ベネズエラのアルミ合弁 日本の6社撤退へ

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昭和電工など日本企業6社は合計2割を出資するベネズエラのガイアナ地区でのアルミニウム精錬事業から撤退する方針を固めた。合弁相手のベネズエラ政府系企業が地金の日本向け価格引き上げを要求、日本側は採算がとれなくなると判断した。

日本側が合弁解消とベネズエラ側への株式売却の意向を伝え、大筋で合意を得たもので、月内にもベネズエラ政府と正式な交渉に入る。

合弁会社はCVG Industria Venezolana de Aluminio C.A.(通称 CVG Venalum )で、資本構成は以下の通り。

C.V.G.(ガイアナ開発公団)     80%
昭和電工     7%
神戸製鋼     4%
住友化学     4%
三菱マテリアル     3%
三菱アルミニウム     1%
丸紅     1%

1976年の設立で、当初は三菱化成が2%、三菱金属鉱業が2%であったが、その後上記比率となった。
当時の能力は年産28万トン、うち日本側は年間16万トンを、丸紅を除く5社が出資比率に基づいて引き取った。
工場は1978年2月から生産を開始、同年12月、同社地金の第1船が日本に到着した。

現在の能力は年約45万トンで、このうち日本側が年9万~16万トンを輸入してきたが、長年にわたりC.V.G.との間で価格を巡りトラブルがあり、何度も輸入を中断した。

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現在、ベネズエラではチャべス大統領のもと、主要産業の国有化が行われており、石油化学についてもその動きが出ている。

2009/6/8 ベネズエラ、石油化学事業の国有化へ

今回はその動きとは関係ないが(ベネズエラの国益を重視したという点では同じ)、このアルミ合弁は1974年に誕生したペレス大統領による重要産業国有化政策により、当初の構想と異なる形で生まれた。

当時、日本のアルミメーカーはベネズエラで2つのアルミ計画を進めていた。

・住友化学は米国Reynolds からガイアナ地区での共同製錬計画への勧誘を受け、1973年、Reynolds の現地子会社 Aluminio Del Caroni S.A.(通称Alcasa)と基本覚書を締結した。

三菱グループも三菱金属鉱業が代表となって
Alcasaと同じ内容の覚書を結んでいたため、これをまとめることとした。
住友化学と三菱金属鉱業が25%ずつ出資、
ReynoldsAlcasaと新会社を設立し、年28万トンプラント建設を計画した。

・一方、昭和電工がガイアナ開発公団の要請によって、神戸製鋼所・丸紅と協同して、日本側80%、開発公団20%の出資で、 Industria Venezolana de Aluminio C.A.(通称 Venalum )を1973年に設立し、ガイアナ地区で15万トンプラント建設を計画した。

1974年に誕生したペレス新大統領の重要産業国有化政策により、アルミニウムについても、同年10月、Alcasa計画とVenalum計画を白紙に還元し、その一本化と、開発公団の出資割合を80%にするよう要求した。
1973年10月からの石油価格引き上げ
<p>HTML clipboard</p>(第一次石油ショック)で同国の外貨保有高が激増し、外国資本に頼る必要性がなくなったことによる。

日本側は資源ナシヨナリズムの台頭のおりから、やむを得ないと認め、現在の資本構成となった。

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2002年にCVG Venalumが日本側株主への優遇的措置を拒否、4月以降対日出荷停止となり、日本側も撤退を辞さない強い態度で交渉に臨み、11月にようやく2006年3月までの契約を締結した。

2004年7月にはCVG Venalumの意思決定における日本側の影響力を制約する決定をした株主総会の無効を求め、昭和電工が日本側を代表して、ベネズエラの裁判所に異議申立てを行っている。

2007年に入り、新たな契約更新協議が停滞し、CVG Venalumは日本向け輸出を停止、日本の港でのアルミ在庫に不足が生じる事態になった。

 


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