中国政府系ファンドCIC、カナダの資源大手に出資

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中国投資有限責任公司(CIC) 73日、100%子会社の Fullbloom Investment Corporation を通じて、資金難のカナダの資源大手Teck Resources Limited の株17.2%を現金15億米ドルで購入することで合意したと発表した。

CICは最低1年間は株を保有する。

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CICは中国政府が2007年9月に、外貨資産のうちの2000億米ドルを資本金とし、海外での運用を目的として設立した。

中国の外貨準備は、2002年末の2864億ドルから2007年末の15283億ドルまでに膨らんだ。
中国は為替市場安定や対外支払準備のため流動性の高い外貨準備7000億ドルを必要としているが、外貨準備はこれを超えて増え続け、人民元の切り上げ圧力となっており、超過部分約8000億ドルの運用が課題となっていた。

CICの設立直前の2007年6月に中国政府は30億ドルで米国の投資会社Blackstone groupの筆頭株主となった。(CICに移管)

CIC2007年12月にMorgan Stanley の転換社債56億ドルを購入し、9.86%の株主となった。Morgan Stanley には2008年に三菱UFJが投資したためCICの比率は7.68%に下がったが、本年62日、12億ドルで株式を購入し、持株比率を9.86%に戻した。

真山仁の小説「ハゲタカ」シリーズの第三部「レッドゾーン」は中国の国家ファンドによる日本の自動車メーカー買収を扱っている。

その中で主人公は国家ファンドの目的を、「ドルを無駄使いすること。下手に利益を上げれば外貨準備高を増やしてしまい、人民元切り上げの圧力が高まる」とし、短期的には損をするが、長期的にはノウハウ(金融)や技術(自動車)を獲得することを狙っているとしている。

一般の企業では決して太刀打ちできない存在である。

金融危機の影響で評価損が膨らみ、昨年は大規模投資を控えていた。

CICはこれまで主として金融機関に投資してきたが、資源権益の獲得を目指したものと見られている。
中国の企業は政府の支援を受け、石油、石炭、鉄鉱石、その他、資源権益の獲得に積極的である。

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Teck Resources はカナダの資源大手で、石炭・銅・鉛・亜鉛・モリブデン・金を扱っており、亜鉛では世界最大級、原料炭の海上輸送シェアは世界2位。

同社は1913年に金鉱山生産のため設立されたTeck-Hughes Gold Mines と、銀・亜鉛・鉛鉱山開発を主体とした1906年設立のComincoが2001年に合併してできた。(当初名はTeck Cominco)

2008年には石炭事業のJVパートナーである
Fording Canadian Coal Trustを98億ドルで買収して石炭資産を拡大した。

Teck Fording Canadian Coal 買収後、コモディティの価格は暴落し、カナダ経済も不況に陥った。

Teck は本年初めには借入金の一部の支払猶予を受けたが、借入金返済のため、資産売却、コストカットを行っている。

この一環として金資産のJV権益の売却を進めており、カナダの金鉱山の権益を2008年にJV相手のBarrick Goldに売却、本年4月にはアラスカのPogo鉱山の権益をJVパートナーの住友金属鉱山2億4500万米ドルで売却した。

Pogo金鉱山は住友金属鉱山の海外での初の主導的な開発プロジェクトで、1991年に探鉱を開始、1997年にTechと提携し、探鉱及び企業化調査を進めた。

1)位置:米国アラスカ州フェアバンクスの南東約145キロ
2)権益比率:住友金属鉱山アメリカ社(住友金属鉱山100%子会社) 51%→85%
        Teck Resources 40%→ 0
        SC Minerals America(住友商事100%子会社) 9%→15%
3)埋蔵金量:109t(2008年末鉱量計算結果)
4)年間生産金量:11~12t/年
5)開発投資額:約378百万ドル(出資比率で負担)

採掘後、選鉱→青化浸出→電解採取を経てドーレ(金品位約94%、銀品位約6%)として回収している。

CICへの株式売却収入15億米ドルは主に借入金返済に回される。

 


* 総合目次、項目別目次
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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