INEOS は2006年10月、欧州でバイオディーゼル事業を積極的に展開する戦略を発表した。
第一段階として、2012年までに200万トン、うち2010年までに120万トンを生産する。
これは欧州各国のグリーン燃料を増やすという方針に合致したもの。
INEOSは欧州で予想されるバイオディーゼルの需要の急増に対応する最初の全欧州のサプライヤーになるとし、最新の技術で高品質で競争力のあるワールドスケールの工場を建設するとした。
スコットランドではGrangemouth に90百万ドルを投じて最低50万トン/年の工場を2008年までに稼動させる。
このほか、ベルギーのAntwerp 、フランスのLavera、ドイツのWilhelmshaven 又はCologne での投資を考えている。
これは消費地の近くで生産を行なうという方針に基づくもの。
同社は既にフランスのBaleycourt (菜種油の産地)で10年以上、バイオディーゼルを生産しており、2008年にこれを増設する。
Grangemouth と Lavera にはINEOSの製油所があり、Grangemouth では超低硫黄のディーゼルとガソリンをスコットランドとイングランド北部に供給しており、Lavera の石油製品はフランス、スイス、ドイツ南部に供給している。
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2006年12月には同社はAntwerp での建設計画を発表した。
90百万ユーロを投じ、少なくとも50万トン/年のプラントを建設する。
工場ではバイオディーゼルの副産品のグリセリンを使用する。また、第三者による新しい食用油抽出工場を近くに建設する計画で、同地をバイオの中心地(Bio-hub)とする。
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しかし、同社は本年11月28日、現下の経済情勢のため、上記の欧州でのバイオディーゼル4工場の建設を棚上げすると発表した。
今後も景気後退が続くと考え、全事業にわたり、コストと投資の管理を厳しくする。
Ineos ではバイオディーゼル計画をやめるのではなく、経済情勢をみて延期するだけだとし、既存のフランス Baleycourt の増設は予定通り進めており、年末には22万トンになるとしている。
借入金で買収を行い拡大を続けてきたIneos は金融危機で格付けが引き下げられ、需要の激減の結果、金利の支払いにも苦しんでおり、銀行団に半年間の金利支払停止を要請した。
2008/11/19 Ineos の状況悪化
ここにきて、従来の既存事業を担保にした借入金での買収・新増設による拡大という事業モデルは破綻した。
拡大をやめるだけではなく、多くの事業の売却が必要とする見方が多い。
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EurObserv'ER の「Biofuel Barometer 2007」によると、2006年の欧州のバイオ燃料の消費量(石油換算)は以下の通りで、バイオディーゼルは前年比で80%増となっている。
うち、ドイツが63%を占めている。
ドイツではバイオ燃料への完全な免税措置が実施されているのが大きな理由。(フランスでは一部免税)
単位:千トン(石油換算) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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http://www.energies-renouvelables.org/observ-er/stat_baro/barobilan/barobilan7.pdf * 欧州委員会の換算率: |
全燃料のうち、バイオ燃料の比率は2005年が1%、2006年が1.9%となっている。
但し、EUのうち2006年のバイオ燃料の消費量が10万トンを超えるのはドイツ、フランスのほかは、オーストリア(285千トン)、スウェーデン(229)、イタリー(177)、英国(177)、スペイン(169)の合計7カ国に過ぎず、1万トン未満が10カ国もある。
EUは2010年の輸送用燃料のバイオ燃料の占める割合の目標を5.75%としているが、目標達成には多くの難関がある。
現在のEU 最大のバイオディーゼル生産企業は、フランスのDiester Industrie で、2006年の生産能力は約71 万トンだったが、2008 年末には総計200 万トンあまりの生産能力を持つことになる。
EU のバイオディーゼルの原料として主に菜種油で、80%を超えている。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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