ダウは1月29日、クウェートの国会議員の一部が、ダウがK-Dow Petrochemicals 設立に際し、賄賂を払ったのではないかとの疑惑を否定した。
「ダウが不正な行為をしたのではないかとの示唆に対し激しい怒りを感じている。ダウとPICとの契約は完全に適切なものであり、ダウの行為も適切であった」としている。
K-Dow Petrochemicals 破談を受け、ダウではPICに対して25億ドルの損害賠償の訴えを行う可能性を示唆しているが、これに反発して一部の議員がダウが賄賂を払ったのでないかと騒ぎ出した。世界市場で石油化学製品の価格が暴落しているときに、高い価格での契約を結んだのは怪しいと政府を批判している。
クウェート国会は1月27日、石油会社の役員による不当利得行為やあらゆる形でのコミッションの受取りの疑いについて調査パネルを設置することを、賛成42、反対16、棄権2 で決めた。
パネルはAl-Zour 地区の日産615千バレルの製油所建設についても調査を行う。
同製油所については、日揮と韓国のGS Engineering のコンソーシアムが原油蒸留施設の建設を、SKエナジーが水素製造装置、大林産業が貯蔵タンクの建設を、それぞれ請け負っている。
一部の国会議員はダウとPICの既存の4つのJVの取り消しも主張している。
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クウェートでは首長一族が内閣を抑え、反対派が議会を抑えて、互いに対立している。
K-Dow Petrochemicals についてはクウェート国会の会派 Popular Action Bloc の議員が問題視し、反対運動を展開した。
反対派はAl-Zour 地区の製油所建設にも反対しており、この計画も取り消される可能性がある。
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昨年の12月27日までは、ダウの変身戦略が成功し、価格変動の影響を受ける石油化学をAsset-light 方式で全てJV化するとともに、Rohm and Haas 買収でスペシャルティ分野の強化が出来る筈であった。
12月28日にクウェート側が1月1日発足予定のJVを取り止めると通告し、事態は一転した。
R&H買収は主に繋ぎ融資で行い、PICからの入金でその大部分を返済する予定であったが、入金がなくなったためR&H買収が出来なくなった。
Moody's やS&P はK-Dow Petrochemicals 破談を受けて既にダウの格付けをジャンクボンド直前にまで引き下げており、投資適格を維持するためには実行が行き詰ることのない詳細な資金計画が必要であると明言している。
ダウとしては絶対にこれ以上の格下げを避ける必要があり、ファイナンスを確保するため、とにかく時間がほしいとしている。
Liveris CEO は 「priority one, two and three はファイナンスの確保である」と述べた。
他方、R&Hは契約の実行を迫ってダウを訴えており、裁判官はダウの延期要請を拒否し、3月9日の開廷日程を決めた。
変身戦略の相手であるPICとR&Hの双方と対立することとなり、ダウは窮地に追い込まれている。
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付記
ダウは2月3日、デラウエアの裁判所に
R&H の訴えへの反論を提出した。
62ページに及ぶ長文だが、これまでの経緯を延々と述べた愚痴のようにみえる。
他方、R&H は2月3日、「状況が悪いのは事実だが、ダウが買収を決めた時点で既に問題が起こり、更に悪化すると見込まれていた。このため買収契約ではダウがこのリスクを取ることを決めている」と述べ、2日付けのダウ宛レターを公表した。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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