「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」

| コメント(0)

公正取引委員会は6月19日、排除型私的独占に対する課徴金制度の導入等を内容とした独占禁止法改正法案が6月3日に国会で可決・成立したのを受け、作製した「排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針」(原案)について意見募集を開始すると発表した。

http://www.jftc.go.jp/pressrelease/09.june/09061902.pdf 

独禁法改正は 2009/6/5  独禁法改正案成立  

原案では以下の点を扱っている。

①公正取引委員会の執行方針
「排除行為」の主なものを類型化し、行為類型ごとの判断要素、具体例など
③「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」の考え方
④「競争の実質的制限」の考え方と判断要素

「排除型私的独占」とは、事業者が他の事業者の事業活動の継続を困難にさせたり、新規参入者の事業開始を困難にさせたりする行為であって、一定の取引分野における競争を実質的に制限することにつながる様々な行為。

排除型私的独占として事件の審査を行うか否かの判断に当たり、行為開始後において行為者が供給する商品のシェアがおおむね2分の1を超える事案であって、市場規模、行為者による事業活動の範囲、商品の特性等を総合的に考慮して、広く国民生活に影響が及ぶと考えられるものについて、優先的に審査を行う。

排除行為として典型的な行為
①「コスト割れ供給」

コスト割れ供給により、自らと同等又はそれ以上に効率的な事業者の事業活動を困難にさせる場合。

次のような事項が総合的に考慮される。
ア 商品に係る市場全体の状況
イ 行為者及び競争者の市場における地位
ウ 対価と供給に要する費用との関係
エ 行為の期間及び商品の取引額・数量
オ 行為の態様

生鮮食料品のようにその品質が急速に低下するおそれがあるもの、季節商品のようにその販売の最盛期を過ぎたもの、不良品のようにその品質に瑕疵のあるもの等について、相応の低い対価を設定することは、供給に要する費用を下回る対価を設定しても不当とはいえず、排除行為に該当しない。
また、価格が需給関係から低落しているときに、これに対応した対価を設定することも同様である。

②「排他的取引」

事業者が、相手方に対し、自己の競争者から商品の供給を受けないことを条件として取引する場合で、当該相手方に代わり得る取引先を容易に見いだすことができない競争者の事業活動を困難にさせ、競争に悪影響を及ぼす場合

考慮事項
ア 商品に係る市場全体の状況
イ 行為者の市場における地位
ウ 競争者の市場における地位
エ 行為の期間及び相手方の数・シェア
オ 行為の態様

購入額や購入量、その他が一定以上に達することを条件として取引先に対してリベートを供与することは、取引先に対する競争品の取扱制限として、排他的取引と同様の機能を有する場合がある。

考慮事項
ア リベートの水準
イ リベートを供与する基準
ウ リベートの累進度
エ リベートの遡及性

③「抱き合わせ」

主たる商品の供給に併せて従たる商品を購入させることを取引の条件とすることは、従たる商品の市場において他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができない競争者の事業活動を困難にさせ、従たる商品の市場における競争に悪影響を及ぼす場合がある。

考慮事項
ア 主たる商品及び従たる商品に係る市場全体の状況
イ 主たる商品の市場における行為者の地位
ウ 従たる商品の市場における行為者及び競争者の地位
エ 行為の期間及び相手方の数・取引数量
オ 行為の態様

抱き合わせには、行為者がある商品を供給するのに併せて相手方に他の商品を供給させることを取引の条件とする行為も、行為者がある商品を購入するのに併せて相手方に他の商品を購入させることを取引の条件とする行為も、ともに含まれる。
また、ある商品を購入した後に必要となる補完的商品に係る市場(アフターマーケット)において特定の商品を購入させることを取引の条件とする行為も、抱き合わせに含まれる。

④「供給拒絶・差別的取扱い」

ある事業者が、供給先事業者が川下市場で事業活動を行うために必要な商品を供給する川上市場において、合理的な範囲を超えて、供給の拒絶、供給に係る商品の数量若しくは内容の制限又は供給の条件若しくは実施についての差別的な取扱いをすることは、その事業者に代わり得る他の供給者を容易に見いだすことができない供給先事業者の事業活動を困難にさせ、川下市場における競争に悪影響を及ぼす場合がある。

考慮事項
ア 川上市場及び川下市場全体の状況
イ 川上市場における行為者及びその競争者の地位
ウ 川下市場における供給先事業者及びその競争者の地位
エ 行為の期間
オ 行為の態様

自ら川下市場においても事業活動を行っている場合において、供給先事業者に供給する商品の価格について、自らの川下市場における商品の価格よりも高い水準に設定したり、供給先事業者が経済的合理性のある事業活動によって対抗できないほど近接した価格に設定したりする行為(いわゆるマージンスクイーズ)は、「供給拒絶・差別的取扱い」と同様の観点から排除行為に該当するか否か判断する。


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


コメントする

月別 アーカイブ