Rio Tinto は本年2月12日、中国国有アルミ大手、中国アルミ業公司(Chinalco)から現金で195億ドルの出資を受けると発表した。
1)Chinalco はRio が世界各地に持つアルミ、銅、鉄などの利権をJVへの出資の形で取得する。対価は合計123億ドル。
2)Chinalco は Rio の両本社の転換社債を72億ドルで取得する。
全て転換されれば、Rio Tinto 全体への出資比率は現在の9%から18.0%に増える。
2009/2/13 中国アルミがRio Tintoに出資、鉱山利権を取得
本件の現状は以下の通り。
資金問題:
Chinalco は3月27日、Rio Tinto との提携のための資金 210億ドルがアレンジできたと発表した。
China Development Bank が主導するコンソーシアムとの契約を締結したもので、今回の取引のための195億ドルの融資契約と、運転資金や本取引に関係するその他の支出のための15億ドルのスタンドバイ・ファシリティから成っている。
コンソーシアムの他のメンバーはいずれも国営銀行の、Export-Import Bank of China、Bank of China (国営商業銀行)、Agricultural Bank of Chinaである。
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豪州政府の承認問題:
本件の成立には2つの政府承認が必要となる。
第一は豪州の独禁法当局(Australian Competition and Consumer Commission:ACCC)で、 Trade Practices Act 1974 に基づき、取引が競争を制限するかどうかを審査する。
第二はForeign Investment Review Board (FIRB) で、Foreign Acquisitions and Takeovers Act 1975 に基づき、国の利益に反するかどうかで判断する。FIRBの勧告に基づき、財務相が最終決定を下す。
ACCCは3月25日、本件に反対しないと発表した。
Chinalcoによる事業参加が競争を著しく減らす可能性が少ないと判断した。
Rio Tinto の豪州の鉄鉱石事業と中国の製鉄メーカーChinalco との垂直統合が、中国の製鉄メーカーのために鉄鉱石価格を競争レベルよりも下げるような影響力を与えることはないと判断した。
ボーキサイト、銅、アルミナについての豪州市場での競争についても、Rio Tinto とChinalco の事業の重なりは少なく、これら市場で競争を減らす可能性は少ないと判断した。
一方、FIRBは3月16日、レビューを6月まで延長した。
(原則30日で判断するが、重要案件については90日間の延長が可能)
Rio Tinto の第三位の株主のAustralian Foundation Investment Co (AFIC) はChinalcoがRio Tintoの事業経営に参加することに対し、懸念を表明している。Chinalcoが中国の国営企業であること、需要家であるとともに競合会社でもあることを問題視した。
(AFICの取締役にBHP Billiton の会長が入っている)
豪州の資源の需要家である中国が価格や生産に影響を与えるのを懸念する声がある一方、これを拒否すると中国と豪州の貿易に悪影響を与えるとの懸念もある。
2008年の調査では外国政府がコントロールする企業に対する投資規制強化を強く支持する人が85%に達する。
これに対し、Rio Tintoは、この取引で390億ドルの借入金で苦しむ同社にとって必要な金利の安い資金が手に入ると反論している。
この取引が成立しない場合、借入金返済のため資産売却を急ぐ必要が出てくるとする。
2009年に入って、大手鉱山会社が世界的経済不景気を理由に多数の解雇を発表しているが、更なる解雇を示唆している。
最終的には条件付きで認めるのではないかとの見方が強い。
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豪州3位の鉱業会社で世界2位の亜鉛メーカーのOZ Minerals と、中国の国有企業五鉱集団(Minmetals)の子会社の五鉱有色金属(Minmetals Non-ferrous Metals)は2月16日、Minmetals がOZ Minerals を1株82.5豪セントで全株式を取得する実現案契約を締結したと発表した。
2009/2/21 中国五鉱集団、豪州OZ Minerals を買収
これに対しては3月27日、豪州財務相が声明を発表、OZ Minerals の Prominent Hill 鉱山は南豪州のWoomera Prohibited Area (豪軍の武器テスト場)にあり、これが含まれる限り、本案は承認できないとした。
Prominent Hill の銅/金プロジェクトは本年2月に生産開始した。
Reserves 確定鉱量 | 1.4Moz gold, 0.95Mt copper |
Resources 埋蔵鉱量(確定鉱量+推定鉱量) | 7.4Moz gold, 2.5Mt copper |
これを受け、OZ Minerals は五鉱集団と協議するとしている。
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中国の豪州進出が目立つなか、首相や国防相の姿勢を巡り、政治問題化してきた。
発端は国防相Joel Fitzgibbonとシドニー在住の豪州籍を持つ中国系ビジネスウーマンHelen Liu との関係で、軍治安当局が安全保障上の問題があるとして調査を始めた。
Liuは World Federation of Overseas Chinese Association の副会長で、一族は中国人民軍と密接な関係をもっていると言われている。
国防相はLiuを個人的な友人としているが、2002年と2005年(野党時代)に訪中旅行の費用をLiuに出してもらっていた。しかも先週まで、議会の証言でそれを隠していた。Liuの家族の所有するタウンハウスを借り、洋服もプレゼントされていた。
Kevin Rudd 首相は中国語を話す元外交官で中国通を自負しており、政権発足以来、中国との関係強化を進め、最近では、国際通貨基金での中国の役割拡大について、G20首脳会議の場で取り上げると表明している。
野党党首のMalcolm Turnbull は国防相の辞任を要求、首相を北京の移動大使のように行動していると批判した。
これに対し財務相は野党党首が国民の間の潜在的な反中感情をあおり、黄禍論をあおっていると逆批判した。
豪州財務相が五鉱集団のOZ Minerals 買収に関し、Prominent Hill 鉱山が含まれる限り、本案は承認できないとしたことに対し、Sydney Morning Herald は、政府は恣意的な投資障壁をつくり、「中国に立ち向かっている」ように見せかけているが、これは中国マネーは危険だとのメッセージを国民に与えるもので、「赤禍ヒステリア」を起こしかねないとしている。
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鉱山は武器テスト場から150km離れており、安全保障上の懸念はないという。
* 総合目次、項目別目次は
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各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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