韓国とEUは3月24日、自動車・ワイン・豚肉の関税など自由貿易協定(FTA)交渉の中核争点について合意し、1年10カ月間かけて行われた交渉が事実上妥結した。
双方は、G20首脳会議(金融サミット)が開かれる4月2日にロンドンで通商相会談を開き、関税引き下げ・原産地決定基準・農産物関税撤廃といった残りの争点を最終的に妥結する見通しだ。
但し、難しい問題が残っており、妥結を100%保障するのは難しいとの見方もある。
予定通り来年発効すれば、北米自由貿易協定(GDP合計 16兆3000億ドル)をしのぐ世界最大の韓国・EU経済圏(GDP 17兆8700億ドル)が形成されることになる。
双方は、相手地域で生産した自動車・冷蔵庫・カラーTVなど工業品に対しFTA発効5年以内に全関税を撤廃すると基本合意した。
EUの関税は、自動車で10%、テレビで14%と高率で、関税撤廃による韓国企業の輸出拡大が予想される。
見返りとして、農業品などの関税撤廃についても大部分は合意した。
工業製品関税については、原則 5年間で関税を完全撤廃。
自動車部品は協定発効と同時に関税を撤廃、
中大型乗用車は3年、小型自動車は5年内に撤廃
韓国は例外として40余りのセンシティブ品目について7年内の関税撤廃。
(関税率が16%のその他機械類、純毛織物など)EU産ワインは、直ちに撤廃
EU産豚肉に対する関税は、冷蔵肉全体とバラ肉冷凍肉は10年以内に、その他の部位の冷凍肉は5年以内に撤廃。
但し、韓国のコメ市場は開放しない。トウガラシ、ニンニク、タマネギも「主要調味料」として関税を据え置く。
残った争点は、「関税の払い戻し」と「原産地表示」。
韓国は中国などから部品を輸入し完成品を輸出する場合、部品輸入については関税を払い戻している。
EU側は韓国・EU間FTAの利益が第三国に向かいかねないとして、これに反対している。
韓国政府はFTA交渉初期から、関税還付問題は決して譲れないとの姿勢。相手地域で生産された付加価値の水準に従って産地を決定する「原産地表示」の問題もまだ合意に至ってない。
現在、EU産農産物のうち輸入トップは「冷凍豚肉」だが、FTA妥結以降、韓国市場シェアをさらに拡大する可能性が高い。
ワインもEUの対韓主要輸出品目で、EU産チーズも消費が増えるとみられる。
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韓国とEUのFTAが妥結すれば、行き詰まっている韓米FTAの批准にも新たな突破口を作ることができると見られる。
韓米FTAは2007年4月2日に妥結したが、まだ批准されていない。
2007/4/4 米韓FTA妥結
韓国は以下のFTAを締結している。
韓国・チリFTA(2004年4月1日発効)
韓国・シンガポールFTA(2006年3月2日発効)
韓国・EFTA FTA (2006年9月1日発効) (アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン)
韓国・ASEAN FTA(商品貿易 2007年6月1日発効)(サービス貿易 2007年11月21日署名)
韓国・米国FTA交渉妥結(2007年4月2日) 未発効
交渉中は以下の通り。
日本・韓国FTA
韓国・ASEAN FTA(投資分野)
韓国・カナダFTA
韓国・インドCEPA
韓国・メキシコFTA
本年3月、サウジアラビアなど6産油国の湾岸協力会議(GCC)との交渉を本格化した。また、オーストラリア、ニュージーランドともFTA交渉開始で合意している。
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なお、日本の場合は、発効しているFTAは以下の通り。
シンガポール
メキシコ
マレーシア
チリ
タイ
インドネシア
ブルネイ
ASEAN
2002年10月の「日本のFTA戦略」では戦略的優先順位を以下の通りとしている。
日本は東アジア、北米、欧州の3地域を主要パートナーとしており、この3地域が日本貿易の8割を占めているが、先進国同士の関係にある北米、欧州に比べ、東アジアとのFTAが更なる自由化を通じ最も大きな追加的利益を生み出す。
日本産品は最も貿易額の多い東アジア地域において最も高い関税を課されている。
NAFTA及びEUとのFTA締結により、日本企業が相対的に高い関税を支払わされているメキシコについても早急な対応が求められる。北米・EUについて、これらとのFTAは、農林水産物の扱い等、相当困難な課題。
韓国と米国・EUとのFTAが発効すれば、日本企業への影響は大きい。
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