三菱化学は12月5日、自社開発した触媒を用いてブテン類からブタジエンを製造する新技術を開発、工業化技術確立の目処が付いたと発表した。
ブタジエンの主な用途は合成ゴム原料などで、最近、自動車タイヤ用途を中心としてその需要は拡大している。
通常、ブタジエンはナフサ分解から得られるC4 留分から抽出する。
C4留分 ブタジエン Return C4 イソブチレン ブテン-1 ブテン-2 ブタン
ブタジエン抽出後のC4留分の約30%を占めるブテン類は種々の用途に使用されるが、燃料やナフサクラッカー原料として消費される量も少なくない。(イソブチレンは直酸法MMAの原料として使われている)
新技術は、このブテン類を原料としてブタジエンを製造するもの。
ナフサ分解によって得られるブテン類だけでなく、石油精製におけるFCC(流動接触分解)設備(次世代FCC設備を含む)から得られるブテン類にも適用可能。
参考
新日本石油化学(現 新日本石油精製)はナフサ分解及びFCCからのブテンをOCT設備でプロピレンに変換している。
2006/9/15 新日本石油化学、OCTプロピレン設備完成
ブタジエンをナフサ分解C4留分からの抽出以外の方法で製造する技術で現在商業的に実施されているものはほとんどなく、同社では自らブタジエンの製造を行うことを検討するとともに、国内外の多くのナフサ分解炉、FCC 設備からのブテン類を利用してブタジエンを製造することを企図する会社への技術供与も併せて検討する。
同社はブタジエンを原料とする1,4-ブタンジオールとその誘導品(C4 ケミカル製品)事業を成長戦略のための集中事業の一つに位置付けている。浙江省寧波でのPTMG 2.5 万トン計画は予定通り2009年3Qに完成する。
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1,4-ブタンジオールは通常、アセチレンをホルムアルデヒドと反応させて1,4-ブチンジオールとし、これを水素化して生産する。
最近は、下記のようにブタン→無水マレイン酸から作る。
SABICのOSOS PetrochemicalとのJVケース
三菱化学は1982年にブタジエンを原料とする製法を工業化した。
パラジウム触媒と酢酸で 1,4-ジアセトキシ化した後、還元、加水分解を経て 1,4-ブタンジオールを得るもの。
同社は四日市に同法での1,4-ブタンジオール 11万トンと、PTMG 3.5万トン、PBT 7万トンのプラントを持つ。
同社は1997年にブタジエン法の技術をBASFにライセンスした。
BASFは蔚山工場に1.4BG/THF併産の製造設備(年産能力50,000トン)を建設、三菱化学は1万トンの引取権を有している。
BASFは、ドイツ(Ludwigshafen)とアメリカ(Geismar)でアセチレン法で生産している。(生産能力合計 255,000トン)
また、出光とのJVのBASF出光(BASF67%/出光33%:千葉)で25千トンの生産を行なっている。なおBASFは上海で、テトラヒドロフラン(THF)を、1,4-ブタンジオールを通さずに、直接ブタンから製造するプラントを建設したが、技術的理由で停止し、1,4-ブタンジオールも使用できるように改良した。
当初 ブタン→THF
改善 ブタン→無水マレイン酸→1,4-ブタンジオール→THF
三菱化学はまた、台湾の南亜プラスチックに技術ライセンスを行い、1,4-ブタンジオール3万トンの引取権を有している。
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