水俣病 53年

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水俣病発生を行政が把握してから53年を迎えた5月1日、熊本県水俣市で犠牲者を悼む慰霊式があった。

与野党が今国会に出した被害者救済法案をめぐる修正協議を始めたのをふまえ、斉藤環境相は式典のあいさつで「一刻も早く(救済の)枠組みが整理されるよう願う」と述べ、今国会中の救済法案成立への期待を表した。

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与党は3月13日、「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の最終解決に関する特別措置法案」を国会に提出した。

2009/2/17 水俣病与党プロジェクトチーム、チッソ分社化法案を今国会提出へ

これに対し、民主党は4月17日、「水俣病被害の救済に関する特別措置法案」を参議院に提出した。

与党案 民主党案
対象疾病 1)四肢末梢優位の感覚障害 1)四肢末梢優位又は全身性の触覚又は痛覚の感覚障害
2)口の周囲の触覚又は痛覚の感覚障害
3)舌の二点識別覚の障害
4)求心性視野狭窄
5)大脳皮質障害による知的障害、精神障害又は運動障害
被害者給付金 150万円 300万円
医療費等
 
療養費
療養手当:月額10,000円
医療費:
 自己負担分相当額
 療養手当:公健法の療養手当と同等額
 特別療養手当:月額10,000円
最終解決に向けた取組 公害健康被害補償法
地域指定等の解除
    
     ー
事業再編計画
 
事業譲渡(チッソ分社化)

当初の基準は、「四肢抹消の感覚障害のほかに視野狭さくや中枢性難聴など複数の症状の組み合わせ」であった。
最高裁は2004年の関西訴訟判決で、「一定の条件があれば感覚障害だけで水俣病と認められる」とした大阪高裁の判断を支持した。

与野党法案が出そろってから初の与野党協議が4月24日、国会で開かれたが、両案の隔たりが改めて浮き彫りになった。

与党から「民主党案は救済対象を広げすぎではないか」などの指摘があった。
但し、一時金については与党の150万円から増額する方向で与党と民主党の合意が図られる見通しとされている。

一方、チッソ分社化について民主党は「現時点ではとても容認できない」との見解を示した。

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西日本新聞は4月23日の社説で以下の通り述べている。

加害企業の事実上の消滅につながるチッソ分社化には、患者団体などに「責任逃れだ」との強い反発がある。私たちも同感ではあるが、補償費確保などを考えると、チッソのありようは避けて通れない問題だろう。
加害責任と救済責任を明確にしたうえで、チッソの補償費支払い能力を維持する仕組みを、与野党協議で救済法案とは別に練り上げてもらいたい。

水俣病の地域指定解除は「何をか言わんや」である。地域指定が解除されれば患者認定も当然なくなる。それは行政的には水俣病問題の終結を意味する。

水俣病被害の全容はいまだつかめていないのだ。新たな救済策実施にあたっては、民主党案に盛り込まれた「国による速やかな被害実態調査の実施」こそ最優先されるべきだろう。
それを怠れば、新救済策も14年前の政治決着の二の舞いになってしまう。

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民主党によると水俣病患者数は以下の通り。

      補償 人数
救済 公害健康被害補償法患者 行政が感覚障害と運動失調など
複数症状の組み合わせにより認定
1,600万円~1,800万円 補償 2,962
1995年 政治解決* 医療手帳 四肢末端優位の感覚障害 チッソから一時金260万円、
国・県から医療費自己負担分全額、
月額約2万円の療養手当
11,152
保健手帳 感覚障害以外で一定の神経症状 医療費自己負担分(上限付き)支給 1,222
司法救済 85年8月 2次訴訟(福岡高裁) 600~1,000万円補償     4
04年10月 関西訴訟(最高裁)
 チッソは二審で確定(51人)
 国・県分のみ上告(45人)
37人へ計7,150万円
8人は賠償取消
(但し二審判決で支払済みで変更なし
) 
   51
新保険手帳 *  関西訴訟で国側が敗訴し、復活 医療費自己負担分支給 21,190
未救済 公健法認定申請者 最高裁判決後   6,393
その他 国賠訴訟等原告   1,688
不知火患者会    1,662
新潟水俣病      17
水俣病被害者互助会       9

* 医療手帳、保健手帳、新保険手帳は、認定審査、認定訴訟取り下げが条件
  保健手帳、新保険手帳は、補償はなく、医療費補助のみ 


* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

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