英豪系資源大手Rio Tinto は2月12日、中国国有アルミ大手、中国アルミ業公司(Chinalco)から現金で195億ドルの出資を受けると発表した。英国と豪州の両本社の取締役は満場一致で、株主に対してこの取引の承認を求めた。(但し事前に次期会長が反対して退任)
取引の内容は以下の通り。
1)ChinalcoはRio が世界各地に持つアルミ、銅、鉄などの利権をJVへの出資の形で取得する。対価は合計123億ドル。
2)Chinalcoは Rio の両本社の転換社債を72億ドルで取得する。
全て転換されれば、Rio Tinto 全体への出資比率は現在の9%から18.0%に増える。
Chinalcoと米国のAlcoa は2008年2月1日、英国Rio Tintoの株式の12%を141億ドルで取得した。Rio Tinto 全体への出資比率は9%となる。
2008/2/8 中国アルミとアルコア、Rio Tinto に出資
3)ChinalcoはRio の取締役会に2名の取締役を派遣
4)Rio がJVの運営権を握る。
5)株主総会、政府、監督機関の承認を条件とする。
2008年8月に豪州の財務相は中国アルミがRio Tinto の英国本社の株を14.99%(全体の11%)まで買収することを承認している。
しかし、外国企業による国内企業買収に関する法律では転換社債を使った株取得は想定されていない。このため、財務相は法律を緊急改正するとともに、国益に反しないかの観点で認可の是非を判断する方針。
Rio は2007年のアルキャン買収に伴い抱えた389億ドルの負債を軽減することができる。
同社は今年10月に89億ドルの返済期限を迎えるほか、来年10月には100億ドルが返済の期限を迎える予定となっている。
金融危機により金融機関からの借入が難しくなっているため、Rio にとっては195億ドルの現金は非常に有難い話である。
これに加え、同社では最大の需要国である中国との関係を更に進めるため、これは役に立つとしている。
・今後長期的に成長する中国で、Chinalco の力を利用できる。
・Chinalco のインフラを利用し、途上国で戦略的パートナーシップをつくる。
・Chinalco との協力で中国での資源開発のJVを。
・Chinalco との協力で中国の金融機関から資金を。
Chinalco にとっては天然資源の利権を取得するという目的を達成できる。
同社では「扱う資源の多様化と国際展開という我々の戦略に合致する」としている。
Chinalco とのJVに移るのは、下記のプロジェクト。
名称 | 品目 | 立地 | 2008年生産量 | Rio比率 | 提案 | 評価額 (百万ドル) | |
Chinalco | Rio比率 | ||||||
Weipa Aluminium | ボーキサイト | Queensland | 20百万トン | 100% | x 30% | 70% | 1,200 |
Yarwun Aluminium | アルミナ | Queensland | 1.3百万トン | 100% | x 50% | 50% | 500 |
Boyne Aluminium | アルミニウム | Queensland | 552千トン | 59.40% | x 49% | 30% | 450 |
Gladstone Pwr. Aluminium | 電力 | Queensland | 1,680 megawatts | 42.13% | x 49% | 21.50% | |
Escondida Copper | 銅 | Chile | 992千トン(concentrate) | 30% | x 49.75% | 15% | 3,388 |
Grasberg Copper | 銅、金 | Papua, Indonesia | 銅 467.5千トン(concentrate) 金 1.1 百万オンス |
40% | x 30% | 28% | 400 |
La Granja Copper | 銅、亜鉛 | Peru | 28億トン 銅 0.51% 亜鉛 0.1% |
100% | x 30% | 70% | 50 |
Kennecott Copper | 銅(採掘から精錬まで) | Utah, USA | 200.6千トン(精錬) | 100% | x 25% | 75% | 700 |
Hamersley Iron Ore | 鉄鉱石 | Western Australia | 95.55百万トン | 100% | x 15% | 85% | 5,150 |
Development Fund | 50% | 500 | |||||
Total | 12,338 |
Boyne Aluminium の残りの出資は日本のメーカー、商社で、出資比率に応じて製品を引き取っている。
出資引取比率:
第1,2系列 第3系列 273千トン 236千トン Comalco (Rio Tinto) 59.50% 59.25% 住友軽金属 17.00% 1.00% 住友商事 - 8.00% 丸紅 - 8.00% 三菱マテリアル - 4.75% 三菱商事 9.50% 9.50% YKK 9.50% 9.50% 住友化学 4.50% - 合計 100.00% 100.00%
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インドネシアのGrasberg Copper や豪州のHamersley Iron Ore はRio Tinto のcrown jewel で、これを渡すのに対し、怒っている株主もある。
「運営権を握る」という文言を信じ込むのは危険ともしている。
4月に会長に就任する予定であったJim Leng 取締役はこの取引に反対して、2月9日に取締役就任1ヶ月未満で辞任した。
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Rio Tinto には BHP Billiton が買収を図ったが、経済状況の悪化を受け、これを諦めた。
2008/11/27 BHP Billiton、Rio Tinto 買収を断念
しかし、今回のRio とChinalco との提携を機に、新しい動きを見せる可能性がある。
豪紙オーストラリアンは2月10日、豪 BHP Billiton と三井物産がRio Tinto のオーストラリア国内の鉄鉱石やコークス用炭の資産買収に関心を持っていると伝えた。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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