三菱樹脂は5月4日、世界最大手のエンジニアリングプラスチック製品(EPP)の加工メーカーであるQuadrant AG(本社:スイス)とEPP事業の世界展開の一環として、戦略的提携を行うことに合意したと発表した。
同社の基盤事業のEPP事業は1966年に米国 The Polymer Corporation と合弁で日本ポリペンコを設立し、モノマーキャスティングナイロンを中心とするEPPの加工・販売事業の展開を開始したが、現在も日本のみでの展開となっている。
今回の提携で以下を狙う。
・EPP事業における世界的リーディング企業としての地位の実現
・ワールドワイドな生産体制の確立と海外展開の促進
・事業シナジーの発現
The Polymer Corporation は1989年にDSMが買収、更に2001年にQuadrant がDSMのEPP事業を買収したため、日本ポリペンコは現在は、三菱樹脂とQuadrant のJVとなっている。
今般、三菱樹脂とQuadrant の創業者4人が、オランダに50/50の合弁形態での持株会社Aquamit B.V.を設立し、この持株会社がQuadrant の株式の公開買付けを実施し、100%を取得する。
持株会社の資本額は2,598千ユーロ(約 3.4億円)
Quadrant 株式の買付総額(予定)は約162百万スイスフラン(約146億円)
なお、発表にはないが、日本経済新聞(2009/5/5)によると、三菱樹脂は買収費用を全額負担し、役員も派遣して実質的な経営権を握る。持株会社は三菱樹脂の連結子会社となる。
ーーー
Quadrant は1996年設立で、2001年にDSMのEPP 事業を買収した。
DSMのEPP事業は、1976年のErta買収に始まり、その後、Sheffield Plastics、Polymer Corporation を買収した。
しかし、DSMがライフサイエンスと機能材料に集中することを決め、EPP事業をQuadrant に売却した。
(DSMは2002年に石化事業をSABICに売却している)
Formica →Erta n.v. | DSM | Polymer Corporation | Quadrant | |
1933 | Formica設立(ベルギー) (plastic buttons) |
|||
1936 | 熱可塑性樹脂の injection moulding process |
|||
1936 | nylon | |||
1946 | 設立(米国) | |||
1947 | Polypenco特許 (nylon extruding) |
|||
1948 | Erta n.v.と改称 | |||
1957 | Polypenco 設立(英国) (nylon and PTFE) その後、欧州、日本ほかに展開 |
|||
1967 | Cestidur SA (France)買収 (Polyethylene HD plate) |
|||
1976 | DSMがErta 買収 | |||
1983 | Sheffield Plastics USA買収 (Polycarbonate plate) |
|||
1988 | DSMがPolymer Corp、Polypenco 買収 | |||
1996 | Quadrant設立 Symalit AG 買収 (熱可塑性フッ素樹脂素材) | |||
2001 | QuadrantがDSMのEPP事業買収、 Quadrant Engineering Plastic Productsに改称。 | |||
2005 | QuadrantがPoly Hi Solidur買収 (world market leader in UHMW-PE products) |
Quadrant は現在、世界19箇所に製造・販売拠点を有し、2,400名の従業員を抱える。
会社概況 http://www.quadrant.ch/download/2008/unternehmenspraesentation.pdf
最近の業績は以下の通り。(百万スイスフラン)
2007 年12 月期 | 2008 年12 月期 | |
売上高 | 811.8(730.6億円) | 733.4(660.1億円) |
EBITDA | 98.4( 88.6億円) | 68.0( 61.2億円) |
当期利益 | 39.6( 35.6億円) | 10.8( 9.7億円) |
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
コメントする