新日本石油と新日鉱ホールディングス、経営統合

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国内石油元売り最大手の新日本石油と同6位の新日鉱ホールディングスは12月4日、経営統合すると発表した。

経営統合は次の3点を基本コンセプトとして行う。

(1) 石油精製販売、石油開発および金属の各事業を併せ持つ世界有数の「総合 エネルギー・資源・素材企業グループ」へと発展することを目指す。
(2) 「ベストプラクティス」をキーワードとして、収益性の高い部門に経営資源を優先配分することにより企業価値の最大化を図る。
(3) 石油精製販売事業については、経営統合により初めて可能となる劇的な事業変革を早期に実現する。

統合手続は以下の通り。なお、経営統合比率(株式移転比率)は、今後、両社で協議の上、決定する。

(1)2009年10月に共同持ち株会社を設立して両社を傘下に入れる。

(2)2010年4月に双方の事業を分野別に完全統合する。
 1)石油精製販売:新日石とジャパンエナジーの石油精製販売事業を統合
 2)石油開発事業:新日本石油開発とジャパンエナジーの石油開発事業を統合
 3)金属事業:日鉱金属を中核事業会社と位置付ける。

両社の合併で、年間売上高13兆円強、国内ガソリン販売シェア36.5%を握る世界8位の石油会社が誕生する。

国内のガソリン販売量シェア
   
新日石+ジャパンエナジー 36.5%
①新日石 25.7%
②エクソンモービル 17.7%
③昭和シェル石油 16.7%
④出光興産 14.7%
⑤コスモ石油 11.6%
⑥ジャパンエナジー(新日鉱HD)  10.8%
 * 新日石は今年10月に合併した九州石油を含む

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石油精製販売事業を中心として、全ての事業部門において公平かつ客観的な観点からあらゆるコストを点検し、聖域なき合理化・効率化を推進するとともに、経営統合によるシナジーを発揮して、少なくとも年600億円以上の統合効果を実現、継続的にその上積みを図って年1,000億円以上を目指すとしている。

統合後に計10カ所になる製油所や、約1万3千カ所のガソリンスタンド網を統廃合し、余剰設備を解消して収益力拡大を目指す。
西尾・新日石社長は「2年内に石油の精製能力を40万バレル(両社の能力の2割に相当)削減する」と述べた。
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国内の石油事業の経営基盤を強化すると同時に、新エネルギー事業や海外での資源開発を加速し、総合エネルギー企業を目指す。

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新日鉱ホールディングス

1929年                          日本鉱業設立
1965年 日本鉱業、アジア石油、東亜石油の民族系3社の
販売部門を集約、共同石油設立
 
1992年 日本鉱業と共同石油が合併、日鉱共石が発足 日本鉱業から金属部門を分離、日鉱金属設立
1993年 日鉱業共石をジャパンエナジーと改称、
JOMOブランド展開
 
1999年   日鉱マテリアルズ設立
(ジャパンエナジーの電子材料事業再編)
2002年  新日鉱ホールディングス設立
2003年   日鉱金属加工設立
(日鉱金属から金属加工・精密加工事業を継承)
2006年   新「日鉱金属」設立
(日鉱金属、日鉱マテリアルズ、日鉱金属加工
を統合)

ジャパンエナジーは鹿島石油70.675%を所有(コスモ石油から17.15%を譲受)
ジャパンエナジーは富士石油の
25%を所有していたが、AOCホールディングス(アラビア石油+富士石油)設立で売却

新日鉱ホールディングスは昭和シェル石油と「JSイニシャティブ」を結び、統合を検討していた。

新日本石油

1888年 日本石油設立  
1999年 三菱石油と合併、日石三菱スタート コスモ石油と業務提携
2001年 「ENEOS」ブランド  
2002年 新日本石油に改称 日石三菱精製、興亜石油、東北石油の3社が合併、
新日本石油精製がスタート
2006年   ジャパンエナジーと業務提携
2008年   <p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p>新日本石油精製が新日本石油化学を統合
九州石油を統合
(新日鐵、丸紅、昭電その他から持株を買収)

<p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p>新日本石油精製の100%を所有
日本海石油の66%を所有
和歌山石油精製の50%を所有していたが、2001年に停止

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新日本石油および新日鉱ホールディングス社の概要は以下の通り。

商 号 新日本石油 新日鉱ホールディングス
上流 生産量 4.5万BD (2007年平均) 1.6万BD (2007年平均)
埋蔵量 708百万Bbl (2007年12月末現在) 110百万Bbl (2007年12月末現在)
原油輸送 タンカー隻数 VLCC 22隻(2008年12月1日現在) VLCC 9隻(2008年12月1日現在)
精製供給 グループ製油所
原油処理能力
(2008年12月1日現在)
               (千BD)
室蘭製油所          180
仙台製油所          145
根岸製油所          340
大阪製油所          115
水島製油所          250
麻里布製油所         127
大分製油所          160
富山製油所(日本海石油㈱) 60
合計             1,377
               (千BD)
水島製油所          205
鹿島製油所(鹿島石油㈱) 270






合計              475
製品輸出数量
(外貨ジェット、ボンド重油を除く)
425万KL(2008年3月期)※ 51万KL(2008年3月期)
物流 油槽所数 49ヶ所 (2008年12月1日現在) 15ヶ所 (2008年12月1日現在)
販売 燃料油国内販売量
販売シェア
5,613万KL(2008年3月期)※
25.7%※
2,276万KL(2008年3月期)
10.8%
特約店数
SS数
635社 (2008年9月末現在)※
10,242ヶ所 (2008年9月末現在)※
320社 (2008年9月末現在)
3,441ヶ所 (2008年9月末現在)
石油化学 パラキシレン生産能力
ベンゼン生産能力
プロピレン生産能力
160万㌧/年(2008年12月1日現在)
80万㌧/年(2008年12月1日現在)
90万㌧/年(2008年12月1日現在)
102万㌧/年(2008年12月1日現在)
52万㌧/年(2008年12月1日現在)
9万㌧/年(2008年12月1日現在)

                      ※2008年10月に統合した九州石油分との単純合算ベース

(金属)

  新日鉱ホールディングス
上流                        (万㌧/年)
エスコンディーダ銅鉱山(チリ) 2.0%  2.1
コジャワシ銅鉱山(チリ)     3.6%   1.8
ロス・ペランブレス銅鉱山(チリ)15.0%  5.1
                      ーーー
グループ権益生産量(銅量)        9.0
 ※%は日鉱金属出資比率
中流(銅製錬)                        (万㌧/年)
パンパシフィック・カッパー
 佐賀関製錬所および日立精銅工場  45
 玉野製錬所 ※              16
LS-ニッコー・カッパー(韓国)
 温山工場                  51
                       ーーー
グループ製錬諸能力            112
 ※パンパシフィック・カッパー出資分
下流 電材加工事業
 磯原工場(半導体用・FPD用ターゲットなど)
 白銀工場(圧延銅箔、電解銅箔など)
 倉見工場(コルソン合金など)

環境リサイクル事業
 日立工場

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石油開発:
 新日本石油開発
   

 ジャパンエナジー石油開発   

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日本の石油産業の再編の歴史

第1波 1985 昭和シェル石油発足(昭和石油とシェル石油が合併)
     1986 コスモ石油発足(大協石油、丸善石油、旧コスモ石油が合併)
     1992 日本鉱業と共同石油が合併、日鉱共石(のちジャパンエナジー) 

第2波 1999 日本石油と三菱石油が合併、日石三菱に
     2000 東燃とゼネラル石油が合併、東燃ゼネラル石油に
     2002 エッソ石油とモービル石油が合併、エクソンモービルに

第3波 2007 アブダビ首長国の投資機関がコスモ石油筆頭株主に     
     2008 ペトロブラス(ブラジル)が東燃シェル傘下の南西石油を買収 
     2008 新日石が九州石油を吸収合併 
     2008 新日石と新日鉱が統合発表 

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日本経済新聞によると、今回の合併の経緯は以下の通り。   

新日石は統合による規模拡大を検討していた。   

当初、同社はコスモ石油を統合相手として検討した。
      2位のエクソンモービルは大きすぎ、公取委の承認を得られない。
      3位の昭和シェルはシェルが離さないだろう。
      4位の出光は独立志向
   

しかし、コスモ石油はアブダビの出資を受け入れた。   

このため、相手は新日鉱のみとなった。
新日鉱も国内市場の急速な縮小を前に、単独での生き残りが難しいとの認識は強めていた。
   

「エクソンモービルが日本事業を手放したがっている」との情報が業界を駆け巡った。
公取委は2007年春に合併審査の新指針を施行。審査で重視する指標を「寡占度指数」に変えた。
他社が先に再編を仕掛けて市場の寡占度が上がると、残る企業はM&Aのハードルが高くなる。
このため、新日石は合意に向けた作業を加速した。

 


* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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