中国商務部は3月18日、公告22号を出し、米コカ・コーラによる中国最大の果汁メーカー、中国匯源果汁集団(China Huiyuan Juice Group Limited)の買収を認めないと発表した。
昨年8月に施行された中国の独占禁止法で初めての不認可となった。
中国は海外の合併ケースについて、ベルギーのビール会社 InBev による Anheuser Busch 買収を、中国のビール会社への出資を制限する条件付きで承認している。 2008/12/1 中国の独禁法、初の海外での合併ケース
コカ・コーラは1979年に中国市場に復帰して以降、Coca-Cola、Sprite、Fanta などの炭酸飲料を販売、最近はMinute Maid PulpyやOriginal Leaf Tea などの無炭酸飲料の販売も始めている。
中国匯源果汁集団は1996年設立の中国最大のジュースメーカー。
コカ・コーラは匯源のジュースが成功しており、同社と補完関係にあるとし、買収を決め、匯源も賛成した。買収額は24億ドル。
コカ・コーラは中国のソーダ市場において2008年に52.5%のシェア(数量ベース)を占めており、ペプシが33%となっている。
果物や野菜ジュースではコカ・コーラは12%のシェア、匯源は8.5%のシェアで、買収が成功すれば、この分野でもシェアは大きくなる。
コカ・コーラとペプシは途上国で競争でジュースや乳製品のブランドを買いあさっている。
ペプシは昨年、ロシア最大のジュースメーカーのOAO Lebedyansky の株式の75.5%を14億ドルで買収、残りも買おうとしている。
今回、商務部は買収の不承認について、以下の通り述べている。
関係法令に基づき調査した結果、本取引は市場での競争を阻害することが判明した。
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買収後に、コカ・コーラは炭酸飲料市場での支配的な地位を利用して、 ジュース飲料の抱き合わせ販売やセット販売を行ったり、排他的な取引条件を設定したりして、ジュース飲料市場の競争を大幅に制限し、消費者に少ない種類の中 から高い商品を選ぶことを余儀なくさせる。
この分野ではブランドが重要であるが、コカ・コーラは匯源社の「美汁源果粒橙」と「匯源果汁」という有名ブランドを押さえ、炭酸飲料での支配力と合わせ、潜在的競争者の参入を妨げる。
買収は国内の中小ジュースメーカーの生存を脅かし、中国ジュース飲料市場の競争局面にマイナス影響を与える。
この買収が競争に与えるマイナス影響を軽減するため、商務部の要請によりコカ・コーラは修正プランを提出したが、修正プランではマイナス影響を効果的に軽減することはできないと判断した。
コカ・コーラは3月18日、この決定を受け、買収をとりやめた。「失望したが、商務部の決定を尊重する」としている。
同社では長期的に中国市場を重視しており、これまでに16億ドルを中国に投じているが、新工場建設や流通網整備、研究開発等に今後3年間で20億ドルを投じるとしている。
3月6日に上海で90百万ドルをかけ、Global Technology and Innovation Centre を開設した。
この決定に対しては、買収後のジュースのシェアは25%以下のため、おかしいとの意見も出ている。
ブログには、中国で買収をしようとすると、①政府が関心を持たない中小企業、②大企業の場合は赤字で苦しみ、外国資本がそれを再生させる場合、又は③マジョリティでない場合で、かつ、技術移転や海外市場進出などのメリットがある場合、に限られてしまうとのコメントも出ている。
商務部の報道官は新華社通信に対し、決して保護主義によるものではないと反論している。外資導入方針には変わりはなく、今回の決定はあくまで事実に基づき、十分に調査した結果で、目的は市場での競争を維持し、消費者を保護し、公共の利益を守ることにあるとしている。
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中国の反壟断法(独占禁止法)は昨年8月1日に施行された。
2008/8/4 中国、独占禁止法施行
独占禁止委員会が国務院に設置されたが、この職責は競争関連政策の研究・制定、独占禁止ガイドラインなどの制定、競争状況の調査などで、執行はしない。
独禁法の執行は3機関が分担して行うこととなっている。
発展改革委員会:価格独占行為の調査・処分を担当
商務部:事業者結合行為に対する独占禁止審査
工商総局:独占協定、市場支配的地位の濫用、行政権力を濫用した競争の排除・制限に対する執行(価格独占を除く)
今回のような事業買収は商務部の担当となっている。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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