温暖化ガス削減中期目標

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政府は3月27日、首相直轄の地球温暖化問題に関する懇談会の中期目標検討委員会(座長・福井俊彦前日銀総裁)を開き、2020年時点の温暖化ガス排出削減の中期目標案を公表した。 

選択肢として6つのケースを考えた。(1つは分析継続中)

  GHG   下図
05年比  90年比
 ・努力継続
  (既存技術の延長線上で機器等の効率改善に努力し、

   耐用年数の時点でその機器に入替え)
 -4%  +4%   ケース①
 ・最先端技術の最大導入
  (規制を一部行い、新規導入の機器等を
   最先端のものに入替え)
 -14%  -7%   ケース③
 ・最先端技術導入の義務付け
  (規制に加え導入の義務付け等を行い、
   新規導入の機器等を最先端に入替え。
   更新時期前の既存の機器等も
   一定割合を最先端に入替え)
 -21~
 -22%
 -15~
 -16%
  ケース⑤
       
先進国全体で -25%、国別では、      
 ・限界削減費用を均等にするケース   -6~
 -11%
 ±0~
 -3%
  ケース②
 ・GDP当たり対策費用を均等にするケース        ケース④(分析継続中)
 ・一律 -25%  -30%  -25%   ケース⑥

政府は残る1案(ケース④)の確定を急ぎ、試算を参考に国民からの意見を聴いた上で、今後10年間の温暖化対策の目標値を6月までに定める。

検討委では、これまで主に化石燃料の燃焼に伴って排出されるCO2を対象に分析していたが、今回は代替フロンなど京都議定書で定められている温室効果ガスすべてを試算に含めた。

 

それぞれのケース実現のために必要な対策は研究機関により異なるが、日本エネルギー経済研究所の分析では以下の通り。

  太陽光発電 次世代自動車 省エネ住宅 高効率給湯器
現状の4倍
住宅:130 万戸(455 万kW)
工場・ビル:120 万kW
新車販売の10% 次世代省エネ基準(平成11年基準)を
満たす住宅が、
新築住宅の70%、新築建設物の80%
現状の約70 万台から
約900 万台まで普及
③  現状の10 倍
住宅:320 万戸(1120 万kW)
(新築持家住宅の7割)、
工場・ビル:300万kW)
新車販売の50%、
保有台数の20%
新築住宅の80%、新築建築物の85% 約2800 万台まで普及
現状の約40倍
住宅:1000 万戸(3500 万
kW)
(新築持家住宅すべて、
既築も毎年60 万戸)
工場・ビル:2100 万kW
新車販売の100%
保有台数の40%
新築住宅の100%
(既築はすべて平成4年基準に改築)、
新築・既築建築物の100%
約4400万台
(全世帯の9割)まで普及
同上 同上 同上 同上

試算は、産業構造が現状のまま推移するとの仮定に基づいており、政府内でも検討している「グリーン・ニューディール」政策など低炭素社会に向けて経済・社会構造をどこまで変えられるかという点は加味していない。

ケース①をベースとし、それぞれのケースの影響は以下の通り。

  実質GDP 押下げ 民間設備投資
(2020 年で)
失業者増加 世帯当たり
可処分所得押下げ
(2020年所得)
家庭の光熱費
支出増加
(世帯当たり、年)
2020 年までの
累積
金額 失業者 失業率 金額 金額
0.5~0.6% -1~
 +3 兆円
-0.8~
 +3.4%
11~
 19 万人
0.2~
 0.3%
4~
 15 万円
0.8~
 3.1%
2~
 3 万円
13~
 20%
0.8~2.1% ±0~
 +8 兆円
-0.2~
 +7.9%
30~
 49 万人
0.5~
 0.8%
9~
 39 万円
1.9~
 8.2%
6~
 8 万円
35~
 45%
3.2~6.0% -13~
 +11 兆円
-11.9~
 +12.5%
77~
 120 万人
1.3~
 1.9%
22~
 77 万円
4.5~
 15.9%
11~
 14 万円
66~
 81%

政府内では
ケース③(90年比 7%減)と
ケース⑤(15~16%減)
の2案の実現可能性が高いとの声が多い。

ケース①(4%増)では国際交渉で他国・地域から批判されるのは確実で、
ケース⑥(
25%減)では経済への負担が大きすぎるとする。(検討委の委員からも「現実的ではない」との意見が出た。)

ーーー

これについて、地球温暖化問題に取り組むNGOの代表が同検討委員会の検討状況について、厳しく批判するコメントを発表した。

1. CO2排出量を90年より増やすオプションや京都議定書の目標値よりも低いオプションが提案されており、日本としての低炭素社会づくりへの意欲が全く見られない。科学の要請に反し、国際交渉の足を引っ張るもので、後ろ向きの提案である。
   
2. 対策費用ばかりが負担として強調されているが、対策をとらない場合の悪影響へ対応する費用との比較は全く考慮されていない。
   
3. 温暖化対策によるエネルギー削減で得をする費用が、モデルによっては過小評価されている。
   
4. 新たな温暖化対策費用追加による雇用創出効果、内需拡大の経済効果が全く考慮されていない。
   
5. そもそも温暖化防止のために何がどこまで必要なのかというバックキャスティングの発想で議論が行なわれていない。中期目標については、地球の平均気温上昇を産業革命前に比べ、2℃よりはるかに低く抑えるため科学的に整合した野心的な削減目標(1990年比25~40%削減)を掲げるべきである。
   
6. これまでの議論に市民社会の参加・関与が全く認められておらず、産業界の主張に偏った議論が行なわれている。今後のプロセスについては、市民・NGOの参加を確保すべきである。

* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

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