本年度の鉄鉱石価格は大幅に上昇した。
鉄鋼大手各社は2月に、2008年度の鉄鉱石(ブラジル産)について、資源最大手Vale do Rio Doce との間で前年度比65%の値上げで合意した。
1トン当たりの価格は80ドル弱となり、07年度と比べ約30ドル上昇する。鉄鉱石の値上げは6年連続。
2008/4/8 鉄鋼原料価格 急騰
スポット価格は140ドルにもなっており、この価格はそれでも非常に安いものであることが分かった。
6月23日にRio Tinto は宝鋼集団向けの価格(単位:cent/dry metric ton unit)が下記の通り決定したと発表した。
2007 2008 粉状鉱 80.42 144.66 79.88%up 塊状鉱 102.64 201.69 96.5%up
dry metric ton unit は含有鉄分1%当たりの鉄鉱石価格。
豪州産ヘマタイト系鉄鉱石には通常、鉄分64%程度、ブラジル産ヘマタイト系鉄鉱石には同66.50%程度が含まれている。
参考までに日本・韓国向けの上記Vale の価格(cent/dry metric ton unit)は次の通りで、Rio の中国向け価格より20%程度安い。
2008 Southern System fines 118.98 65%up
Vale do Rio Doce はRioとの値上げ幅の差の解消を狙い、日本や中国の鉄鋼メーカーに10月出荷分から1~2割の追加値上げを求めた。
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しかし、中国では経済減速に伴い鉄鋼需要が頭打ちとなった。
鉄鋼大手は相次ぎ減産を打ち出しており、鉄鉱石の需要も落ち込んでいる。湾港倉庫の鉄鉱石在庫が増加している。
11月4日の中国紙は、Vale が中国向け鉄鉱石の12%追加値上げ要求を撤回したと報じた。
日本向けも値上げ要求を撤回するとみられる。
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オーストラリア資源中堅のMount Gibson Iron はこのたび、中国鉄鋼大手の首鋼集団(Shougang Group )と1トン当たり40米ドルで鉄鉱石(塊状、粉状とも)の売買契約を結んだ。
同社は中国の日照鋼鉄などと長期契約(上記のRioの宝鋼集団向け価格と同価格)を結んでいるが、このうち数社から10ー12月期の出荷見合わせを要請され、11月に入って3社から契約破棄を通告されたという。
11月7日の日本経済新聞では、塊状201.69ドル、粉状144.66ドルから40ドルに(最大80.2%)の値下げとなっているが、これは価格のcent/dry metric ton unit を$/tと誤ったもので、粉状でみると、96ドルから40ドルへの値下げとなる。
同社は首鋼集団への安値での鉄鉱石販売とともに、首鋼集団からの出資も受け入れる。
中国首鋼グループ傘下の2社が1億6250万豪ドルを出資し、1株 0.6豪ドルでMount Gibson Iron の株式を購入し、支配権を得る。
これにより、今後の鉄鉱石供給を確保する。
首鋼グループは今年年初、鉄鉱石の供給を保障するねらいで、Mount Gibson Iron の株式を1株 2.60豪ドルで買い上げ、同社の支配権を獲得しようとした。
この時はオーストラリアの監督部門が公開買付を求め、阻止した。
しかし、金融危機により、同社の株価は下落を続けたため、今回、年初の23%の株価で買収することとなった。
この鉄鉱石の大幅値下げは他にも波及すると思われる。
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