中国国務院は12月18日、国際原油価格の下落を受け、石油製品の卸売価格を19日から引き下げると発表した。2007年1月以来の値下げとなる。
値下げ幅はガソリンが13.9%、ディーゼル油が18.1%、航空燃料が32.2%で、値下げ後の価格は、いずれもトン当たりで、ガソリンが5,580元、ディーゼルが4,970元、航空燃料油が5,050元となる。
同時に小売基準価格もガソリンで1リットル当たり6.37元(87円)から5.46元(74円)に0.91元引き下げ、軽油も1.08元引き下げた。
中国は石油製品について1998年に基準価格制度を導入した。
基準価格は国家発展改革委員会が国際石油市場(当初はシンガポールのみ,2001年以降ロッテルダム,ニューヨークを追加)の製品価格を参考に設定する。価格の見直しは原則として2ヶ月に一度、国際石油市場の価格上昇幅が1カ月に8%を超える場合に行うこととなっている。しかし、2005年頃からの原油価格の急騰を受け、中国政府は基準価格のアップ率を抑えた。
この結果、シノペックは大幅な赤字となり、政府が支援している。(ペトロチャイナは自社原油が多いため、補助なし)
2008/3/21 Sinopec、政府から石油精製事業の赤字補填金受領
昨年8月から原油価格が急落したが、中国の燃料価格は昨年6月以来変更がなく、中国の小売価格はむしろ割高となっていた。
今回、原油価格の下落を受けて、基準価格を引き下げるもの。
業者は基準価格の上限8% までの範囲で卸売・小売価格を設定することができる。
なお、2009年1月から、これまで道路整備費として徴収している「養路費」など6項目の交通費用を廃止し、燃料消費税を引き上げる。
ガソリンの消費税を現行の1リットル当たり 0.2元から1.0元に、ディーゼル油を同 0.1元から 0.8元に引き上げる。
廃止するのは公路養路費、航道養護費、公路運輸管理費、公路客貨運附加費、水路運輸管理費、水運客貨運附加費。
養路費は車両所有者に課せられる一種の道路税で、車両重量により決まり、例えば普通車なら月110元で前払いする。
政府は以前から自動車関係諸費用を燃料消費税に一本化することを検討していた。走行距離に関係のない固定額から使用量に応じた徴税に変更する。
石油製品消費を抑制し、省エネルギーを促す狙いがあるとみられる。
国家発展改革委員会は燃料消費税改正でも国内の燃料価格は変わらないとしている。
燃料消費税は内税で、小売基準価格に折り込んである。
1月からの燃料消費税アップも折り込み済みのため、小売基準価格は変えない。
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中国ではこれ以前から民間ガソリンスタンドに値下げの波が押し寄せていた。
中国の石油製品小売価格は政府の統制下にあり、国家発展改革委員会が小売基準価格を決め、販売業者はこれを基準に上限8%までの範囲で価格を決めることが出来る。従来は基準価格が低く決められていたため、上限ぎりぎりに価格を設定するのが慣例だった。
しかし、国際原油価格の下落を受け、地方の民間石油精製工場が卸値を引き下げ、民間ガソリンスタンドに値下げによる販促活動を促した結果、値下げ競争が始まった。
この時点では国営石油大手2社のペトロチャイナとシノペックの直営スタンドは価格を据え置いていた。
12月25日にペトロチャイナが上海の150のスタンドでガソリン価格を引き下げた。
シノペックはこれを受け、本年1月1日からの上海の44のスタンドでの値下げを発表した。
8時間後にペトロチャイナは前回価格から0.10元の値下げを行った。
次にシノペックがどう対応するか、注目されている。
値下げ後の価格と値下げ幅は以下の通り。(単位:元/リッター)
ペトロチャイナ シノペック 90号ガソリン(低圧縮比エンジン用) 4.45 (-0.2)→4.35... 4.40 (-0.25) 93号ガソリン(レギュラーガソリン) 4.76 (-0.3)→4.66 4.71 (-0.35) 0号ディーゼル 4.55 (-0.3)→4.45 4.50 (-0.35)
シノペックの93号新価格4.71元は約64円
両社の価格競争は広州にも広がった。
なお、本来の規則では、業者は基準価格の上限8%、下限8%の範囲で卸売・小売価格を設定することができることになっている。
現在の小売価格は基準小売価格の下限の8%よりも低い。
安く売った場合は需要家にはメリットがあり、損をするのは業者だけなので、規制する意味はなく、放任しているのかも知れないが、よく分からない国である。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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