式の全てを取得し、連結子会社化するための株式売買契約を締結すると発表した。
Lucite も同日発表を行なった。

       2008/9/5 MMAメーカー Lucite、売却か? 

買収概要は以下の通り。

・Lucite International Group Limited 全株式を買収

所有株式数
(千株)
持分比率
(%)
Funds managed by Charterhouse Capital Partnership  7,794  81.6
Ineos Investors  1,100  11.5
ルーサイト社の取締役  350   3.7
AMJ   206  2.2
米国ルーサイト社従業員  54  0.6
Halifax EES Nominess International Limited   52  0.5

・買収費用総額(予定) 16億USドル既存外部借入金の引受けを含む

  買収費用は三菱東京UFJ銀行による融資で賄う。

スケジュール 2008年11月11日 株式売買契約締結、
           関係当局認可を経て、2009年1月本件買収完了予定

・将来の新興市場への展開等での更なるシナジーを求めて、戦路的事業パートナーの参画を募る予定。
    三菱レイヨンがマジョリティ保有。出資比率、出資タイミング等は調整中。

 

同社は買収目的を次のように説明している。

①MMA市場におけるリーディング企業の実現

MMAモノマー能力シェア
2007/末 2010/末
三菱レイヨン   12%   14%
Lucite   23   22
(合計)  (35)  (36)
住友化学     6    8
LG MMA    3    5
(合計)    (9)  (13)
旭化成    3    5
R&H (Dow)   15    13
Evonik (旧Rohm   14   12
Arkema    6    5
その他   18   17
* 2007年 310万トン
  
三菱レイヨン 第6次中期経営計画より

MMA業界に関しては 2006/4/13  MMA事業の拡大 

②米欧アジアでのバランスの取れた三極生産体制を確立

Lucite:欧州(旧 ICI)、米国(旧 DuPont)、上海、シンガポール(アルファ法)
三菱レイヨン:日本、タイ(サイアムセメントJV)、中国恵州、韓国(湖南石化JV)、米国(計画)

東欧、ロシア、南米など成長の期待される新興市場への展開を加速

③MMA製造技術の拡幅(新エチレン法の獲得)

LuciteACH法、新エチレン法(アルファ法)
三菱レイヨン:直酸法(C4法)

Lucite は11、シンガポールのアルファ法プラントが予定より早くスタートしたと発表した。
能力は12
万トン

同社は2番目のアルファ法プラント建設の検討を進めている。能力は25万トン

④買収シナジーの発現

ーーー

Lucite と三菱レイヨンは20056月にMMA事業での提携契約を締結した。
両社は投資を分担し、相互に製品を供給すること、将来両社工場を
JVとするための検討を行なうこととした。

1. 北米 建設: 三菱レイヨン
  場所: テキサス
  規模: MMA及びMAA(メタクリル酸)14万トン
  製造法: C4法
  時期: 2009年末完工、2010年商業運転

2. アセアン 建設:
Lucite International
  場所: シンガポール
  規模: MMA12万トン
  製造法: アルファ法(C2法)
  時期: 2007年末完工、2008年商業運転

ーーー

Lucite 2006年に売却を検討した。三菱レイヨンも交渉を行なったが、当時の売値は20億ドル~25億ドルで、価格が折り合わなかった。

同社はシンガポールのAlpha 法プラントの立ち上がるのを待って、希望価額での売却か、又は上場を狙った。

しかし、今回の金融危機で情勢が変わった。

Lucite Moody の格付けで Caa1 というジャンク級に下げられた。
また、
Lucite を狙う会社は多いが、買収資金の手当が難しくなった。

最後は、サウジのSipchem Lucite技術を導入してANM 200千トン、MMA 250千トンを事業化する)がサウジの投資会社Jadwa Investment と組んで三菱レイヨンと争ったが、三菱UFJから資金を確保した三菱レイヨンが買収した。

買収にはLucite の債権者の同意を必要とするが、最近は欧州のLBOの債権は平均して額面の65.8%でしか売れない状況で、今回は額面で引き取ってもらえるため、全く問題はないとされている。

逆に三菱レイヨンにとっては、最近の英ポンド安、ドル安により、非常に安く買収できたこととなる。

買収額の16米ドルは10億英ポンド強となる。
2008年7月初めには210円/ポンドであったが、11月上旬には155円/ポンド程度となっており、2,100億円が1,550億円に下がることとなる。

 


* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

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