第一三共は2月4日、第一三共と宇部興産が発見し、第一三共とEli Lilly 共同開発している経口抗血小板剤プラスグレルについて、FDAの心・腎疾患諮問委員会が、経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けている急性冠症候群(ACS)患者の治療薬として、9対0の満場一致で承認勧告を決定したと発表した。
FDAの判断は諮問委員会の勧告に拘束されるものではないが、FDAでの審査の際に考慮される。
プラスグレルは、動脈硬化に伴う心臓発作、脳卒中を引き起こす可能性のある血小板の凝集を防ぐ医薬品で、まずはPCIを受けているACS患者への新しい治療薬として開発を進めており、FDAへの新薬承認申請は、2007年12月にEly Lillyより提出された。
プラスグレルは第一三共と宇部興産の共同研究開発で導出され、原体製造は宇部興産が、臨床開発・販売は第一三共とEli Lilly が担当する。
欧州では Ely Lilly が2008年2月にプラスグレルの販売承認申請を欧州医薬品庁(EMEA)に提出した。
昨年12月に、EMEAの医薬品委員会が、PCIを受けているACS患者のアテローム血栓性イベント軽減の治療薬として、プラスグレルの承認を推薦する肯定的な見解を示している。これは欧州委員会への最終的な承認勧告とみなされる。
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宇部興産は、現中期経営計画「ステージアップ2009」において医薬品事業を将来の成長及び収益性ポテンシャルが見込める育成事業と位置づけており、「社会に貢献する有用な新規自社医薬品を創製する」ことを目指し、研究開発を進めている。
現在までのところ、同社は薬剤の開発までにとどめ、臨床開発・販売は他社に委ねる形をとっている。
医薬品の臨床開発・販売には多数の要員が必要であり、止むを得ないことと思われる。
2000年には田辺製薬(現:田辺三菱製薬)と共同開発した抗アレルギー薬「タリオン(R)」が、2003年には三共(現:第一三共)と共同研究開発した血圧降下薬「カルブロック(R)」が、それぞれ日本国内で上市されており、プラスグレルはこの2剤に続くもの。
同社の開発した医薬品の状況は以下の通り。
2007~2009年度中期経営計画「ステージアップ2009」初年度の進捗から (2008/5/19)
商品名 | 適応症 | 販売 | 状況 | |
営業品 | タリオン | 抗アレルギー剤 ・アレルギー性鼻炎 ・蕁麻疹 ・皮膚疾患に伴うそう痒 |
田辺三菱製薬 製剤売上高(億円) 2007年度実績 83 2008年度見込 108 2010年度目標 140 |
共同開発 2000年上市(日本) 2003年皮膚疾患適応承認 2004年上市(韓国) 2007年口腔内崩壊錠承認 *点眼薬ライセンスを受けたISTA フェーズⅢ |
カルブロック | 血圧降下剤 ・高血圧症 |
第一三共 製剤売上高(億円) 2007年度実績 102 2008年度見込 140 |
共同開発 2003年上市(国内) | |
開発品 | プラスグレル | 抗血小板剤 ・心筋梗塞、脳梗塞など |
第一三共 Eli Lilly |
共同開発:第一三共 (欧米)申請中 (国内)フェーズⅡ |
DE-104 | 緑内障治療薬 ・緑内障、高眼圧症 |
参天製薬 | 共同開発:参天製薬 (米国)フェーズⅡ (国内)フェーズⅡ | |
UR5369 | 抗リウマチ薬 | 未定 | 自社開発 前臨床 | |
UR5908 | COPD治療薬 (慢性閉塞性肺疾患) |
未定 | 自社開発 前臨床 |
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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