Sinopec、Addax Petroleum を買収

| コメント(0)

スイスに本拠を置き、ロンドンとカナダで上場している石油会社、Addax Petroleum は6月24日、Sinopecの買収提案を受け入れると発表した。

買収金額は約83億カナダドル(約6900億円)で、買収交渉が明らかになる前日(6月5日)の株価に47%のプレミアムを乗せた価格となっている。

Addax Petroleum はナイジェリアやイラク北部などで豊富な石油権益を持っている。中国政府の援助などをてこに、中国の石油大手はアフリカなどでの油田権益獲得を進めており、今回の買収もその一環である。

Addax Petroleum は1994年に西アフリカの石油・ガス開発のために設立された。
1998年にナイジェリアで最初の生産物分与契約を締結、現在はナイジェリア、ガポンなどとイラクのクルド自治区で権益を有している。
原油生産量は1998年の 8.8 Mbbl/d から2009第1四半期には134.7 Mbbl/d に増えている。 

同社が権益を持つ油田の2008年末現在の原油埋蔵量は以下の通り。 (MMbbl)

  Nigeria Gabon Iraq total
Proved oil reserves
 Developed producing
 Developed non-producing
 Undeveloped
 Total

  82.0
  11.8
  39.9
 133.7

 20.0
 8.4
 38.2
 66.6

 -
 -
 13.7
 13.7

 102.0
 20.3
 91.9
 214.2
Probable  190.2  36.6  95.7  322.5
Possible  134.9  23.7  43.1  201.7
Total  458.8  126.9  152.5  738.4

イラクのクルド自治区ではTaq Taq 油田についてトルコのGenel Enerji が組んで2005年7月に自治区政府と生産物分与契約を結んだ。
2006年11月に生産を開始したが、イラク政府はこの契約を承認していない。
但し、本年6月、例外的措置としてイラク政府はこの油田からの原油輸出を承認した。

2009/6/9 イラクのクルド自治区の原油輸出開始 

Addax Petroleum には以前から買収の噂が流れており、中国海洋石油有限公司(CNOOC)や三菱商事、インドのOil & Natural GasKorea National Oil などの名前が上がっていた。

Sinopec のオファ価格は他社よりも高いと言われており、業界ではこれ以上の価格でオファする相手はいないだろうと見ている。
Addax が契約破棄した場合のペナルティは3億ドルとされている。

ーーー

中国の石油会社は以前からアフリカに進出している。

PetroChinaSinopecCNOOC はナイジェリアに石油・ガスの権益を持っており、Sinopec Addaxと共同でGulf of Guinea2箇所の深海油田探査を行っている。

またSinopec は昨年9月、シリアで油田の開発、生産を行なっているカナダの石油会社 Tanganyika Oil を買収した。

2008/10/1 Sinopec、シリアで活動するカナダの石油会社を買収

 

中国のアフリカ進出は単に資源獲得だけではなく、進出先の国と中国との関係を強化する政治的な目的も持っている。<p><p>HTML clipboard</p></p>

進出先の国との関係強化、石油資源獲得という国家戦略に加え、中国には人民元切り上げ圧力を避けるために外貨準備高を減らす必要があり、これらを背景に政府の支援を受け、買収価格を引き上げて勝ちとっており、他国の私企業は買収競争で太刀打ちできない。

ーーー

石油関連では中国は本年2月、ロシアとの間で政府間協定を結んだ。

中国開発銀行がロシア国営石油会社 Rosneft に150億ドル、東シベリア太平洋パイプラインを運営するTransneftに100億ドルを低利で融資する見返りに、Rosneft は20年間、毎年15百万トンの原油の供給を行い、Transneftはパイプラインを中国に延長する。

中国はまた、ブラジルのペトロブラスとも契約を締結している。

2009/2/27  中国、ブラジルに接近

 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


コメントする

月別 アーカイブ