オバマ米大統領は2月24日、米上下両院合同の本会議で初の議会演説に臨んだ。
演説では①金融安定化などの危機克服、②新たな成長に向けた長期投資、③財政再建を経済再建への三本柱に掲げた。
米大統領が施政方針を示す演説は、「一般教書演説」(State of the Union Address)と呼ばれ、1月最後の火曜日に行われるのが慣例だが、新政権の初年度は大統領就任演説と時期がほぼ重複するため、2月以降に、テーマを絞り政策方針を示す。
今回も、経済政策を柱とした「連邦議会合同会議における演説」となった。
②の「新たな成長に向けた長期投資」としては、エネルギー、医療保険そして教育の3つをあげた。
エネルギーについての部分は以下の通り。
我々は危機のさなかにあって希望を見いだす国であり、試練から機会をつかみ取る国である。今、再びそうした国にならなければならない。
だから私が提出する予算は、必要のない事業を縮小する一方で、経済の未来に絶対不可欠な3分野に投資する。それはエネルギー、医療保険そして教育である。
まずはエネルギーだ。我々はクリーンで再生可能なエネルギーの力を持つ国が21世紀を主導すると分かっている。
しかし、エネルギー効率の高い経済に向け、史上最大の計画を発足させたのは中国だ。
我々が太陽光発電の技術を発明したが、その生産においてはドイツや日本のような国々に追い抜かれた。
新しいプラグイン・ハイブリッド車は我々の生産ラインから出てくるが、バッテリーは韓国製だ。私は、雇用や明日の産業が我々の国境の外で生まれるという将来は受け入れられない。皆さんもそうだろう。今こそ米国が再び先頭に立つときだ。
景気対策により再生可能エネルギーの供給量を今後3年で倍増する。基礎研究にも史上最大の予算を計上した。この投資はエネルギー分野で新しい発見を促すだけでなく、医薬、科学、技術においても画期的な前進をもたらす。
我々は近く、新しいエネルギーを都市や町に運ぶ何千マイルもの電線を国中に敷く。住居や建物のエネルギー効率を高め、何十億ドルもの光熱費を抑制するために米国人を雇用する。
しかし、真に経済を変革し、安全を守り、気候変動の破壊から地球を救出するには、究極的にはクリーンで再生可能なエネルギーを、利益を生むエネルギーとしなければならない。
温暖化ガスの排出量取引 (market-based cap on carbon pollution )を行い、再生エネルギーの生産を促す法案を私に送るよう議会にお願いする。
そしてその革新を支援するため、風力発電、太陽光発電、バイオ燃料、クリーンな石炭、燃費の良い自動車やトラックの開発へ年間150億ドルを投じる。
オバマ大統領は就任前の11月18日、ロサンゼルスでの気候変動問題に関する国際会議でビデオ演説し、次期政権としての環境政策構想を明らかにしている。
2020年までに温暖化ガスの排出量を1990年の水準まで削減する中期目標を設定。
これに向け、年ごとの厳格な削減目標を設ける。
2020年以降は、2050年までに温暖化ガスをさらに80%削減する長期目標も示した。
今回は排出量を売買する排出量取引市場を創設する方針を表明し、削減義務化に反対したブッシュ前政権からの抜本的な政策転換を宣言した。
参考 2009/1/28 オバマ大統領、温室効果ガス規制へ
2009/2/19 米国の景気対策法案成立、エネルギー・環境関連が多数
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オバマ大統領は2月26日、“A New Era of Responsibility-Renewing America’s Promise” と題する予算教書を発表した。
その中で排出量取引市場の創設について、Creating a Clean Energy Economy という項目で以下の通り述べている。
政府は、クリーンエネルギーに投資し、石油中毒を終わらせ、グローバルな気候変動に対処し、アウトソーシング出来ない新しいアメリカ人の職を創出するため、包括的なエネルギー及び気候変動計画を立てている。
予算成立後、政府は関係者や議会と迅速に協議し、全経済にわたる排出量削減計画をたてる。温暖化ガスを2020年までに2005年レベルの約14%削減、2050年までに同83%を削減する計画である。
これは排出量取引制度(cap-and-trade system)により行われ、これまでの政府の規則や規制よりもはるかに安いコストで酸性雨を劇的に削減する。
この計画は、最大の汚染者が棚ぼたの利益を得ることがないよう、100%オークションで行われ、2012会計年度に始まる10年間で1500億ドル(15兆円)に達するクリーンエネルギーへの投資を賄う。オークションの収入の残りは、特に弱い家庭、コミュニティ、企業に戻され、クリーンエネルギー経済への移行を支援する。予算案では2012年に汚染者への温室効果ガス排出許可の売却で787億ドルの収入を見込んでいる。
2019年までの合計では6459億ドルの収入を見込む。
なお、Exxon Mobil の会長兼CEOは、温暖化ガス削減対策として、 排出量取引制度よりも炭素税の方が優れているという見解を示している。
2009/1/13 エクソンモービル、炭素税を容認
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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