5月16日付の日本経済新聞は、三菱化学と旭化成が水島コンビナートでエチレン事業を統合することで基本合意したと報じた。
三菱化学は「具体的に決まった事実はない」としている。
両社の工場は隣接しており、原料ナフサ等を三菱化学に供給する新日本石油(旧三菱石油)と、旭化成に供給する新日鉱ホールディングス(ジャパンエナジー)は、2009年10月に共同持ち株会社を設立して両社を傘下に入れ、2010年4月に完全統合することを決めている。
2008/12/8 新日本石油と新日鉱ホールディングス、経営統合
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水島には三菱化学は450千トン、旭化成(山陽石油化学)は443千トンのエチレン設備を有している。(2007年末時点、定修年)
両社はJVか、又は有限責任事業組合(LLP)を設立し、エチレン設備を一体運営する。
その後、いずれか1基を停止し、残る1基の能力を5割程度増強する。(能力合計89万トン→60万トン)
LLP制度は、企業間の連携や共同事業促進を目的として2005年に導入された。
出資比率と異なる損益配分が可能で、利益はLLPの出資者に課税される。
三菱化学は子会社ヴイテックのVCMの停止を決めているが、これにより(フルベースで)20万トン弱のエチレン需要が無くなることになる。このほか、ポリオレフィン等の需要の減少もあるため、需要に合わせた能力にする。
将来的には他の誘導品の共同生産や、三菱化学の鹿島の設備も共同事業体に加える考えもあるという。
三菱化学は鹿島に375千トンと476千トン(事故の8号炉を除くと453千トン)の2基のエチレンを有している。
四日市のエチレン(301千トン)は2001年1月に停止した。
水島地区の能力 2007/12/末能力(千トン) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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* VCMは停止決定、PSは停止? |
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当初、三菱化学(当時は三菱化成)と旭化成は水島のそれぞれのエチレンに相互乗り入れをしていた。
1967年2月、石油化学協調懇談会は 「エチレン製造設備の新設の場合の基準」を決め、年産30万トン以上とするとともに、1971年の需要を246万トンと見込み、操業率を85%とした生産能力を289万トンとして、既認可分190万トンを差し引いた99万トンを、新規増設分として認めることとした。
これを受けて各社が申請した計画は9計画・10プラント合計 300万トンに及んだ。
このため、三菱化成と旭化成は輪番投資を決めた。
1968年に旭化成 60%/日本鉱業 40%で山陽石油化学を設立、輪番投資のため、三菱化成と山陽石化が、ともに50/50出資で、水島エチレン(三菱化成内=先番)と山陽エチレン(山陽石化内=後番)を設立した。
2006/9/22 エチレン業界の変遷-1 エチレン30万トン計画
両社はその後も相互乗り入れで運営を続けたが、1994年10月1日の三菱化学の発足に際し、同年7月に株式交換を行い、解消した。
合併の事前審査を通じて公正取引委員会から“物言い”がついたのも一因で、日本最大の化学メーカーとなる三菱化学がエチレン事業分野で旭化成と資本関係にあることが問題視された。こうした指摘に対し「それならこの際、すっきりさせよう、と資本提携解消となった」という。
しかし、25年も前の輪番投資のための相互乗り入れを単に続けていただけで、実際の必要性はなく、鹿島、四日市のエチレンを持つ三菱油化との合併で、「あくまでも国際競争力のあるコンビナートに再構築する必要に迫られたから」(三菱化成幹部)ということであろう。
水島エチレンは三菱化学発足時に吸収合併した。
山陽エチレンは1995年4月に山陽石化が吸収合併、2001年にその山陽石化を旭化成が100%子会社にしている。
今回、公取委がこれを認めない理由は考え難い。
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三井化学と出光興産は5月11日、両社の強みを活かした「千葉地区における生産最適化」の検討開始で合意したと発表している。
2009/5/18 三井化学、事業構造改革を実施、千葉地区で出光興産と生産最適化検討
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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