旭化成クラレメディカル(以下 AKKM)は5月19日、米国のNxStage Medical, Inc.との間で、透析事業領域(一部血液浄化事業関連を含む)に関し、包括的な事業提携契約を締結したと発表した。
AKKMは旭化成メディカルの透析事業・血液浄化事業とクラレメディカルの透析事業を統合した会社で、人工腎臓、血液浄化関連製品などの開発、製造、販売を行う。人工腎臓用中空糸製造を延岡で、人工腎臓組立を大分、延岡及び浙江省杭州市で行っている。
NxStage は在宅透析システム、急性腎不全治療システムの製造、販売、及び関連ディスポ製品事業を行い、ドイツ、メキシコ、イタリアに生産拠点を持っている。
提携内容は以下の通り。
・ | AKKMはNxStage のドイツ工場に人工腎臓用ポリスルホン中空糸を供給する。 |
・ | NxStage はドイツ工場でその中空糸を使用してNxStage ブランド人工腎臓を製造し、北米で販売する。 |
・ | AKKMは、NxStage のドイツ工場に人工腎臓組立を委託し、AKKMブランド製品を北米を除く全世界で販売する。 |
・ | AKKMは将来、同工場で能力増強投資を実施し、新工場の土地、建物、設備等の所有権を保有する。 |
・ | NxStage は、同社の人工腎臓設計と組立、及び血液回路および関連製品に関する特許およびノウハウについて、北米を除く世界市場を対象とした製造・販売権をAKKMに供与する。 |
・ | AKKMは、NxStage に長期貸付金 4,000 万ドル(4 年満期)を提供する。 |
AKKMは中国に次ぐ海外組立拠点を検討していたが、NxStage ドイツ工場での共同事業化と両社の人工腎臓技術の融合で、グローバル成長戦略を加速する。
NxStage は製品競争力の要となる高性能中空糸の安定供給を確保する。
両社は、相互協力の下、日本・アジア、米州、欧州の三極にまたがるパートナーシップを推進することで、透析治療技術のさらなるイノベーションをリードする。
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旭化成メディカルとクラレメディカルは2006年6月、クラレのEVOH樹脂を用いた医療用中空糸膜の製造会社 A・Kメンブレン製造㈱を50/50で設立し、延岡に400万本/年(スタート時260万本/年)の工場の建設を開始した。
クラレメディカルはクラレの倉敷事業所再編計画の一環として、同工場にあったEVOH中空糸膜製造工場の新立地を検討していたが、ポリスルホン中空糸膜を延岡で製造している旭化成メディカルが、EVOH中空糸膜による製品ラインアップ構想を持っていたため、両社の構想が合致した。
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2006年12月、旭化成メディカルとクラレメディカルは両社の透析事業と血液浄化事業を統合することについて基本合意した。
今後の医療用中空糸膜技術の向上と製品競争力の強化を図るためには、より一層の事業の一体化が必要と判断した。
社名を旭化成クラレメディカルとし、旭化成ファーマが85%、クラレメディカルが15%を出資する計画であった。
旭化成メディカルのセパセル事業(輸血用白血球除去フィルター)とプラノバ事業(ウイルス除去フィルター)は対象外。
クラレメディカルの歯科材料事業は統合対象外。
A・Kメンブレン製造は旭化成クラレメディカルが吸収合併。
しかし、血液浄化事業については公取委の承認が得られず、計画を一部変更し、2007年10月にスタートした。
統合対象:旭化成メディカルの透析事業・血液浄化事業とクラレメディカルの透析事業
(クラレメディカルの血液浄化事業を除外)
出資比率:旭化成ファーマ 85%→93%、クラレメディカル 15%→7%
付記
クラレメディカルは6月2日、同社の血液浄化事業の営業権を10月1日に川澄化学工業へ譲渡することについて基本合意したと発表した。
川澄化学は、プラスチックの成形加工技術を日本で最初に確立した先駆者として、プラスチックを採血・輸血医療に初めて実用化し、1回限りの使用で安全な今日のディスポーザブル医療機器をスタートさせた。
現在川澄化学は、血液に係わる医療機器・医薬品の専門メーカーとして、血液の採取・分離・保存・輸血から、血液の浄化、血管を通じての薬剤投与、血圧の監視、血管の診断・治療までの幅広い領域で高度な技術開発を続けている。
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2008年5月、延岡工場(旧A・Kメンブレン製造)のEVOH樹脂を用いた中空糸膜工場完成
2008年11月、延岡工場で新型ポリスルホン膜ドライタイプ人工腎臓の紡糸・組立一貫工場竣工
生産能力は 中空糸膜:600 万束/年、組立:550 万本/年で、
これで同社の能力は中空糸膜:3400万束/年、組立:約2,800 万本/年となった。
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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