アブダビのMasdar Initiative

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アラブ首長国連邦のアブダビ首長国が、太陽光、風力など再生可能エネルギーを中心に据えたMasdar Initiativeに注力している。

2008年1月アブダビで開らかれたWorld Future Energy Summit で、Mohammed bin Zayed Al Nahyan 皇太子は初期投資150億ドルの最も野心的な持続可能プログラムを発表した。

Masdar Initiativeと呼ばれるもので、Abu Dhabi Future Energy Company (Masdar) により実施され、太陽光・風力・水力発電、カーボン削減・管理、持続可能な開発、教育、製造、研究開発を行うもの。(Masdar はアラビア語で "the source" の意味)

Masdar 社は政府の出資する150億ドルを基に、JVや海外からの投資により、その何倍もの規模の投資をアブダビ、MENA(中東+北アフリカ)及びグローバルに展開する。

Carbon Management Unit は温室効果ガス削減計画を実施する。
中東及び北アフリカ
で京都議定書によるClean Development Mechanism(CDM)計画を多数実施するとともに、炭酸ガス捕捉・貯蔵計画を行う。

CDM計画には以下のようなものがある。

2008年6月、MasdarはAbu Dhabi Ports Company (ADPC) との間で、Khalifa Port and Industrial Zone でのCO2捕捉、温暖化ガス削減計画実施の契約に調印した。

2008年7月、MasdarはGulf Petrochemical Industries Company (GPIC) との間で、排煙中のCO2を捕捉、尿素とメタノールの生産で原料として利用する計画に調印した。

2009年1月、Masdarとアブダビ国営石油(ADNOC) は石油・ガス部門でのCO2削減計画で合意。

2009年1月、Masdarはセイシェル政府との間で、風力発電、太陽光発電、廃棄物燃焼発電等での再生可能エネルギー開発での協力で合意した。

2009年1月、Masdar はナイジェリア国営石油との間でナイジェリアでの石油・ガス部門でのCO2削減計画で合意。

20082月にCarbon Capture and Storage (CCS)を始めた。第一段階としてアブダビの発電所や産業施設など4箇所から2013年までに650万トンのCO2の捕捉を行い、CO2を油田に送って産出量を増やす。

2008年11月、Masdar はCCS計画のFEED (front-end engineering design) 契約を米国のJohn Wood Groupの子会社Mustang Engineering と結んだ。

Industries Unit ではグローバルに再生可能エネルギーをつくる。

アブダビのSolar Manufacturing High-Tech Cluster には3種類の太陽光発電(PV)技術、結晶ベースPV、薄膜PV、集光型PVの生産設備を揃える。

2008年3月、Masdar はスペインのSener Grupo de Ingenieria S.A. と集光型太陽光発電のJV Torresol Energy 設立で合意した。
まず8億ユーロでスペインに3つの太陽光発電プラントを建設する。

2008年11月、コスモ石油はMasdar と共同で、三井造船に対し、集光量100キロワットのビームダウン式集光太陽熱実証実験プラント建設を発注したと発表した。

コスモ、Masdar、東京工業大学間の共同研究開発契約に基づく研究開発推進のため、Masdar Cityのテストサイトに建設されるもので、一度タワー先端に集光された太陽光を、東工大独自技術を結集した中央反射鏡により地上近くに設置した太陽炉に再反射させるもの。

20084月に設立されたMasdar PV は世界のトップ3の薄膜太陽光発電(PV)会社を目指す。
1期投資(6億ドル)ではドイツのErfurt とアブダビに合計年間210メガワットのアモルフォス薄膜PVモデュール工場を建設する。機器供給はApplied Materials が行う。その後の増強で年間1ギガワットを目指す。

ドイツの工場は2009年第3四半期にスタート、年間70メガワットの生産能力を持つ。これを基にして2010年第3四半期にアブダビで140メガワットの能力の工場をスタートさせる。
これらからの生産設備は欧州やアブダビの太陽光発電に使用される。

Masdar は2008年9月、フィンランドの風力タービンのメーカー WinWinD Oy に資本参加した。

Masdar Institute of Science and Technology は先進的エネルギー及び持続可能技術に焦点をあて、マスター及びドクターレベルの教育を行うが、2009年1月Massachusetts 工科大学のMIT Energy Initiative (MITEI) への参加を発表した。

MITEI 20069月に作られたもので、MIT全体でグローバルなエネルギーシステムを将来のニーズに対応させようとするもの。

2008年2月、Masdar City (the world's first carbon-neutral, zero-waste city)の起工式が行われた。

Masdar City の建設予算は220億ドルで、Masdar 社は40億ドルを出し、残り180億ドルは参加各社の出資や、いろいろの形のファイナンスで集められる。Masdar City のカーボン削減が京都議定書のCDMもこの重要な部分となる。

Masdar City は総面積は6平方キロ、世界から1500社を招致し、4万人が居住し、5万人が通勤する。2016年の完成予定。
100%外資が可能で、無税、無関税、資本移動に制限がなく、知的資産保護では地域で最強である。

都市設計は英国のFoster + Partners が担当。低層建築物で統一され、すべての建物の屋上にソーラーパネルが設置される。

新都市の電力は、約350百万ドルかけて建設される100メガワット級の太陽光発電所が供給。将来的には、発電能力を500メガワットまで拡充し、ピーク時の電力供給圧力を緩和する。
このほか、海水の淡水化、地域冷房、下水処理など。

市の境界に駐車場をつくり、市内の移動には自動車を一切使用せず、 Light rail transit (LRT) と Personal rapid transit (PRT4人乗り無人電気自動車、口頭で行き先を伝えるだけでその場所に運ぶ)を利用する。  参考 ロンドンのヒースロー空港のPRT 

2009年1月20日、Masdar とGEはMasdar City Ecomagination Centre の設立を発表した。

GEのEcomagination は、2004年にJeffrey Immelt が発案したもので、世界が直面する深刻な環境課題の真の解決を実現するためには、Ecology(環境)とEconomy(経済)の2つの Eco の両立が必要で、「環境関連の事業戦略を推進することで、社会と自社の両方に利益をもたらす」と考え、革新的な環境関連製品やサービスで「環境課題への貢献」と「企業としての成長」を同時に実現するというもの。

Masdar City Ecomagination Centre は、この地域でエネルギー効率のよい製品の開発をサポートし、省エネを促進する。
同時に、風力発電、太陽光発電、その他の再生可能エネルギー、水の浄化技術、省エネ家電などの
GE技術のshowcase にもなる。


* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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