韓国で10大業種別構造調整案

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韓国の産業政策の中枢である知識経済部(知経部)は本年1月、「主要業種別構造調整の方向」(10大業種別構造調整案)という対外秘の報告書を作成、その一部がすでに具体的な政策として実施されていることが分かった。4月14日付けの韓国東亜日報が伝えた。

自動車、石油化学、造船、鉄鋼、セメント、一般機械、繊維、半導体、ディスプレイ、携帯電話の10大品目に対する構造調整の原則や展望が盛り込まれている。

政府は、産業的側面や財務的側面を総合し、特定産業の構造調整を実施する。知経部は全産業の構造調整の方向付けを決める役割を担う。また、金融委員会や金融機関は、個別企業の財務的側面を分析する役割を担う。

構造調整の大原則として、「市場での自律を尊重」や「早期の構造調整」を取り上げている。
市場での自律を尊重することにより、経営不振企業が淘汰されていく環境を作り出し、再生見込みのない経営不振、限界に達した企業は、速やかに淘汰を促していく方針。

早期の構造調整の詳細原則として、
 ・グローバル的な核心の力量の強化
 ・業界の自主努力
 ・適切な競争維持
という、3つの項目を決めた。

報告書によると、自動車については、中長期的にメーカーを5社から3社又は4社にし、育成していく方針。
「選択と集中」という支援策により、自動車生産台数基準で世界5位の韓国自動車産業のプレゼンスを4位へと跳躍させる。

現代自動車と傘下の起亜自動車を除き、GM大宇、ルノーサムスン、双竜自動車のうち1~2社を育成対象から外し、自然な構造調整を促す考えと解釈されている。

石油化学については、蔚山、麗水、大山の3つの産業団地に分かれているが、「企業同士の独立志向」という形で誘導し、事業転換により団地別に特化させる。
ポリスチレンやテレフタル酸など収益性が悪化した品目を中心に事業交換、品目別統合をサポートし、規模の経済を確保するとともに品目別の専門化を促す。

例えば、ポリスチレンのメーカーは、蔚山に3社、麗水に2社あるが、これを各団地別に1社へ統合するという。

PSメーカー
立地 会社名 能力
千トン
蔚山 錦湖石油化学 227
東部韓農 100
BASF 240
麗水 LG化学 232
第一毛織 162
合計   961

また、PTAも構造調整の対象となっている。

PTAメーカー
立地 会社名 能力
千トン
蔚山 KP Chemical 1,080
泰光産業 1,000
SK Chemicals 520
暁星 410
Samsung Atofina 1,100
大山 Samsung Atofina 700
麗水 三南石油化学 1,700
合計   6,510

政府の10大業種別構造調整案に対しては、業界の専門家や各企業では概ね、構造調整の必要性や方向性には共感を示している。
しかし、政府主導の人為的な構造調整は副作用を招きかねないとし、長期的な政策課題で、ショックを最小限に食い止めながら推進したほうが望ましいという意見もある。

石油化学業界でも構造調整は不可欠だと指摘する専門家が多いが、構造調整の対象になりうる企業は、反発を強めている。

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韓国政府は通貨危機のさなかの1998年に「Big deal」と呼ばれる構造改革を行っている。

1998年2月に財閥の構造改革に関する5大課題が発表され、5大財閥(現代、三星、大宇、LG、SKのこと。このうち大宇は1999年8月に倒産・解体した)およびその取引先銀行はこの方針に沿って構造改革を進める方向で合意した。

基幹産業における過剰設備・重複投資を解消し、効率化を図る観点から、5大財閥における事業の再編成を行うもので、通称ビッグディールと呼ばれた。

半導体、石油化学、自動車、航空、鉄道車両、発電設備・船舶用エンジン、精油が対象となった。

石油化学については、大山にある三星総合化学と現代石油化学を統合し、外資を誘致する予定であった。
外資企業としては三井物産の可能性がたびたび報じられた。
しかし、出資額で調整がつかず、実現しなかった。

最終的に三星総合化学はTotal が参加し、Samsung Total となった。

現代石油化学はLG化学/湖南石化連合が買収、2005年1月に2系列を分け合い、LG Daesan PetrochemicalLotte Daesan Petrochemical とし、前者は20061月にLG化学が、後者は20091月に湖南石油化学が吸収合併した。

LG化学/湖南石化連合の買収に先立ち、現代石化のVCM、PVC事業はLG化学が買収している。

精油については、現代精油がハンファエナジーを買収、ハンファエナジーは仁川精油と改称した。

その後、仁川精油は現代グループから離脱、2004年に中国のSinochem が買収を決めたが、白紙に戻り、最終的にSKエナジーが買収した。

ーーー

日本では政府による産業構造調整への関与は1988年に終了した産構法が最後とされており、各社の自主的な決断によるしかない。


* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


コメント(1)

韓国の基礎石化は苦しくなっていると聞きますし、この施策は結構インパクトありますね。それにしてもイミョンバク大統領の剛腕はすごいなあ。
大雑把ですが、日本を考えた場合、赤字2〜3年ぐらい続けてやっと大きな動きがでるような印象です。
また、行政主導で言えば過去に半導体や最近では水処理なんかで企業の枠越えた取り組みやってますが、参加企業は独自最新技術はその場には出さないようだし、日本の総合力を集めた初めの段階から(ちまたで言われるように)空中分解している気がします。
そう考えるとNEDOなんかが企業を集めて新技術、製品開発させて、それをまた民間に移して商売させるという国家プロジェクト的なものを、単純にボリュームでもいいですからドイツや米国並にもっと拡大すべきだと思います。日本、日本人としてベクトルを今一度合わせることが必要なのではないかと感じます。
脈絡がない文章になってしまいました。韓国の施策の話をはじめて知りました。どうもありがとうございました

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