コスモ石油、韓国でパラキシレン製造へ

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5月7日の日本経済新聞夕刊は、コスモ石油が韓国石油大手のHyundai Oil Bank (HDO)と合弁で、韓国でパラキシレンの生産に乗り出すと報じた。

コスモ石油では、「前向きに検討しておりますが、現時点において決定しておりません」としている。

報道内容は以下の通り。

・両社はともに産油国アラブ首長国連邦・アブダビの政府系投資会社(国際石油投資会社:IPIC)が筆頭株主となっている。
 資金と技術を持ち寄って高い成長が見込める中国などの市場を開拓する。

・9月をメドに韓国に折半出資の新会社を設立。
 新会社はソウル南西に位置する瑞山市大山のHDO製油所内にある年産38万トンのパラキシレン設備を買い取る。

・2013年に同製油所内で年産80万トンと世界最大規模の新設備を増設し、生産能力を118万トンに高める。
 年間売上高2千億-3千億円を目指す。
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付記    

コスモ石油は6月9日、合弁会社設立の基本合意を発表した。

合弁会社

     ・設立時期 :2009年9月予定
     ・出資比率 :当社 50%、HDO 50%
     ・事業内容     :パラキシレンおよびその他関連製品の製造・販売
     ・設備規模 :a)HDOより譲渡予定のナフサを原料とする既存パラキシレン製造設備
              (HDO大山(デサン)製油所既設・2009年譲渡予定)
               ナフサスプリッター-55,000BPD
               ナフサ脱硫装置-24,000BPD
               接触改質装置 -21,500BPD
               BTX装置     -パラキシレン生産量
380,000トン/年
               その他パラキシレン事業に関わる設備(タンク等)
             b)ミックスキシレンを原料とする新規パラキシレン製造設備
              (HDO大山製油所に2013年新設予定)
               BTX装置     -パラキシレン生産量
800,000トン/年
               その他パラキシレン事業に関わる設備(タンク等)
   
併せて同社では、協業化のさらなるシナジーを創出するために、四日市製油所内にミックスキシレン蒸留装置を新設することを決定した。
    <新設ミックスキシレン蒸留装置概要>
     1.建設予定地 四日市製油所
     2.
ミックスキシレン生産能力 300,000トン/年
     3.完成予定 2011年11月

ーーー

現在の韓国のパラキシレンメーカーは次の通り。(千トン)

会社名 立地 能力
GS Caltex Oil Yeochun 1,200
KP Chemical Ulsan 750
Samsung Total Daesan 600
S-OIL (双龍精油) Onsan 650
SK Energy Ulsan 650
Hyundai Oil Bank Daesan 360
Total 4,210

* Hyundai Oil Bank情報では能力は380千トンではなく、360千トンとなっている。

ーーー

コスモ石油には、UAEのIPIC が約900億円を投じコスモに20%出資し、筆頭株主になっている。

Hyundai Oil Bank は現代グループが1964年に極東石油として設立、一時シェルとのJVとなったが、1993年にHyundai Oil Bank と改称した。

1999年にIPIC50%を取得、2002年に更に20%を取得し、現在70%を所有している。
残りは現代重工業の
19.87%を初めとして現代グループが合計28.74%、残り1.26%4人の株主が所有している。

IPIC2008年に持株の半分の売却をGSカルテックスなどと交渉したが、現代重工業が株主間契約に反するとして売却を防ぐための法的手続きを行った。

Hyundai Oil Bank は大山に36万バレル/日の製油所をもつ。
製油所に隣接してベンゼンプラント(
11万トン)とパラキシレンプラント(36万トン)をもち、製品はほとんどを中国、台湾、東南アジアに輸出している。

コスモ石油とHyundai Oil Bank 20084月、石油事業包括協力覚書を締結した。コスモとIPICとの共同事業テーマの一つである「IPICと密接な関係にある会社との連携による製品融通や共同投資のための国際的、互恵的ネットワーク構築」の一環。

両社は今後のアジア太平洋での需要の増大を背景に域内の石油産業の一層のグローバル化が進展するという認識を共有し、製品融通・マーケティング協力等により 両社が計画中の製油所の高度化設備をフルに活用することで相互発展の機会を創出すべく、以下の分野について、検討委員会を設置し協業可能性を検討する。

1)供給とトレーディング(Supply & Trading
   石油製品・半製品・石油化学製品融通等による製油所供給体制最適化
   中国やその他アジア太平洋共同マーケティング

2)石油精製(Refining
   両社の将来の精製装置高度化も踏まえた技術協力・研修生交流
   製油所オペレーションの効率性向上やコスト低減に資する情報共有

3)一般事項(General
   リテールマーケティング情報やその他情報の共有

ーーー

今回のコスモ石油/Hyundai Oil Bank のパラキシレン計画は、実はHyundai Oil Bank と同じく IPICが出資するスペインのCEPSA (Compañía Española de Petróleos, S.A.) との間で交渉が行われていた。

20077月、Hyundai Oil Bank CEPSA は覚書を締結した。

・両社で50/50JVを設立
Hyundai Oil Bank の大山製油所に2010年までにベンゼン(30万トン)、パラキシレン(80万トン)プラントを建設
Hyundai Oil Bank の既存プラントを引き継ぐ。

今回の計画はコスモ石油がCEPSAの代わりに入るということになる。

IPICCEPSAの株を買い増して47%を抑える予定で、IPICが世界戦略を考え、アジアの計画はコスモ石油とHyundai Oil Bank の組み合わせとした可能性がある。

ーーー

IPICはスペインのCEPSA25%を出資していたが、何故か現在の出資比率は9.5%に下がっていた。

現在の出資比率:
Total(フランス) 48.8%
Santander Bank(スペイン) 32.5%
Union Fenosa(スペイン)  5%
IPIC 9.5%

今回、IPICSantander持株を33億ユーロで買収することを決めたと伝えられた。Union Fenosa の持株も買収し、合計持株比率を47%とする。

参考 2008/8/19 スペインのCEPSA、上海でフェノール/アセトン生産を計画

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IPIC 実質政府100%出資で、Abu Dhabi National Oil CompanyADNOC)が 50%ADIAAbu Dhabi Investment AuthorityNational Bank of Abu Dhabi)が 50%を出資する。

IPICは活動を全世界に広げている。

UAE 内陸油田ハブシャンからの全長360kmの原油パイプラインとフジャイラ港でのタンクターミナルの建設
フジャイラにて50万バレル/日の能力の輸出を主体とした製油所の建設
オーストリア 石油、ガス会社OMVに17.6%の出資
石化会社Borealisに65%の出資
  2006/11/10 
OMVとBorealis、オーストリアとドイツで石化増強

AMI Agrolinz Melamine International 50%出資(OMVが残り50%
日本 コスモ石油に出資
韓国 Hyundai Oil Bankに出資
パキスタン パキスタンのPak-Arab Refinery Co.株式40%を保有(残りはパキスタン政府)。
キスタン政府との間で30万バレル/日規模の製油所建設を検討中(IPICが74%出資予定)
オマーン Oman Polypropylene に出資(出資するGulf Investment Corporationを通して)
エジプト Arab Company に出資
スペイン CEPSAに出資(47%にアップ)
中央アジア 2008/8/27 Abu Dhabi IPIC、中央アジアに進出
カナダ 2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収


* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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