Rio Tinto は本年2月12日、中国国有アルミ大手、中国アルミ業公司(Chinalco)から現金で195億ドルの出資を受けると発表した。
1)Chinalco はRio が世界各地に持つアルミ、銅、鉄などの利権をJVへの出資の形で取得する。対価は合計123億ドル。
2)Chinalco は Rio の両本社の転換社債を72億ドルで取得する。
全て転換されれば、Rio Tinto 全体への出資比率は現在の9%から18.0%に増える。
2009/4/1 中国アルミののその後
Rio はこれにより、2007年のアルキャン買収に伴い抱えた389億ドルの負債を軽減する。
同社は今年10月に89億ドルの返済期限を迎えるほか、来年10月には100億ドルが返済の期限を迎える予定となっている。
本案については次期会長が反対し、これを決定した取締役会の前に退任している。
中国の豪州進出が目立つなか、国内で賛否両論が起こり、政治問題化してきた。
中国通を自負する首相の姿勢に批判が出る中、反中感情をあおり立てる黄禍論(「赤禍ヒステリア」)であるとの反論も出ていた。
豪州当局による提携承認の手続きもずれ込んでいた。
(独禁法当局は3月25日に「本件に反対しない」と発表したが、もう一つの認可機関のForeign Investment Review Board は「重要案件」としてレビューを3ヶ月延長している)
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6月5日、Rio Tinto は中国アルミの出資取り止めと、これに伴う資金不足対策として2つの対策を発表した。
一つはRio Tinto と BHP Billiton の西豪州の鉄鉱石事業の50/50 JV化で、シェア調整のためBHP Billiton から58億ドルを受け取る。
もう一つは株主割当増資で、英国法人が118億ドル、豪州法人が34億ドル、合計152億ドルとなる。
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Chinalco との交渉
資金市場の変動や、Rio Tinto の株主や利害関係者の意見などを背景に、Rio Tinto とChinalco は契約の変更の交渉を行った。
かなりの進展を見たが、最終的に契約変更に至らず、この結果、Rio Tinto 取締役会は株主に対する本契約の推奨を取り消し、契約を解消することとした。
Rio Tinto はChinalco に対し、違約金として195百万米ドルを支払う。
Rio Tinto は、中国の重要性の認識は変わらず、今後もChinalco との友好関係を維持、強化するとしている。
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鉄鉱石事業のJV化
Rio Tinto と BHP Billiton は4日、両社の西豪州の鉄鉱石資産を包含する製造JVの設立の契約に調印した。
両社50/50出資のJVは、両社の現在及び将来の西豪州の鉄鉱石資産及び負債を引継ぐ。
BHP Billiton の資産の比率は45%であるため、50/50JVにするために、BHP Billiton はRio Tinto に58億米ドルを支払う。
JV化は次のメリットがあり、シナジー効果は100億米ドルを超えるとみられている。
・隣接する鉱山の統合
・鉄道輸送費削減、港の効率化
・ブレンドすることによるメリット
・開発計画の統合、大規模化、資金の効率利用
・経営、購買、管理費の節約
JVは製造JVで、鉱石をコストで両社に等量を引き渡し、両社はそれぞれ独自に販売する。
技術とR&D活動もJVにプールされる。
但し、HIsmelt (銑鉄プラント)や二次処理設備、西豪州以外での現在及び将来の事業展開はJVから除外される。
Rio Tinto の会長は、JVはワールドクラスの資産、インフラを持つ圧倒的な鉄鉱石事業となるとしている。
必要な承認を得て発足するが、どちらかが取り止めた場合は、違約金275.5 百万米ドルを支払う。
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2007年にBHP Billiton がRio Tinto に対して買収の提案を行い、2008年11月にBHP Billiton が買収を諦めたが、買収の主な目的は西豪州の鉄鉱石であったと言われる。
最終的にBHP
Billiton の構想が一部実現したこととなる。
2008/11/27 BHP Billiton、Rio Tinto 買収を断念
注 下の鉄鉱石能力グラフで、BHPB-Pilbara、Rio-Hamersley、Rio-Robe はいずれも西豪州のPilbara 地区にある鉱山。
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統合でCVRD(ブラジルのリオドセ)を追い抜く。
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株主割当増資
取締役会は慎重に検討した結果、株主割当増資が戦略の柔軟性を維持し、長期的に株主価値を向上させるベストな案と判断した。
英国法人が118億ドル、豪州法人が34億ドル、合計152億ドルとなる。
これにより、Alcan 買収に伴う借入金のうち、本年に期日が来る分の支払いが可能となり、来年に期日が来る分のかなりの部分の繰上げ返済が可能となる。
また、低下していた格付けをsingle A に戻すことが出来る。
更に、前向き投資も可能となる。
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Chinalco は5日、社長のコメントを発表した。
Rio Tinto の決定は極めて残念だ。
ここ数週間、Chinalcoは契約改定に向け努力してきた。
この結果に失望している。
今も、この契約がRio Tintoの株主価値を高め、両国の長期的な戦略的パートナーシップの強い基盤となると信じている。Chinalco はRio Tinto の最大株主(9%)として、同社の今後の展開を見守る。
Rio Tinto とBHP Billiton のJVの今後の展開も見守る。
Chinalco社長は、中央アジア(たとえばモンゴル)の鉄鉱石など、代替案を検討するとしている。「需要があり、手元に金があるのに、鉄鉱石資源がないと心配する必要はない」と述べた。
また、同社は、多種類のメタルを持つ国際的な鉱山会社になるという戦略目標を変えないとしている。
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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