ダウとBASFは3月5日、両社が共同で開発した過酸化水素法(HPPO:hydrogen peroxide to propylene oxide )技術の第1号で世界最大のPOプラントがスタートアップ段階を終え、順調に操業していると発表した。
ベルギーのアントワープのBASFの工場に建設したもので、能力は30万トン。
両社は2003年に共同開発を開始、2006年9月に鍬入れを行った。
両社は共同開発した技術に50/50の権利を有し、それぞれが生産量の半分を引き取る。
2006/3/24 ダウとBASF、POを新製法で生産
両社はHPPO 法のメリットを他の製法との比較で以下の通り説明している。
1)経済的メリット
・建設費が著しく少なくて済む。
・生成されるのはPOと水だけのため、副生品のための設備が不要で、副生品販売の手間が省ける。
・原料が過酸化水素とプロピレンだけでよい。
2)環境面でのメリット
・既存の製法と比較し、排水の量が70~80%少ない。
・同じくエネルギーの使用が35%少ない。
・原料が少なく、副生品もないため、インフラや敷地が少なくて済む。
但し、多量の過酸化水素(プロピレン1トンに対し0.6トン)を 使用するため、POプラントの横に過酸化水素のプラントを建設することが必要である。
本プラントのために、Solvay技術により、単一ラインとしては世界最大の23万トンの過酸化水素プラントを建設している。
Solvay と BASF がJVを設立して建設、このJVとDowがファイナンスのためのパートナーシップを設立した。
またエポキシ化触媒をリサイクルするためにメタノールを使用しているが、水とメタノールの分離に多量のスチームも使用すると言われている。
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ダウとBASFは本計画に続いて、タイのMap Ta Phut で39万トンの過酸化水素法POプラントの建設を計画した。
先ず、ダウとSolvayは2007年8月にタイに過酸化水素製造のJVを設立すると発表した。
能力は330千トン(100%ベース)と世界最大で、2010年稼動の予定。 Solvay の技術を使用するもので、Dow と BASF Thailand が料として供給する。製品の一部はSolvayのタイの子会社、Peroxythai Ltd にも供給される。
Peroxythai Ltd は1989年設立で、主にパルプ、製紙向けに過酸化水素を年2万トン程度生産し、60%をタイ国内で販売、残りを輸出している。
本体のPOについては、ダウは2008年8月に Siam Cement Group (SCG)とのJVの SCG-Dow Group がタイでPO工場の建設に着手したと発表した。
Dow とBASF が共同開発した過酸化水素法(HPPO)で、能力は39万トン、PGプラントも同時に建設し、2011年に生産開始の予定。
2008/6/16 Dow、タイで過酸化水素法PO工場建設
過酸化水素JV設立発表時にはダウとBASFがタイで計画しているPO用と明記していたが、何故BASFが離脱したのかの説明はない。
原料プロピレンは、 Dow と Siam Cement Group が建設を発表したRayong の新しいナフサクラッカーから供給する。
11億ドルを投じてを建設するもので、能力はエチレン90万トン、プロピレン80万トン。OCT(Olefins Conversion Technology) で大量のプロピレンを製造する。Siam が67%、Dow が33%出資し、2010年稼動を目指している。
2006/10/24 ダウ、アジア進出を促進
今回のRohm & Haas 買収決定で、ダウは資金対策の一環として、東南アジアのオレフィン及び誘導品JVのダウ持分の売却を考え、既に相手側との予備交渉は既に開始したとしている。
恐らくこれはタイのサイアムとのJV(上記ナフサクラッカー及びその他の誘導品JV)ではないかと思われるが、その場合、POがどうなるかは不明。
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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