公正取引委員会は4月20日、日立アプライアンス(日立製作所の100%子会社で、総合空調及び家電製品の開発・製造・販売)に対して、不当景品類及び不当表示防止法第6条第1項の規定に基づく「排除命令」を出した。
「冷蔵庫総合カタログ」及びウェブサイト、新聞広告、ポスターの表示内容について、需要家に対して、実際よりも著しく優良と誤認させる恐れがあると判断した。
昨年9月に発売した冷蔵庫R-Y6000(「栄養いきいき真空チルドV」シリーズ)について、
「フレックス真空断熱材」の芯材の原材料に廃棄された冷蔵庫の棚等からリサイクルした樹脂を使用しており、また、この樹脂を使用することにより、「フレックス真空断熱材」の製造工程において排出する二酸化炭素の量を、当該樹脂を使用しない場合と比べて約48パーセント削減しているかのように表示した。
実際にはリサイクル樹脂の使用は一部機種・期間においてのみのものであり、また、実際の二酸化炭素の削減率も表示の数値より小さかった。
約48%という削減率は、4年前に採用していた製造工程との比較で、直近の新しい工程とではゼロから数%程度削減したに過ぎなかったという。
また同社が新聞各紙に掲載した新聞広告及び取引先販売店舗等に掲示したポスターにて、「栄養いきいき真空チルドV」シリーズ及び「ビッグ&スリム60」シリーズの計9機種の冷蔵庫全てにおいて、「フレックス真空断熱材」の芯材の原材料として、廃棄された冷蔵庫の棚等からリサイクルした樹脂を使用しているように表示した。
実際には一部機種においてのみ使用していた。
製品の設計から試作段階に移った2008年夏ごろには開発設計部門でリサイクル材活用が技術的に間に合わないことが分かったが、宣伝部門などに状況が伝わらなかったという。
同製品は3月末までに15万台を販売、300億円を売り上げたという。
本年2月10日に、この冷蔵庫9機種で「平成20年度省エネ大賞省エネルギーセンター会長賞」を受賞しているが、同社では自ら取り下げを申し出た。
なお、同社では、本件はカタログ及びウェブサイト、新聞広告、ポスターの表示に関する問題の指摘を受けたものであり、対象の冷蔵庫「栄養いきいき真空チルドV」シリーズならびに「ビッグ&スリム60」シリーズ計9機種の年間消費電力量や2010年省エネ基準達成率等、冷蔵庫の性能・機能自体には問題はないとしている。
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今回、公取委が排除命令を出した根拠の「不当景品類及び不当表示防止法」の条文は下記の通り。
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違反に対しては公取委は排除命令を出せるが、罰金などはない。
(不当な表示の禁止)
第4条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号に掲げる表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示
三 前2号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認めて公正取引委員会が指定するもの
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