Basell は2007年7月、 Lyondell の全株式を127億ドル(借入金込み 190億ドル)で買収することで合意し、LyondellBasell が誕生した。
1株48ドルでの買収で、45%のプレミアムとなっている。
しかし、世界経済の悪化により化学品の需要が減少、LyondellBasell は借入金負担に耐えられず、260億ドルの債務の整理のため、本年1月、Chapter 11 を申請した。
2009/1/7 LyondellBasell、Chapter 11 申請
この買収に直接関係する多くの人が大変なことになると指摘していたが、高収益と莫大な手数料に目がくらんで、これらの声に耳をかさなかったーーー。
New Yorkの破産裁判所での LyondellBasellのChapter 11 の審議で、債権者が提出した資料で明らかになった。
関係者は、借入金100%での買収により統合会社は莫大な債務を負うこと、統合会社の損益予想は意識的に水増しされていることを懸念していた。しかし、統合会社の長期的な健全性よりも、取引が成立すれば得られる利益をより重視するトップにより、無視されたという。
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2006年4月にBasell の親会社の Access Industries が Lyondell に対し1株24~27ドル(10%のプレミアム)での買収提案をした。
しかし、Lyondell は真面目に検討するには少なくとも20%のプレミアムが必要として拒否した。
Access の要請を受け、投資銀行のMerrill Lynch は28ドルという数字を出した。買収はよいタイミングだとしている。
しかし、Access内部では懸念が出た。
CEO のLincoln Benet はBlavatnik 会長に対して、石油・石油化学事業が下降すれば(既にその可能性が出ていた)、合併会社の事業運営、借入金返済に支障が出る可能性があるとした。
しかし、Blavatnik はこれを無視し、8月には Access は正式に26.50~28.50ドルでのオファを行った。Lyondell はこれを拒否した。
2007年初めにLyondell 株価は30ドルを超え、Blavatnik は35~38ドルでの買収提案を行った。
Merrill Lynchは38ドルでもやっていけるとの計画を出したが、Access 社内では買収に対する懸念と懐疑の声が再び出た。
資金がついてくるというだけで、莫大な負債を抱え込むのは長期的にまずいとしている。
しかしBlavatnik は、 Huntsmanや他の化学会社の買収失敗で、どうしてもLyondell を買収するとの強迫観念に取り付かれていたとされる。
同社の株価は更にアップし、Lyondellは48ドルという株価を逆提案、Blavatnik は社内の反対を無視し、これを受け、7月17日に合併が発表された。
Lyondellの2007年下期の利益予想も後押ししたが、後になって余りにも高すぎることが分かった。"Reverse engineering"手法(逆算手法)を使ったとされている。
合併は同年12月に行われたが、これにより Blavatnikは3億ドル以上、Lyondell社長は56百万ドル以上を得たとされる。
裁判では、Merrill や他の投資銀行が数億ドルの顧問料を得るために積極的に取引を推し進めたことを明らかにしている。
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