米国際貿易委員会(International Trade Commission:ITC)は3月12日、アンチダンピング課税が5年経過し、昨年6月からレビューしていた中国、日本、韓国原産のポリビニルアルコール(PVA)について課税の延長を決めた。
* 5年後とのレビューを sunset review と称する。
6人の委員のうち、5人が延長に賛成、1人は韓国については反対で中国、日本については賛成した。
2003年6月5日、ITCは日本原産のPVAに関して、fair value 以下で販売されており、米国産業が著しく被害を受けていると認め、ダンピング課税を決めた。同時に審議したドイツ製品についてはfair value 以下で販売されているが、米国産業は著しい被害を受けておらず、その恐れもないと認めた。
商務省は2003年4月に、電気化学、日本酢ビ・ポバール、クラレ、日本合成化学にいずれも144.16%(その他が76.78%)のダンピングマージンを決めている。
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ITCは昨年1月、日本及び韓国原産のグリシンに関しては、fair value 以下で販売されているが、米国産業は著しい被害を受けておらず、その恐れもないとし、ダンピング課税を行わないことを決めている。
調査は2007年4月に開始され、商務省は日本と韓国に対して「ダンピングあり」とのクロ判定の最終決定を公告し、日本に対するダンピングマージンは8社(昭和電工、有機合成、林純薬工業、CBC、セイノーロジックス、エスティローダー、キレスト、Nu-Scaan Nutraceuticals) とも280.57%(その他は165.34%)と決めていた。 <p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>
米国の調査手続きは、ITCが損害について、商務省が調査開始手続・ダンピング・補助金について担当しており、ITCによる被害なしの決定で、商務省の決定は取り消される。
中国からのグリシンに対しては、1995年からアンチダンピング措置を発動しており、2005年11月にはサンセットレビューの結果、5年間の措置継続を決定している。
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化学製品に関する米国の対日アンチダンピング措置は以下の通り。
課税開始 | 延長1回目 | 延長2回目 | |
ポリクロロプレン・ラバー | 1973/12 | 1999/8 | 2005/8 |
フッ素樹脂 | 1988/8 | 2000/1 | 2005/12 |
PVA | 2003/7 | 2009/3 |
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米国はダンピング・マージンの計算に際し、輸出価格が正常価格よりも高い場合(=ダンピング・マージンがマイナス)の価格差を「マイナス」ではなく「ゼロ」とみなすことで税率を不当に高くするゼロイング手法を用い、問題となっている。
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例 正常価格 100、輸出価格がAが80(ダンピングマージン 20)、Bが125(同 -25)、Cが150(同 -50)の場合(いずれも同数量とする)
通常の計算 〔(20)+(-25)+(-50)〕/(80+125+150) = (-15.5%) → ダンピングなし
↓
ゼロイング 〔20+0+0〕/(80+125+150) = 5.6% → ダンピングあり
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日本はWTO上級委員会に上訴、2007年1月の上級委員会報告書でゼロイングがWTO協定違反であると認定された。
しかし、その後の米側の対応が不十分だとして2008年4月に再提訴、「履行パネル」が設置された。
複数の通商外交筋が2月9日明らかにしたところでは、WTO紛争処理小委員会(パネル)は、日本側の主張を大筋で認める中間報告をまとめ両国に通知した。
EUもこれを訴えていたが、本年2月4日、WTO上級委員会はEU側の訴えをほぼ全面的に認める最終報告を発表した。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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