韓国とEUは7月13日、FTAの締結交渉が妥結したと発表した。
欧州訪問中の韓国の李明博大統領とEU議長国のスウェーデンのラインフェルト首相との首脳会談で決着した。
今後、双方が承認手続きを経て協定に署名、それぞれの議会の批准により発効する。
本年3月24日に事実上妥結しながらも、いくつかの問題で最終的な妥結に至らず、その後双方で交渉を続けていた。
EU執行委員会が7月10日、加盟27カ国で構成される通商政策諮問機構(133条委員会)に韓国とEUのFTA交渉の最終案を報告し、加盟各国がこれを受け入れることとしたもの。これまで韓国とのFTAに消極的だったドイツが賛成に回り、ポーランドなど一部の東欧諸国も肯定的な立場に変わったものと見られる。
韓国とEUがFTAを締結・発効して韓国企業の欧州市場への輸出に伴う関税がゼロになれば、競合関係にある日本の自動車や電機メーカーなどは価格競争上のハンディを負うことになる。
韓国・米国間のFTAについては2007年4月2日に交渉が妥結したが、特に米国内での反対が強く、発効に至っていない。
2007/4/4 米韓FTA妥結
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韓国とEUは本年3月24日、自動車・ワイン・豚肉の関税など自由貿易協定(FTA)交渉の中核争点について合意し、1年10カ月間かけて行われた交渉が事実上妥結した。
2009/3/27 韓国とEU、FTA交渉が事実上妥結
双方は、相手地域で生産した自動車・冷蔵庫・カラーTVなど工業品に対しFTA発効5年以内に全関税を撤廃すると基本合意した。
EUの関税は、自動車で10%、テレビで14%と高率で、関税撤廃による韓国企業の輸出拡大が予想される。
見返りとして、農業品などの関税撤廃についても大部分は合意した。
工業製品関税については、原則 5年間で関税を完全撤廃。
自動車部品は協定発効と同時に関税を撤廃、
中大型乗用車は3年、小型自動車は5年内に撤廃
韓国は例外として40余りのセンシティブ品目について7年内の関税撤廃。
(関税率が16%のその他機械類、純毛織物など)EU産ワインは、直ちに撤廃
EU産豚肉に対する関税は、冷蔵肉全体とバラ肉冷凍肉は10年以内に、その他の部位の冷凍肉は5年以内に撤廃。
但し、韓国のコメ市場は開放しない。トウガラシ、ニンニク、タマネギも「主要調味料」として関税を据え置く。現在、EU産農産物のうち輸入トップは「冷凍豚肉」だが、FTA妥結以降、韓国市場シェアをさらに拡大する可能性が高い。
ワインもEUの対韓主要輸出品目で、EU産チーズも消費が増えるとみられる。
双方は、G20首脳会議(金融サミット)が開かれる4月2日にロンドンで通商相会談を開き、関税引き下げ・原産地決定基準・農産物関税撤廃といった残りの争点を最終的に妥結する見通しだった。
しかし、最終的な妥結に至らなかった。
争点は、「関税の払い戻し」。
韓国は中国などから部品を輸入し完成品を輸出する場合、部品輸入については関税を払い戻している。
EU側は韓国・EU間FTAの利益が第三国に向かいかねないとして、これに反対している。
特に欧州自動車産業界は、韓国メーカーが安価な中国製部品を使った自動車を輸出できるのは不公平とした。他方、韓国政府はFTA交渉初期から、関税還付問題は決して譲れないとの姿勢。
4月の通商相会談では、「韓国の関税還付制度を維持してほしい」という韓国側の要求は受け入れられなかった。
今回、本件については、韓国製品に外国産部品の使用が「著しく増える場合」、EUはこれを規制する「セーフガード(緊急輸出入制限措置)」を適用できる、とする保護措置を取ることで妥協した。
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韓国の外交通商部の李恵民FTA交渉代表は今回の協定には今後議論になるような「毒素条項」はないと強調した。
特に韓米FTA締結時に韓国に一方的に不利な内容だと指摘された「逆進防止条項」(合意された水準を後退させる措置を取らないこと)や、「投資者・国家提訴条項」(韓国の政策が外国人投資家の利益に反する場合、外国人投資家が韓国政府を提訴できるもの)などは含まれなかった。
しかし「未来の最恵国待遇」条項は今回の協定にも含まれた。FTAが発効した後、どちらか一方が他の国とより有利な条件でFTAを締結する場合、以前に締結された当事国にも同じ優遇を与えなくてはならないというもの。
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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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