既報のとおり、昨年末にクウェートの最高石油評議会が、本年1月1日に発足が予定されていたダウとPICの50/50の合弁会社 K-Dow Petrochemicals 設立承認を取り消した。
2009年1月 5日 ダウ、苦難のスタート
ダウは1月6日、「変身戦略」を推し進めるとし、クウェートに対する法的措置を含め、対応策を発表した。
ダウを、石油化学の合弁会社群と市場志向の機能性事業のポートフォリオによる高機能で収益の伸びの高い企業とするべく、積極策を取り続けるとしている。
Andrew Liveris 会長兼CEOは、今回のPICのJV取りやめの決定は全く予想外で、強く失望しているが、ダウの将来の成長のためのロードマップである「変身戦略」を損なうものではないとしている。
同社の発表した対応策は以下の通り。
1)PICとの契約の権利を行使するため法的措置や他のオプションを追求する。
クウェートとの間の過去10年にわたる長いパートナーシップを考えると、法的措置は軽々しく行える決定ではないが、PICは契約違反を行ったのであり、会社と株主の利益を守るためには行動する必要がある。
参考 契約では裁判所が契約違反であると認定した場合、PICは最高 25億ドルの違約金を支払う義務がある。
2)新しいパートナー(K-Dowを超えて)
K-Dow でPICを相手に決める際に、他のオプションもあった。
ダウは既に基礎プラスチック事業でのダウとのJVについて他の企業からアプローチを受けている。
「変身戦略」達成のため、正式に交渉を開始する。
K-Dow の手本があるため、時間は短縮できる。
3)不安定なグローバル経済環境に対応
2005年以来の変身戦略は急速に変化するグローバル環境に対応してきたが、今後もよりスリムに、素早い行動で、危機と好機に対応していく。
4)コストダウンと投資格付けアップ
昨年12月にリストラ案を発表、人員の11%カット、高コスト地域でのプラント閉鎖、非中核事業撤退を行うこととしたが、柔軟に、効率的にこれを進める。
1月5日、Lubrizol Corporation はダウから熱可塑性ポリウレタン(TPU) 事業を買収したと発表した。
結果的に投資格付けアップを図る。
5)株主への約束
1912年以来、389四半期にわたり、減らすことも中断もなく配当を払ってきたが、これを続ける。
付記
ダウにとって次の問題はRohm and Haas の買収の実行である。
Rohm and Haas 買収契約によれば、実行が本年1月10日より遅れる場合、ダウは 1日ごとに約3百万ドルの "ticking fee"を支払う義務を負う。ticking fee は時計がチクタクと時を刻むごとに増えていくる費用の意味。
これはRohm & Haas の株主に帰属し、契約を実行してもダウに返済されることはない。
契約上はあらゆる条件が満たされた2日後に買収を実行することとなっている。EUの承認が得られたため、あとはFTCの承認だけ。
Ticking fee はこれとは関係なしに、R&H 株主に対する買収遅延の金利の意味を持つ。買収価格78ドルの年8%相当を1月10日以降支払うこととなっている。
ダウは資金のめどをつけるため、短期的な遅延を考えていると伝えられた。
付記
PICに代わるダウの新しい提携先として、以下が噂に挙がっている。
SABIC、Oman Oil、Saudi Armaco、Abu Dhabi's International Petroleum Investment Co.
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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