Pfizer、Wyeth を買収

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世界第一位の医薬会社 Pfizer が1月26日、Wyeth 680億ドルで買収すると発表した。数ヶ月にわたって買収交渉を続けていた。

買収は現金と株式交換の組み合わせで行われ、Wyeth 1株に対し、現金33ドルとPfizer 0.985株を支払う。23日終値ではPfizer株部分は17.19ドルに相当する。
Pfizer は現金部分については自己資金と借入金で賄う予定で、コンソーシアムが既に225億ドルの融資を約束している。

Pfizer は昨年9月末現在で現金・短期運用資産で255億ドルを有しており、世界でもっともcash-rich な企業のひとつである。
金融危機のなか、他の業界の企業が資金借り入れに四苦八苦しているが、現金が豊富な医薬会社は唯一借り入れが可能である。

Pfizer のベストセラーのコレステロール薬 Lipitor (2007年の売上高137億ドルで、同社の年間売上高の30%を占める)が2011年の特許切れを迎え、generic 薬に売り上げを奪われることが懸念されるが、買収により売り上げ減少のいくらかを補うことが出来る。

統合により、研究開発、製造、販売、管理面での合理化を行い、3年後には40億ドルの節約を狙う。

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Lipitor の特許切れを控え、Kindler CEOの対策に対し、投資家は満足せず、株価は下落していた。

同社は2007年1月以降、1万4600人を削減したが、さらに、本年に入り、研究員のレイオフを始めた。2009年末までに全研究員1万人のうち、5-8%をレイオフする予定だという。これまでの開発が成果を挙げていないことを認めた。
営業職員も約
2400人削減する方針と報じられた。

現経営陣に批判的な向きの一部は、大規模な買収を検討すべきと主張しており、Kindler CEOも買収を検討する用意があると語っていた。

Wyethには子供の肺炎薬として米国政府が奨励している7価結合型肺炎球菌ワクチンPrevnar やうつ病治療薬Effexor がある。

統合会社は売上高が700億ドル以上となり、Sanofi Aventis GlaxoSmithKline の売上高を大きく上回ることとなる。

Pfizer CEO Jeffrey B. Kindler は、「両社の合併はこの産業を変革する強力なチャンスである。多様性と柔軟性と規模のブレンドが世界のダイナミックなヘルスケア事業分野で成功する基盤となる」としている。

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ユート・ブレーンによると、2007年の医薬品メーカーの売上高は以下の通り。(単位 :億ドル)
  
 http://www.utobrain.co.jp/news-release/2008/

    売上高 R&D
1 Pfizer  444.24  80.9
2 Sanofi Aventis  413.18  66.8
3 GlaxoSmithKline  384.14  66.5
4 Roche  345.05  67.5
5 Novaltis  326.46  64.3
       
9 Wyeth  186.22  32.6
       
17 武田薬品工業  107.82  24.6

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しかし、この買収に対し疑問を呈する向きもある。

Pfizer 2003年に603億ドルで Pharmacia を買収し、鎮痛剤のCelebrex Bextra を得たが、Bextra は市場から撤退、Celebrex も安全性の懸念から売上高は40%減っている。

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Wyeth (旧称はAmerican Home Products 2002年に改称)Pfizer には Lipitor を巡って因縁がある。

Lipitor Warner Lambert の製品で、Pfizerが販売権を持っていたが、1999年11月4日、American Home ProductsWarner Lambert は友好的合併(対等)を発表した。
数時間後、
PfizeLipitor を失うことを恐れ、Warner Lambertの敵対的買収を発表した。

その後、両社の訴訟合戦などがあったが、最終的にPfizeが合併した。

  2007/10/11 高杉良 「挑戦 巨大外資」

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また、American Home Products 1998年にMonsanto との合併で合意したが、直ぐに破談となった。Monsanto はその後2000年にPharmacia & Upjohn と合併してPharmaciaとなった。このPharmacia を後にPfizerが買収した。
Pharmacia 2002年に農薬部門を分離、Monsanto として独立させた。)

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なお、American Home Products 1994年にAmerican Cyanamid と合併した。
(その後、
2000年にAmerican Cyanamid を分離し、BASFに売却している。)

同社は1998年にSmithKline Beecham と合併で合意したが、すぐ破談している。

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医薬業界は今後4年で、年間1210億ドルもの売上高の製品が特許切れを迎えることとなり、これを契機に医薬業界で買収が相次ぐとの見方がある。

Johnson & JohnsonMerck & Co.Bristol-Myers Squibb などのCEOは買収を狙っているとしており、これら3社は合計で290億ドルもの現金・短期運用資産を持っている。

Johnson & Johnson 抗精神病薬Risperdal 抗てんかん薬 Topamax が特許切れを迎える。昨年9月末で148億ドルの現金・短期運用資産を保有しており、既に昨年12月に2つの小さな買収を行っている。

Merck は喘息薬のSingulair (売上高40億ドル以上)が2012の特許切れを迎える。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


 

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