イラクの北部三州で構成するクルド人自治区からの原油輸出が6月に始まった。
原油の主権をめぐり対立してきた中央政府とクルド自治政府の間で妥協が成立したもので、6月1日、自治区首府アルビルでの開始式典にはタラバニ大統領と自治政府のバルザニ議長が出席し、和解を演出した。
Tawke油田とTaq Taq 油田からの日量10万バレル程度の原油を中央政府が管理する既存パイプラインを使ってトルコの地中海岸の積み出し港ジェイハンに運び、そこから輸出する。
Tawke油田はノルウェーのDNOが2004年6月に西側石油会社として初めてクルド政府と生産物分与契約を締結し、3年後に油田は生産を開始した。しかし、中央政府とクルド政府の争いで輸出許可が出ず、安値の国内販売を強いられていた。
本年初めにトルコのGenel Enerji と提携した。Taq Taq 油田はスイス/カナダのAddax Petroleum とトルコのGenel Enerji が組んで2005年7月に生産物分与契約を結んだ。2006年11月に生産を開始したが、同様の問題を抱えている。
中央政府はクルド政府が外国企業と結んだ契約は違法として認めていない。
しかし、中央政府が原油収入増を望んだため例外的に妥協が成立したとされる。
イラクは現在、日量241万バレルの生産を行い、190万バレルを輸出しているが、生産は2003年のイラク戦争開戦前の250万バレルを下回っている。
原油収入はイラクの歳入の9割を占めるが、昨年の大幅な値下がりで政府は苦境に陥っている。
Taq Taq から4万バレル、 Tawke から6万バレルが送油された。1年以内に日量25万バレルまで増やす計画。
原油の販売はイラク石油省傘下の国営石油会社(SOMO)が担当し、中央政府が収入の71%、クルド政府が17%を受け取り、残りを外国石油会社が受け取る。
しかし、今回の措置で中央政府とクルド政府の対立が解消したとは言えない。
イラクの石油相はパイプラインを経由しての輸出を認めるが、クルド政府の外国石油会社との契約は違法であると主張している。
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クルド自治区ではUAEのDana Gas がオーストリアのOMV、ハンガリーのMOLと組んで、天然ガスをNabucco Pipeline を経由してトルコから欧州に輸出することを計画している。
Dana Gas と親会社のCrescent の50/50出資の Pearl Petroleum がクルド自治区で操業しているが、OMVは350百万ドルを支払って10%の権利を取得する。
MOLはCrescent と Dana に同社の株の3%を与え、見返りにPearl Petroleum の10%を取得する。
ここでは2014年までに30億m3/日以上の生産が出来るとされている。Nabucco Pipeline はトルコからブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、オーストリアに繋がる3,300kmのパイプラインで、2011年完成の予定。OMVが中心となり、建設費50億米ドルは5カ国のガス会社がシェアする。
ロシア依存を減らすため、ここからのガスの需要は多いが、肝心のガスが不足している。
しかし、クルド政府がこの計画を承認した直後、中央政府はこれを違法契約として拒否した。
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イラク政府は本年、37年ぶりに油田権益を外資企業に開放することを決めたが、石油相は4月2日、クルド政府との間で自治区内の油田4つの鉱区の開発の覚書を締結した韓国石油公社やSKエナジーなどの韓国企業を今後、イラクでの油田開発に関する入札に参加させないことを明らかにしている。
2009/4/7 イラクの油田開放、クルド人自治政府と契約の韓国企業を除外
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