金融危機の影響で開発資金獲得に苦しむ豪州の2つのレアアースのメーカーに中国企業が相次いで出資する。
1.Arafura Resources
豪州のNorthern TerritoryのNolans Bore レアアース・リン・ウラン鉱床の権益100%を保有するArafura Resources は、4月29日、中国の資源開発グループである有色金属華東地質探査局( East China Exploration & Development Bureau )から25%(24百万ドル)の出資を受け入れる正式契約に調印した。
昨秋以降の金融危機の影響で開発資金の調達難に陥り、プロジェクトを継続するには、中国資本を受け入れるしかなかった。
資金はNolans Bore鉱床のレアアース開発に使用する。
同鉱床は1995年に発見され、1999年にNorsk Hydroが露頭サンプリング・分析を実施している。2000年にArafra 社が権益を取得、資源量確認ボーリングを実施中。
有色金属華東地質探査局はまた、Arafura のNorthern TerritoryのJervois 鉄/バナジウム計画にも51%(800万ドル)を出資する覚書を締結した。
2. Lynas Corp
西豪州にあるレアアース鉱 Mt Weld 鉱を開発する Lynas Corp. はこのたび、中国の国有非鉄大手、中国有色鉱業集団(China Nonferrous Metal Mining Co.)から252百万豪ドルの出資(マジョリティ)を受け入れることを決めた。
認可を待って、新株を発行する。出資に加え、有色鉱業集団はLynas に対し、中国の銀行からの104百万米ドルと80百万米ドルの2つの借入契約に保証を与える。
これによりLynas は合計で522百万豪ドルの資金を得るが、このうち、286百万豪ドルがMt Weld 鉱の開発の第一段階に使われる。
Lynas も開発資金に苦しんでいたが、中国からの提携申し入れを断っていた。
これからのレアアース資源開発では、「中国と繋がっていないことが重要」だと認識、「自分たちは中国と提携する意思はない」としていた。
しかし、95百万ドルの開発資金の供給契約を結んでいたヘッジファンドが、昨秋以降の金融危機と資源価格の暴落の影響などにより資金供給を拒否したため、2月10日にMt Weld 鉱の開発計画の中断を発表した。
豪、マレーシア、日本などの政府系機関や需要家などに支援を要請したが、日本の需要家も支援に慎重で、万策尽きて、中国に依存することとなった。
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Lynasは、1983年にYilgangi Gold NLとして設立され、1985年にLynas Gold NLに改称し、西オーストラリア州Pilbara地域で金探鉱を行っていたが、2001年6月、金プロジェクトを売却し、社名をLynas Corporation に変更、2002年5月にMt.Weld 鉱床の権益100%を取得し、同鉱床の探鉱開発に集中していった。
Mt.Weld 鉱の鉱物資源量は、770万t、酸化レアアース品位12%となっている。
(精測鉱物資源量120万t :品位15.7%、概測鉱物資源量500万t :品位11.8%、予測鉱物資源量150万t :品位9.9%)
同社はMt.Weld プロジェクトのコスト削減のため、中国山東省にレアアース分離プラントの建設を計画した。
しかし、2006年に入って、レアアース産業に対する生産抑制、輸出制限、増価税リベート見直し、環境規制など中国政府による締め付けが強くなったことから、同社は中国でのレアアース分離プラント建設を断念し、マレーシア東海岸のPahang 州 Kuantan のGebeng Industrial Area にプラントを建設することとした。
計画では酸化レアアースの生産量を当初年間5千トン、将来21千トンとしている。
Mt.Weld レアアース鉱床からレアアース鉱物(モナザイト等)を採掘、西オーストラリア州南部のEsperance 港からマレーシアへ海上輸送、分離・精製し、更に最終消費者の要求にあったレアアース製品とした後、米国・欧州・日本などへ販売する。
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レアアースは中国の生産量が世界の96%を占めている。
中国のレアアースの過度な開発問題について、全国人民代表大会(全人代)代表の周洪宇氏が全人代に提出した「レアアース生産・輸出の厳格な規制を求める建議」が、中国で幅広い注目を集めている。
周氏は「3年以内に、レアアースの輸出量を現在の10万トン前後から2、3万トン前後に減らし、レアアース金属の高利潤と持続可能な発展維持に向け、中国は長期的なレアアースの価格決定権を確保しなければならない」と強調している。
2009/4/22 中国がレアアースの輸出を制限?
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中国国土資源部は5月7日、資源保護のため、2009年のタングステン、アンチモニー、レアアースの生産量を下記の通りに制限すると発表した。
タングステン鉱 68,555トン
アンチモニー鉱 90,180トン
レアアース鉱 82,320トン国土資源部ではまた、これら3つの資源に関しては2010年6月30日までは、新しい掘削ライセンスの申請を受け付けない。
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このため、日本のレアアース需要家は中国以外にソースを求めつつある。
Mt.Weldでの採掘、マレーシアでの精錬の計画は、完全に中国の影響を排除できる「脱中国」プロジェクトとして日本の需要家も注目していた。
しかし、豪州メーカーの中国資本の受け入れに、日本企業関係者は「中国とは関係ないプロジェクトだから価値があるのに、中国の出資を受け入れたら何の魅力もない」としている。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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