第一三共は1月5日、2009年3月期第3四半期に、連結子会社であるランバクシー・ラボラトリーズについて、個別決算において3,595億円の株式評価損、連結決算において3,540億円ののれん一時償却の特別損失を計上すると発表した。
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第一三共は2008年6月11日、インドのジェネリック医薬品大手 Ranbaxy Laboratories 及び創業家一族との間で、同社の議決権総数の50.1%以上を取得する契約を締結したと発表した。
株式の取得総額は、TOBの結果により変動するが、1,474~1,980億ルピー(3,685~4,950億円、1ルピー=2.5円換算)を見込んだ。
Ranbaxyの概要は以下の通り。
設立:1961年設立
従業員数:約12,000名(うち研究開発1,400名)
拠点:原薬製造:パンジャブ州 モハリ(Mohali, Punjab)、トアンサ(Toansa)他 計6拠点
製剤:インド国内6拠点、海外13拠点
研究開発:ハリヤナ州 グルガオン(Gurgaon, Haryana)
連結子会社:インド国内8社、海外47社
主要製品:高コレステロール血症、感染症などの領域における後発医薬品
主要な開発中の新薬:Arterolane(マラリア治療薬- Phase 2b試験中)
買収の狙いは以下の通りであった。
ランバクシーは49カ国に営業拠点を持ち、その中にはアフリカや中東欧、南米などの新興国が多く含まれる。
(第一三共は先進国を中心に21カ国・地域に進出)
2007年の世界医薬品市場は6635億ドルで、そのうち日米欧が8割以上を占めるが、日米欧市場の年平均成長率は1ケタだが、主要新興国平均では同15%に達する。
第一三共の売上高8800億円のうち日米欧向けが97%で、ランバクシー買収により今後の成長が期待される新興市場への足がかりを獲得する。
このため、両社の補完関係は、先進国・新興国双方の需要への対応、イノベーティブ(特許で保護された製品)とロングセラー(特許が満了した製品)双方の共有というハイブリッドビジネスモデル「複眼経営」を構築する。
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同社は11月7日、ランバクシー株の63.9%を取得したと発表した。
2008年8月16日から2008年9月4日までの間、公開買付けを行ったうえ、創業家一族からの取得、第三者割当増資、新株予約権の引受けを行った。
これら取引の取得価格はいずれも1株当たり 737ルピー。1ルピー2.5円で計算すると総額4,950億円になる。
なお、本件発表の翌日 6月12日の株価は 543.50ルピーであった。
株数 | 金額 (百万ルピー) |
取得割合 | ||
希薄化前 | 希薄化後* | |||
公開買付けによる取得 | 92,519,126 | 68,186 | 22.0% | 20.0% |
創業家一族からの取得(第1回) | 81,913,234 | 60,370 | 19.5% | 17.7% |
創業家一族からの取得(第2回) | 48,020,900 | 35,391 | 11.4% | 10.4% |
第三者割当増資引受け | 46,258,063 | 34,092 | 11.0% | 10.0% |
小計 | 268,711,323 | 198,040 | 63.9% | 58.1% |
新株予約権引受け | (23,834,333) 相当 |
1,758 | (行使価格総額の 10%を払込み) | |
合計 | 199,796 | |||
総株数 | 420,370千株 | 462,596千株 |
* 希薄化後:転換社債、従業員ストックオプションを含み、新株予約権を除く完全希薄化後発行済株式
これで予定されていた取引は全て完了となった。
Ranbaxyは本取引終了後もボンベイ証券取引所及びナショナル証券取引所での上場を継続する。
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米国食品医薬品局(FDA)は2008年9月16日、ランバクシー・ラボラトリーズの医薬品30種以上の輸入を一時停止した。
医薬品の安全性に問題はないが、ランバクシーのインドのデワスとパオンタ・サヒブにある2つの工場で、製造器具の洗浄状況、生産管理、品質管理などに関する記録の保存に関して問題が改善されていないためとしている。
また、FDAが1月から3月にかけて問題の2工場を査察した際、抗生物質の取り扱い方法にも問題が発見されたという。
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これが報道され、ランバクシーの株価は下落した。更に世界的な株安もこれに加わった。
第一三共の買収価格は1株737ルピーであるが、発表翌日の株価は543.5ルピーで、その後 500ルピー付近にあった(TOB最終日9月4日終値は493ルピー)が、その後、急落し、年末の終値は252ルピーであった。
終値は買収価格の34%に過ぎない。発表当時の株価からも半分以下になった。
また、ルピーも契約時には2.5円/ルピーであったが、その後の円高で1.9円となっている。
この結果、大幅な評価減が必要となった。
第一三共は12月19日、ランバクシーの新体制を発表した。第一三共グループの一員としての企業活動を本格的に開始する。
「先進国および新興国におけるマーケットの拡大と、医療ニーズの多様化が進展する2015年以降の医薬品市場を見据えて、インドのNo.1製薬企業であるランバクシーをグループの一員に迎える決定をした」としている。
今回の評価減、のれん償却についても、以下の通り述べている。
世界的な金融危機に直面する現状の市場環境に鑑み、予め厳格な会計処理を実施することによって財務体質の健全性を確保するもの。
先進国・新興国双方への需要への対応、イノベーティブ・ロングセラー双方の共有というハイブリッドビジネスモデルへの挑戦の方針には些かの変更もありません。
ジェネリック医薬品については 2008/9/26 ジェネリック医薬品の世界最大手、日本進出
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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