住友商事、サウジで炭化珪素製造に参加

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住友商事は3月10日、米 Washington Mills、サウジアラビアのAhmad H. Algosaibi & Brothers と共に、サウジのジュベール工業団地で炭化珪素の製造を行なう合意書に締結したと発表した。

20096月までに3社で合弁会社 Silicon Carbide Saudi Arabia を設立、年産24千トンの工場の建設を開始する予定で、資本金は約20億円、出資比率は住友商事が20%、他2社が各40%。
20111月より製造販売を開始する予定。

炭化珪素(silicon carbide) はケイ素の炭化物の黒色のセラミックスで、他のファインセラミックスと比べ、高温域(1000℃以上)での機械強度の低下が小さく、耐磨耗性の高い材料。

各種ファインセラミックスの中では最も硬く、耐食性に優れ、液中での摺動特性が良好なため、メカニカルシールやケミカルポンプの軸受けなどに利用されており、また、半導体製造装置のウェハーフォークや耐プラズマ性が要求される部材などにも利用されている。

日本には年間約13万トンの市場があるが、ほとんど中国からの供給に依存している。中国政府の輸出規制もあり、近年価格が著しく高騰、供給も不安定化している。

大きな炉にケイ石とコークスを詰め、中心部の黒鉛電極に大電流を流して発熱させ、2000℃以上の高温で反応させ、SiO2を還元してSiCをつくるが、サウジでは最も重要なコスト要因である電力および石油コークスを安価で確保できる利点がある。

住友商事は生産開始後は日本、アジア市場で耐火材、研磨・研削材用途として拡販する。

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Washington Mills は炭化珪素やアルミナなどの研削材や溶融鉱物製品の世界最大のメーカーで、1868にWashington Mills Emery Manufacturing Company として設立された。

炭化珪素は19世紀末に工業化した会社の商品名からcarborundumとも呼ばれる。

1890年にペンシルバニア州の発明家のEdward Goodrich Acheson がダイヤモンドを作ろうとしてカーボンを高温で熱した。
うまくいかず、今度はカーボンと粘土を混ぜて電気的に溶融したところ硬い物質が出来た。これが炭化珪素である。

翌年、彼は
Carborundum という名前の会社を設立し、商品名もcarborundum とした。
1895年にニューヨーク州のNiagara Falls
に移転した。

Washington Mills 1986年にCarborundum 社からカナダのNiagara Falls、NY州のNiagara Falls 及び英国のTrafford Park 3工場を買収した。

Carborundum はその後、BPの子会社となり、1996年に Saint-Gobain の子会社となった。(現在も研磨剤に Carborundum の商標を使っている。)

Carborundum 社は1972年に耐熱・耐薬品性に特徴がある芳香族系液晶性樹脂 Econol を開発した。

住友化学はこれに着目し、同社との折半出資により「日本エコノール」を設立し、1975年初めから同製品の出荷を始めた。
しかし、Carborundum 社が事業を他社に譲渡したのを機に、1977年に同社を解散し、事業を一時中断した。

その後、住友化学は自社技術による国産品で市場開発を再開し、1983年から本格的な供給を開始した。
1993年には従来のエコノールを改良して「スミカスーパーLCP」と改称し、
新用途への拡販を図った。

2007年に同社は液晶ポリマー「スミカスーパーLCP」 のニートレジンの生産能力を7,000トンから9,200トンへ増強するとともに、中国においてコンパウンド設備を新設することを発表している。

Washington Mills 2001年にThe Exolon Company を買収し、イリノイ州Hennepin の粗鉱からの一貫工場を取得するとともに、ノルウェーの炭化珪素の専業メーカーの Orkla Exolonの50%持分を取得した。

2004年にはOrkla Exolonの残り50%も買収し、100%子会社とした。(Washington Mills ASと改称)

炭化珪素については現在、米国イリノイ州Hennepin とノルウエーのOrkanger で粗鉱から最終製品までの一貫生産を行なっている。

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Ahmad H. Algosaibi & Brothers はサウジや湾岸諸国で、製造、販売、不動産、投資などを幅広く行っている。


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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

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