Ineosは7月16日、75億ドルの借入契約の条件変更で債権者の了承を得たと発表した。230社強の債権者のうち2/3の賛成を必要とするが、96%が賛成した。
Jim Ratcliffe会長は「条件変更により現在進めている戦略に必要な余裕と柔軟性を確保できた。これは投資家がIneosとその戦略、経営陣を信頼してくれていることを示している」と述べ、感謝した。
Ineos によると、2009年1-5月のEBITDA (総平均法ではなく再調達原価ベースによるもの)は314百万ユーロで計画を上回っており、2009年予算の売上高は152億ユーロ、EBITDAは11億ユーロで、元利返済に十分なキャッシュフローが期待できるとしている。
(EBITDA=税引前利益+支払利息+有形・無形固定資産減価償却費)
注)期首在庫の影響を避けるため、再調達原価ベースで計算し直した。
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Ineosは2008年11月に銀行団に対し、借入契約を2009年5月末まで免責するよう要請し、銀行はこれを受け入れた。
2008/11/19 Ineos の状況悪化
同社は本年5月末の期限の延長を債権者に要請していたが、5月27日、債権者の2/3以上の賛成で7月までの延長の承認を得た。
この後、Ineosは5カ年計画を作成し、銀行やそのアドバイザーにより詳細にチェックされ、いくつかのリスクシナリオごとにリスク量の計測がなされた(ストレステスト)。
4月には本年第1四半期の結果を元に、本年度の予算が債権者に提示された。
本年予算には大きなリストラや事業売却は含んでいない。
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借入契約に折り込まれている借入契約条項(Debt covenants)は、健全性の維持のため、現金残高と Interest coverageの最低レベル、借入金と資本支出の最高レベルを規定しており、これを破ると債務不履行となり、債権者は融資額の返還を要求できる。
今回、これら条件の緩和で債権者の了承を得た。
従来より緩和された新しいLeverage、 Interest coverage、Debt serviceなどのレベルは9月から適用される。
Interest coverage:営業利益/支払利息
Leverage:借入金/自己資本
Debt service:元利返済前cashflow/元利返済額
債権者は5ヵ年計画も承認した。
賛成した債権者は見返りに、直ちに50 basis points、1年後に更に50 basis points の同意手数料を受け取る。
(1 basis point =0.01%)
債権者はまた、200 basis points の金利上乗せを受けるが、これはPIK(payment-in-kind:現物支給)債券で受け取る。
(現金支払いでなく、後払いの債券で受け取る)
また、欧州銀行間取引金利(EURIBOR)を下限とする条件も了承した。
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なお、同社は引き続き、PetroChina 等との間でGrangemouth 製油所売却の交渉を続けている。隣接する石油化学プラントは同社が保持を続けると見られている。
2009/6/24 PetroChina がIneos の製油所を買収?
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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