韓国 ウオン安続く、通貨オプションで損失続出、石油化学は苦境

| コメント(0)

少し前まで、日本の円安とは異なり、韓国ではウオン高が続いていた。

2000年頃には1ドル1,300ウオンであったが、2006年には970ウオンとなり、その後も900ドルウオン程までウオン高となった。

2006/8/26 韓国の上場企業、10社中3社が赤字 

しかし、今年の3月後半から急にウオン安となり、1,000ウオン/ドルを超え、8月から急落、10月には1,400ドル/ウオンを超えた。
韓国政府は1兆円の経済対策を発表するなどし、一時1,200ウォン台に戻したが、再び下落し続けている。


<p><p>HTML clipboard</p></p></p>

付記 対日本円では半分になった。(100円800ウォンが1600ウォンに)

<p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p>

これが、多くの企業に思わぬ損害を与えている。

サムスン電子の主要納品業者の泰山LCDは9月に会社再生手続きを申請したが、11月14日、2008年3Qの業績を発表、為替ヘッジ用の通貨オプション商品に関連して6,092億ウォン(約420億円)の損失を計上したことが明らかになった。

損失規模は自己資本の88倍に相当し、昨年の年間売上高に匹敵する金額で、60年分の利益に相当する額の損失をわずか3カ月で出したことになる。

ーーー

2007年頃にウォン高が進み、ほとんどの外為専門家がさらにウォン高になると予想した。

このため、韓国の中小輸出業者は製品を売る際、為替ヘッジに死活を賭けた。

2005年頃にCitiBankが設計し、韓国に紹介した「KIKO」(Knock-in, knock-out)という通貨オプション商品が韓国で流行した。

「KIKO」は約定期間の1年から2年の間に為替が一定の範囲内だけで動けば、企業は一定額のドルを市場よりも高く銀行に売って利益を得ることができる。

初期にKIKOに加入した企業は、商品設計通り実際にウォン高ドル安になったことから為替差益を得た。

それ以降、KIKOは為替ヘッジ商品として知られるようになり、昨年からは外資系銀行や韓国の多くの銀行(国営の産業銀行まで)が競い合うようにKIKO関連商品を発売、契約は急増した。

 

実際にはこの商品は、ウォンが約定額を超えて安くなると、契約額の2倍から3倍にもなるドルを市場で高く買い取り、当初契約を行ったよりも安いレートで銀行に売らなければならない。

為替の変動で企業が得る利益には制限がかかっている一方で、損失は無限大に責任を負わなければならないという奇怪な構造だが、銀行はこれを「先端的な金融技法を活用した安全な為替リスク回避型の商品」と宣伝し、企業に対し融資を行う代償として半ば強制的に購入させたという。

この金融商品を売る際、リスクについてきちんと伝えなかったり、手数料や証拠金なし、としていた。実は別の名目で商品の中に手数料を忍び込ませていた。

しかし最近のように毎日、大きくウォン安が進む状況では、企業の損失は際限なく膨らんでしまう。
泰山LCDはこれで大きな損失を計上した。
金融監督院は10月初めに、「KIKO」が原因での被害額について、520社で5兆ウォン(約3,580億円)に達すると推定している。

「KIKO」により損失を被った120社余りが10月末にシティー、 SC第一、新韓、外換銀行など計13行を相手取り、訴訟を起こす意向を明らかにした。さらに被害企業を募集し、第2次訴訟を進めていく。<p><p><p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p></p></p>

ーーー

韓国の石油化学は2006年にはウオン高で苦しんだ。
今回はウオン安で輸出比率が多い韓国の石油化学にとり有利な筈である。

しかし、
米国発の金融危機が中国の景気悪化を通して、韓国石油化学業界に直撃弾を与えた。

1116日の朝鮮日報は以下のように伝えている。

韓国の石油化学各社にとって最大の顧客だった中国の需要不振が最も大きな原因で、中国では先月、世界最大規模のおもちゃ会社「合俊」が不渡りを出すなど、中小の輸出企業が続々と倒産している。

この結果、石油化学製品の価格は急激に落ち込み、麗水NCCでは、「最近、合成樹脂の価格が大きく落ち込み、これらの原料となるエチレンやプロピレンの価格を上げられずにいる。いきなり市場が消えてしまったような感じだ」としている。

SKエナジーは1973年に竣工して以来35年目にして初めてエチレンプラントを停止した。
LG化学も減産に入り、麗川NCCも30%の減産措置を断行した。
ロッテ大山石油化学(来年1月2日にロッテの湖南石化と統合)は最近、稼働率を90%から70%に下げた。
湖南石化も、
エチレンの稼働率を30%に下げることを検討している。

SKエナジーでは「石油化学製品は作れば作るほど損になるため、各社とも工場を稼動できずにいる。市場が上向くのを待つほかない状況だ」と語っているが、同社の野積み場には買い手がつかない合成樹脂の在庫があふれている。
麗水の石油化学各社も、工場の周辺や道路のあちこちに在庫品を3メートルもの高さにまで積み上げているという。

さらに、サウジアラビアやイランなどが新設・増設した石油化学工場を稼動させ始める年末からはエチレンなどの価格下落が予想されており、石油化学業界では当分の間、工場の稼動正常化は難しいだろうと懸念している。<p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p>

 

日本の石油化学にとって、対岸の火事ではない。



* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


コメントする

月別 アーカイブ