経済団体の温暖化意見広告

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2020年までの温室効果ガスの削減目標を話し合う政府の中期目標検討委員会は3月27日、地球温暖化問題に関する懇談会へ削減案を報告する。これを受け、政府は6月までに目標を決定し、その後、国連気候変動枠組み条約締結国会議に方針を示すこととなっている。

検討委員会では、努力継続ケースから各国一律25%削減ケースまで、いろいろの案を検討している。

経済界には進め方を不満とする意見が多い。

2月26日に東大サステイナビリティ学連携研究機構主催でエネルギー持続性フォーラムが開催された。
席上、産業界からは、温暖化対策について、十分な情報公開を行い、企業や家計の負担についても説明し、合意を得るよう努力すべきだとの主張が行われた。

太陽光発電の買取制度についても、経産省には「高額な太陽光発電システムを買えるのは金持ちだけ。なぜ、われわれが負担しなければいけないのか」などの苦情が多数寄せられているという。

   2009/3/3  太陽光発電に関する新たな買取制度の創設へ

各業界、経済団体の連名の意見広告が、3月17日の各紙朝刊に掲載された。

内容は下記の通りで、
・日本は既に世界トップレベルの低炭素社会となっており、裏付けのない過大なCO2削減には国民全体に大変な痛みが伴う。
 (3%削減でも一世帯あたり約105万円の負担)
・日本は世界トップレベルの低炭素社会であることの例示
・主要CO2排出国全ての参加が必須
としている。

これに対し、斉藤鉄夫環境相は3月19日の閣議後の記者会見で、「一方的な意見だ。産業界の低炭素化に向けての本気度が疑われる」と述べ、批判した。
意見広告の一世帯105万円の負担との試算については、環境相は家庭に及ぶ負担は省エネによるコスト削減や温暖化が進んだときの被害を考慮すべきだとし、温暖化対策で新たな市場や雇用が創出されるとの考えも強調した。

意見広告

考えてみませんか? 私たちみんなの負担額。

日本は世界トップレベルの低炭素社会です。
私たちは、世界最高のエネルギー効率をさらに向上させ、
地球規模での排出削減に積極的に取り組む決意です。
一方、社会全体のコスト負担の問題も大切です。

 先頃、日本政府は、京都議定書に続く2013年以降の地球温暖化対策の新たな取り組みに向けたCO2削減の中期的な目標を6月までに決定する事を表明しました。
 私たちは、石油危機以降、家庭も産業も最大限の省エネルギー努力を推進してきました。その結果、日本は既に世界トップレベルの低炭素社会となっています。従って
裏付けのない過大なCO2削減には国民全体に大変な痛みが伴います。
 また、日本がいくらCO2削減努力をしても、主要CO2排出国の参加がなければ地球温暖化問題は解決しません。次期国際枠組みには主要CO2排出国全体での参加が必須です。

3%削減でも一世帯あたり約105万円の負担。

長期エネルギー需給見通し(経済産業省総合資源エネルギー調査会)によれぱ、2020年のエネルギー起源CO2排出量を1990年比で3%削減(2005年比13%削続)*するためには、約52兆円の社会的負担が必要とされています。これは、仮に一世帯あたりにすると約105万円**の負担にあたります。
  * 京都議定書で定められた「1990年比 ▲6%」という目標は、森林吸収源対策や京都メカニズム等が加味された数値であり、
    エネルギー起源CO2に限った値は、約2%(+1.3~+2.3)の増加が目安とされています。
  ** 52兆円を49,063千世帯(平成17年度国勢調査の一般世帯数)で除した値。

日本は世界トップレベルの低炭素社会です。

私たちは、世界最高のエネルギー効率をさらに向上させ、地球規模での排出削減に積極的に取り組む決意です。

主要CO2排出国全ての参加が必須です。

 京都議定書においては、削減義務の無い新興国や離脱した米国からの排出量が著しく増加した結果、削減義務を負う国の排出量は世界の3割に留まっています。この比率は、新興国の経済成長に伴い、今後さらに2割程度にまで低下するとの試算もあり、一層の実効性の低下が懸念されています。
 米国、中国、インド等の主要排出国が参加しないまま、次期枠組みをつくることは、それらの国が無制限な排出を続けることを国際的、制度的に認め、保証することです。これは地球規模の排出削減の観点からすれば全く無意味です。
 また、京都議定書では1990年からの削減率で国際約束がなされましたが、過去の削減努力等は各国で異なり、公平性の観点から基準年の考え方については見直しが必要です。


この広告に対し、世界自然保護基金(WWF)ジャパンは、同広告の説明は国民に誤った印象を与えかねないと危惧し、下記のコメントを出した。 http://www.wwf.or.jp/activity/climate/news/2009/20090317opt.htm  

こうした数字(世帯への負担は105万円)の示し方には3つの大きな問題がある  
  1: 52兆円は2020年まで(約15年間)のコスト
      15年で割れば、1世帯当たりの負担額は年間にして7万円強
  2: 負担は国民の世帯だけにかかるものではない
  3: 52兆円はあくまで一つの試算に過ぎない

日本は「世界トップレベルの低炭素社会」か?
  現状で満足してはいけないことは明らか


* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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