三菱化学は2月23日、テレフタル酸事業の事業構造改革を発表した。国内生産から撤退、本社機能を海外に移す。
同社は昨年12月に「2008-10年度の中期経営計画の見直し」を発表したが、そのなかで、テレフタル酸については以下の通りとした。
テレフタル酸は徹底したコスト削減とアライアンスを検討する。
1) インド、インドネシア、中国では海外企業との提携による販売・生産体制再構築
2) コスト競争力(合理化によるコスト削減、不採算工場の撤退検討)
3) 海外Global Head Quarters による購買/販売/技術面での機動力あるマネジメント
今回の改革はこのうちの 2) と3) に相当するもので、今後更なる改革を行うものと思われる。
1.松山工場テレフタル酸と水島事業所の原料パラキシレンの停止
松山工場 テレフタル酸(QTA) 能力250千トン 2010年12月停止予定 水島工場 パラキシレン 能力100千トン 2010年5月停止予定 国内におけるテレフタル酸需要は減少傾向に歯止めがかからず、今後の収益向上は困難であると判断した。
なお、水島工場ではテレフタル酸(PTA) 140千トンを2002年9月に停止しており、これで国内拠点はなくなる。
(同社では酸化-精製の2段階法によるものをPTA、一段酸化法によるものをQTAと呼ぶ)松山工場では、エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル(AGIC)との運転受委託契約に基づき、休止したPTA 140千トンプラントで2008年4月からイソフタル酸 100千トンの製造を行っているが、これは継続する。
AGICは昭和43年に現三菱ガス化学と現BP社(当時 Amoco Chemical)社の50/50の合弁会社として設立され、2003年12月に三菱ガス化学91.6%/双日8.4%となった。水島で130千トンの高純度イソフタル酸を製造している。
2.テレフタル酸事業の本社機能移転
本社機能 シンガポール 2009年6月 技術に関する本社機能 インド(西ベンガル州ハルディア) 2009年末
原料購買、販売、技術面等で機動力あるマネジメントを行い、人材のローカリゼーションも行いながら、事業構造改革を一層推進する。
松山工場停止後の三菱化学のテレフタル酸供給基地は以下の通り。
国 場所 会社名 能力 インドネシア メラク 三菱化学インドネシア(旧バクリー化成) 640千トン 83.2%出資 韓国 麗水 三南石油化学(三養社とのJV) 1,700千トン 40%出資 インド 西ベンガル州ハルディア MCC PTA 470千トン
800千トン(*)66%出資 中国 浙江省寧波市 寧波三菱化学 600 千トン 日本側90%x61%出資 合計 4,210千トン
* インド第二工場 2009年2月末完工、6月商業生産開始
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なお、同様にPTAでアジア進出を行っている三井化学のPTA供給基地は以下の通り。
同社は国内生産の約4割を主に中国に輸出していたが、収益改善に向け輸出を停止、3機のうち1機をすでに停止しており、もう1機も2011年度までに停止し、国内生産能力を年40万トンにする。
国 場所 会社名 能力 日本 岩国 三井化学 750千トン→ 400千トン インドネシア メラク Amoco Mitsui PTA Indonesia 450千トン BP 50%、三井化学 45%、 タイ マプタプット Siam Mitsui PTA 1,400千トン 三井化学 49%、
Cementhai Chemical 49%合計 2,600千トン→2,250千トン
* 三井化学は2004年3月に、中国でのPTA計画を申請したが、承認を得られず、白紙撤回している。
三井化学(張家港)有限公司:三井化学 100%、江蘇省張家港市、能力600千トン
三井化学の調べでは2008年のアジアのPTA需給は以下の通り。(千トン)
アジア計 中国 インド 韓国 台湾 日本 需要 28,301 16,630 2,700 2,500 2,100 940 供給 31,655 11,630 2,980 6,010 4,670 1,310 バランス 3,354 - 5,000 280 3,510 2,570 370
なお、中国は2月12日、韓国・タイ原産の輸入PTAのダンピング調査を開始した。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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