製薬業界は新薬の特許の期限切れなどに伴い、有望な新薬の開発に重点投資する必要に迫られており、M&Aや事業の統廃合が加速している。
現在の金融危機のなかで、手元資金の多い医薬業界だけが多額の買収資金の借り入れが出来る。
本年1月にPfizer が Wyeth を680億ドルで買収すると発表、3月にはMerck がSchering-Plough を411億ドルで買収することで合意した。
2009/1/27 Pfizer、Wyeth を買収
2009/3/11 米Merck、米Schering-Plough を買収
4月16日、英国のGlaxoSmithKline (GSK)と米国のPfizer は、それぞれの抗エイズウイルス(HIV)薬事業を統合すると発表した。
GSKは主力の抗ウイルス事業を強化、Pfizer はWyeth 買収で補強するバイオ医薬品の開発に集中する。
GSKは更に、4月20日、皮膚薬を専門に手がける米製薬会社Stiefel Laboratories Inc. を36億ドルで買収すると発表している。
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GSK、Pfizer、Wyeth の関係は以下の通り。
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GlaxoSmithKline(GSK)/ PfizerのHIV事業統合:
GSK と PfizerはHIV医薬品に特化した合弁会社を設立することで合意した。
新会社はGSKにとっては、製品の幅を広げ、将来の特許切れに対応でき、また新薬候補を追加する意味がある。
PfizerにとってはSelzentry/Celsentri や新薬候補をGSKの販売ルートで拡販できる。
当初の出資比率はGSKが85%、Pfizerが15%で、GSKの連結子会社となる。
しかし、今後、新薬候補の力を勘案して見直すこととした。
全ての新薬候補が承認された場合は、GSKが75.5%、Pfizerが24.5%となる。
GSKの新薬候補のみが承認された場合は、GSKが91%、Pfizerが9%となる。
逆にPfizerの新薬候補のみが承認された場合は、GSKが69.5%、Pfizerが30.5%となる。
また、いずれかの会社が拠出した製品がある基準を達成した場合には、その会社に優先配当を払う規定も入っている。
新会社は11の製品を持つ。主力はGSKのCombivirと Kivexa、PfizerのSelzentry/Celsentriである。
2008年の合計売上高は16億ポンド(23.6億ドル)に達する。新会社のシェアは19%を占める。
Product Class Agenerase Protease inhibitor Combivir NRTI Epivir/3TC NRTI Epzicom/Kivexa NRTI Lexiva/Telzir Protease inhibitor Rescriptor NRTI (US only) Retrovir/AZT NRTI Selzentry/Celsentri CCR5 antagonist Trizivir NRTI Viracept Protease inhibitor (N.America only) Ziagen NRTI
Protease inhibitor:蛋白分解酵素阻害剤(エイズウィルスの増殖防止)
NRTI:ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(エイズウィルスの増殖防止)
CCR5 antagonist:HIVの侵入阻害剤
新会社は、phase II 段階で4種、phaseⅠ段階で2種の新薬候補を持っている。
Product Class Phase GSK 1349572 Integrase inhibitor II UK-453061 NNRTI II GSK 2248761 (IDX899) NNRTI II PF-232798 CCR5 antagonist II PF-3716539 PK enhancer I GSK706769 CCR5 antagonist I
Integrase inhibitor:HIVのDNA組み込み阻害
NNRTI:非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬
既存製品を入れると、新会社は17の製品を持つこととなる。
更に新会社は両社とResearch Alliance Agreement を締結する。両社は引き続き研究開発を行い、新会社は第一に交渉する独占権を有する。
なお、Pfizerのワクチンは新会社に移さない。
同社はWyeth買収で幅広いワクチン事業を入手する。
2002年にFDAはネコ免疫不全症を予防する世界初のワクチンを承認した。
カリフォルニア大学とフロリダ大学が特許を持ち(発明者はJanet Yamamoto)、Wyethの動物用医薬品事業部門であるFort Dodge Animal Health社がFel-O-Vax FIV として販売している。
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GSK/Stiefel Laboratories:
GSKは皮膚薬を専門に手がける米製薬会社Stiefel Laboratories Inc. を36億ドルで買収すると発表した。
Stiefel の全株式を29億ドルで買い取ったうえ、同社の4億ドルの借入金を肩代わりする。
更に、今後の業績しだいで、3億ドルの現金支払いを行う。
買収後、GSKの皮膚薬はStiefel の事業と統合、GSK Groupの中でStiefel の名前で事業を続ける。
両社の皮膚薬を統合すると、2008年ベースで売上高は約15億ドルとなり、全世界の処方箋皮膚薬の市場で8%のシェアとなる。
Stiefel 製品が9億ドル、 GSK製品が5.5億ドルとなっている。
統合により、Stiefel 製品は特にブラジル、ロシア、インド、中国、日本などでGSKのグローバルな販売ルートを利用でき、GSK製品はStiefel の皮膚薬専門の販売力、医者との関係などを利用できる。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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