バイエル・マテリアルサイエンスは11月17日、上海のBayer Integrated Site で2つ目の塩素リサイクル工場を建設すると発表した。
住友化学からライセンスを受けた塩酸酸化技術を使用して、イソシアネート生産時の副生塩酸を塩素にするもので、建設中の年産25万トンのTDIプラントの原料として供給する。
バイエル・マテリアルサイエンスは上海では既に、同社とUhdeNora (Uhde とイタリアのde Nora SpA のJV)が共同で開発したOxygen Depolarized Cathode (酸素還元カソード)法の塩酸電気分解設備をスタートさせており、塩素を年産35万トンのMDI(本年10月稼動)の原料として供給している。
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塩素は、イソシアネートやエピクロルヒドリンなど各種塩化物の合成に使用されているが、これらの製造過程では、通常、塩酸が副生される。
TDIの製法
トルエン→ジニトロトルエン→TDA(Toluylene diamine)
TDA +ホスゲン(塩素+CO)→TDI+塩酸MDIの製法
ベンゼン→ニトロベンゼン→アニリン
アニリン+フォルムアルデヒド→MDA (Methylene dianiline)
MDA +ホスゲン(塩素+CO)→MDI+塩酸
副生塩酸は、35 %塩酸として販売したり、VCMのオキシクロリネーション法の原料として有効利用している。
(東ソーのビニル・イソシアネート・チェーンでは日本ポリウレタンのMDIからの副生塩酸とエチレンでEDCを生産し、VCM原料としている。)
しかし、ウレタンとVCMの需要の伸びの差などから、副生塩酸の処理に困っているのが現状である。
塩酸を塩素に転換する技術としては、三井化学の塩酸酸化法(MT クロル法)や、上記の塩酸電気分解法があるが、設備投資額、運転コストの面でさらなる向上が望まれていた。
住友化学の塩酸酸化技術は高活性酸化触媒使用を用いて効率的に塩素に転換する技術で、低温下で高い触媒活性があるため、固定床反応器の使用が可能となり、スケールアップ、設備投資額の面で優れている。
省エネルギーでかつ環境に優しいプロセスとして、2005年にグリーン・サステイナブルケミストリー賞を受賞するなど、国内外から注目を得ている。
2002年に日本で最初のライセンスを行い、2006年には三菱化学にもライセンスしている。
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バイエル・マテリアルサイエンスでは、この2つの技術を結びつけ、イソシアネート生産でのコスト面での指導的地位を強化することとなるとしている。
また、著しい省エネが可能となり、温暖化防止にも役立つとしている。
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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