積水化学、米国検査薬企業を買収

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積水化学は3月18日、米国コネチカット州の検査薬事業会社 American Diagnostica Inc.の株式を100%取得すると発表した。
買収額は明らかにされていない。(報道では数十億円)

子会社の積水メディカルの主力の検査薬事業における海外基盤を強化するもので、ADI が保有する製品群と販売網をベースに、北米を中心に検査薬事業の拡大を積極的に展開する。

ADIは社長のRichard Hart が1982年に設立した血液凝固領域を専門とする企業で、癌検査薬の開発を進めており、今後癌領域でも拡大が期待される。2008年6月期の売上高は10.3百万ドル。

買収により、ADIの販売網を活用して積水メディカルの血液凝固領域を中心とした検査薬を北米で販売、逆に積水メディカルの販売網を活用してADIの検査薬を日本、アジアで販売する。
血液凝固領域、癌領域でADIが保有する検査薬と、積水メディカルが保有する検査薬の製品補完により、両領域での競争力を強化する。

買収後もAmerican Diagnostica Inc.の社名を維持する。

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積水化学のメディカル事業は高機能プラスチックスカンパニーで、IT、自動車関連と並び戦略分野の一つとして、素材技術と海外事業ノウハウを強みに、検査(検査薬、検査用具)、治療(医薬品、治療部材)の領域で事業展開していた。 

2006年10月、積水化学は第一三共の完全子会社の第一製薬の100%子会社、第一化学薬品発行済み全株式を取得し、子会社化した。

第一化学薬品は検査薬、研究用試薬、化学薬品の製造・販売、薬物動態研究を業とし、脂質領域の検査試薬であるHDL及びLDLコレステロール検査薬は世界でもトップシェアを獲得していた。

第一三共は医薬品事業への集中を進め、非医薬品事業のグループ外自立化を目指していたが、第一化学薬品の優れた開発力、生産技術力、営業・マーケティング力と積水の素材技術、海外事業ノウハウを 融合することで大きなシナジーが期待できると考えた積水化学が買収した。

2008年4月に積水化学は高機能プラスチックスカンパニーのメディカル事業部で展開する事業と、買収した第一化学薬品を統合し、第一化学薬品を積水メディカルに改称した。

これに先立ち、2008年1月に積水化学は新生積水メディカルの中期事業ビジョンを発表した。

積水化学グループの「メディカル事業主体会社」として、競争力の高い検査薬事業を中心にグローバルに事業を拡大させ、医療業界におけるプレゼンス向上を図る。

事業方針を、「選択と集中で、際立つグローバル・メディカル・カンパニーを創る」とし、検査・医療の2部門<p>HTML clipboard</p>の4分野に経営資源を集中的に投入するとともに、国内シェアNo.1製品を積極的に海外展開して事業拡大を図る。

部門 分野  
検査 検査薬 生化学、血液凝固、糖尿病、感染症の検査をメイン領域として
臨床検査薬・分析装置の開発、製造、販売を行い、主に病院の検査室や検査センターに提供

(戦略)
・5つの重点領域(生化学、血液凝固、糖尿病、感染症、先端技術)
・ラテックス検査薬の競争力強化(積水の微粒子技術と第一の検査薬開発技術(LTIA法技術)を融合
・海外拠点強化
・生産能力の増強と開発~生産の一体化

検査用具 世界で初めて実用化したプラスチック製真空採血管など、臨床検査用具の開発、製造、販売を行ない、
主に病院の検査室や検査センターに提供

(戦略)
・専用分析装置ラインナップを4機種から8機種に拡充し、小型~大型の分析装置と検査薬を一緒に提供

医療 医薬 医薬品の活性成分である医薬原体(API)、医薬用アミノ酸、医薬中間体の受託製造と、
独自の粘着テープ技術を応用した貼付剤の設計・開発を行ない、主に製薬企業に提供

(戦略)
・キラル合成技術の強化による医薬原体事業の拡大
・海外事業基盤の構築

薬物動態 医薬品開発の研究開発支援として、探索から申請、市販後調査までの各段階において、
薬物動態に関連する各種評価試験を研究機関から受託

(戦略)
・ヒト肝キメラマウスを用いた新規試験受託の本格稼動

選択と集中で、積水化学の医療用部材事業と第一化学薬品の研究用試薬事業を第三者へ承継する。
子会社「セキスイメディカル電子」:
 2009年3月末に解散、歯科技工用機器などの事業は、従業員が中心となって設立する新会社に譲渡
第一化学薬品の研究用試薬事業:
 コスモ石油からMBOで独立したコスモ・バイオその他に譲渡、一部は撤退。
 

2011年度に売上高500億円(積水メディカル単体)、営業利益率18%を目指す。

    2007年度
(見通し)
2011年度
(計画)
売上高 検査部門  205億円  350億円
医療部門  100  150
その他   25  
合計  330  500
営業利益率    11%  18%
新製品比率    12%  20%
海外比率    17%  30%

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積水化学は2008年7月、カンザス州の薬物動態試験受託企業 XenoTech, LLC. の株式100%を取得すると発表した。

積水メディカルは、薬物動態分野において国内最大手の地位を築いてきたが、さらなる事業成長を目指すには、医療大国である米国への事業展開が必須と考えた。

ゼノテック社は現在の経営者であるパーキンソン博士によって設立されたベンチャー企業で、薬物動態分野における試験受託サービスならびに酵素試薬、肝細胞の試薬販売を行っている。

従業員数 約100名、売上高 14.7百万US$)(2007 年度実績)  

 


* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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