中国の現状

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日本の内需が大幅に下落している中で、中国向け輸出が好調で、日本の石化の操業度が上がっている。
中国の状況がどうなっているのか、調べてみた。

中国の貿易統計によれば、中国の輸出及び輸入は昨年10月までは前年比で20%前後で伸びていたが、11月に入り前年比マイナスとなり、本年に入ると前年比で20%程度のマイナスで推移している。5月の輸出は -26.4%と過去最大の減少となった。

輸出全体の各2割を占める米国及びEU向けが不振を続けているのが原因で、輸入の場合はこれに原油価格の下落が響いている。

輸出 輸入
11月 -2.2%  -17.9%
12 -2.8  -21.3
1 -17.5  -43.1
2 -25.7  -24.1
3 -17.1  -25.1
4 -22.6  -23.0
5月 -26.4  -25.2

しかし、中国の耐久財の生産は好調を続けている。

中国の自動車や家電の生産は1月こそ前年比マイナスとなったが、その後は前年を上回っている。

中国政府は早くも昨年11月に、2010年末までに総額4兆元(約57兆円)規模の投資を実施するとの緊急経済対策を発表した。

住宅、地方のインフラ、輸送、健康・教育、環境、産業(イノベーション、リストラの促進、ハイテク、サービス産業の開発支援)、四川大地震復興事業、所得の引き上げ、増値税の改革、ファイナンスと、多岐にわたる。

2008/11/12 中国、緊急経済対策に57兆円

さらに、中国国務院は本年に入り、国内の10産業について景気刺激策を順次発表した。

2009/2/25  中国政府、石油化学産業の景気刺激策を承認

中国政府は2007年末に農村市場の消費刺激策として「家電下郷」(農村部に家電を)制度を策定し、2008年1月に導入した。

特定の家電製品を購入する農村部の消費者に対し一律13%の補助金を出すという内容で、当初は3つの省でのみ行われ、対象商品はテレビ、洗濯機、冷蔵庫、携帯電話の4種類だけであった。

しかし、2009年2月1日以降は不況対策として、これにオートバイ、パソコン、温水器、エアコンを追加し、対象地域を全国の農村(対象 9億人)に拡大した。更に国務院が2月19日に発表した軽工業の景気刺激策の1つとして、電子レンジとIH 調理器が対象に加えられた。

また本年に入り、「汽車下郷」(農村部に自動車を)制度をスタートさせた。三輪自動車などを廃車とし、5万元(約70万円)以上の軽トラックや軽自動車に買い換える場合は5,000元を上限に、購入金額の10%を補助金として支給するという制度である。

本年5月には中国国務院は新たな消費刺激策として、自動車・家電の買い換え支援を決定した。
北京、上海、天津、江蘇、浙江、山東、広東、福州、長沙で、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、エアコン、コンピュータの5品目の買い換え補助を試験展開する。家電買い換え補助に中央財政より20億元(約280億円)が投じられる。

「汽車下郷」に自動車買い替えが追加され、自動車買い換えの財政補助をこれまでの10億元(約140億円)から50億元(約700億円)まで枠を拡大した。

自動車や家電の生産の好調はこれらの内需拡大策が成功したもの。
但し、財政補助の額が少な過ぎるとの声もある。

人民日報は日本の家電の中国でのシェアが急落していると報じている。
日本の家電メーカーが中国市場でかかえる一番の問題は、中国の大型家電販売店に頼りすぎていることで、家電の農村普及という中国の政策をチャンスとして小都市や農村に販売代理店を見つけるなど、販売システムの多元化をはかることがカギになるとしている。

ーーー

中国社会科学院・都市発展環境研究センターの魏后凱副主任は6月15日に北京で行われたフォーラムで、中国の農村部と都市部の収入格差が実質 4-6倍前後になるとの見方を示した。2000年当時の収入差は2.79倍で、経済の格差は大幅に拡大していることが分かった。

輸出依存から内需依存に変わったというのではなく、輸出が減ったので政府がテコ入れして内需を増やしているということである。

政府資金には限度があるため、輸出が復活しないと内需が息切れする可能性がある。

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中国では農村部では収入格差の問題、都市部では(日本と同様)将来の不安に備えて貯蓄性向が高く、内需の伸びは大きくないが、例外がある。

香港『南華早報』は、「消費国家、子供至上」という記事を掲載した。

輸出減少による経済の損失を緩和し、国内需要を拡大するため、中国政府は大規模なインフラ施設への支出を行い、自動車消費税の減税や家電農村普及の補助金支給などの刺激措置に助けられているものの、まだ多くの消費を必要とするが、4億人の子供たちが経済の「救世主」との考えがある。

一人っ子政策が実施されるようになってから、中国大陸の子供たちは親から溺愛され、「小皇帝」や「小公主」という呼び方が生まれた。

一人っ子政策の結果、一人の子供が両親と父方の祖父母、母方の祖父母の6つの財布を独占する。

ブランド服、ハイテクおもちゃ、栄養食品はすでに「小皇帝」の必需品となっている。3月に世界最大のバービー専門店が上海にオープンした。多くの親が数千元を払って子供に英語を学ばせている。

中国の14歳以下の子供は4億人に達し、毎年2000万人の速さで増加しており、子供製品に巨大な市場を作り出している。
国内のおもちゃ販売は毎年40%増加している。また、子供服の需要は年間8億着で、8%の速さで増加している。文具も小売業の注目される中の一つである。栄養については、子供が生まれた日から始まっている。

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内需の好調で石油化学製品の需要も好調である。
China Chemical Reporter 616日のレポートでは、2009年第1四半期の中国の消費を以下の通りとしている。 

消費量 前年比
エチレン換算  645万トン  +21.3%
 :
PE  353万トン  +22.2%
PP  271万トン  +11.7%
PVC  251万トン  + 1.1%
 :
ポリエステル  448万トン  + 2.6%
アクリル   19.6万トン  -16.6%
合繊 計  520万トン  - 1.3%
 :
PTA  392万トン  - 2.3%
MEG  190万トン  +11.3%
AN   30万トン  +14.5%
 :
BR   17.3万トン  -11.7%
SBR  231万トン  - 6.1%
合成ゴム 計  624万トン  -13.7%

繊維や合成ゴムは前年比でマイナスだが、合成樹脂は前年を上回っている。
2009年の石油化学製品の需要予想は当初予想を上回り、エチレン換算では当初の2130万トンから2275万トンに引き上げられ、予想成長率は当初の1.1%から8.0%となったとしている。

この結果、石油化学製品の輸入も著しく増えている。(これが日本の石化の操業度向上に貢献している)

PVCの場合、一時は輸入量を上回った輸出が激減し、ほとんどなくなっている。
(輸出増価税還付率問題、インドなどでのダンピング課税問題などもあるが)

ーーー

中国の内需を巡り、中国政府の‘Buy Chinese’方針が問題となっている。

中国の国家発展改革委員会(NDRC)と8つの省庁(情報技術産業主管部門、監察部、通信管理局、建設庁、交通運輸部、鉄道部、水利部、商務部)は6月4日、共同で通達を出した。

政府の総額4兆元(約57兆円)規模の緊急経済対策において、中国製が入手できない場合やリーズナブルな条件で購入できない場合を除き、中国品を使用することとしている。
輸入品を購入する必要がある場合は、購入の前に政府の承認を得ることとしている。

中国は半年前に米政府の景気刺激策での‘Buy American’ 条項が世界経済の回復を遅らせるとしてクレームしたばかり。

‘Buy Chinese' はもともと中国の法律にあり、政府購買は輸入品・サービスを使用できないとしている。
しかし、中国経済が急成長してからは政府はこれを厳密に適用していなかった。

今回緊急経済対策で中国品が余り使われないため、その姿勢を変更した。
緊急経済対策の大きな部分が外国に持っていかれるとの批判が中国企業から出ていた。

中国は2001年にWTOに参加したが、WTO政府調達協定にはサインしていない。

協定では、政府や自治体などが、基準額である13万SDR(邦貨換算額1,900万円)を超える調達をする際、原則として一般競争による入札を実施することが定められている。
日本政府は、さらなる市場アクセス改善努力の一環として、自主的措置により10万SDR(邦貨換算額1,400万円)以上13万SDR未満の調達についても、この協定に準じた手続きを行っている。

受諾を行ったWTO加盟国のみがWTO政府調達協定に拘束されることになるが、その実施・運用は、WTOの枠組みの中で統一的に行われる。

日本、米国、カナダ、欧州共同体、香港、韓国、シンガポールなどが調印しており、台湾(2002年1月WTO加盟)が本年6月8日に調印した。

付記

商務部と発展改革委員会の報道官は6月26日、共同で談話を発表し、中国の関連部門が打ち出した政策を「Buy Chinese」という保護貿易主義的なものとして解釈した海外メディアの報道について、これは誤解だとの見方を示した。

談話によると、この通知の発表のねらいは、法で定められた入札制度を厳格に実行し、監督と取り締まりを強め、腐敗防止を強化し、公平競争が可能な市場環境を維持することだ。中国の一部の地方ではしばらく前、入札や調達の際に中国製品を差別する現象があった。今回の通知は、競争を制限する行為を抑え、全ての市場主体による合法で平等な市場競争参入を促すものだという。

談話によると、今回の通知は、中国経済の刺激策として出された新たな措置でもなく、外国企業や外国製品をターゲットとした保護貿易主義的な行為でもない。今回の通知での自国製品に関する規定は、各級政府機関が財政資金を利用する際の「政府調達法」で定められた政府調達項目に限られている。そこで示されている自国製品には、中国に設立された海外投資企業の生産した製品も含まれている。

中国はまだWTOの「政府調達協定」に加盟しておらず、政府調達に関する中国関連部門の規定と「政府調達法」とは国際的な義務に反するものではない。中国はすでに、WTO政府調達協定への加盟を申請している。


* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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