帝人は米国Cargill との合弁会社のNatureWorks LLCの保有持分50%全てをCargillに譲渡し、6月30日を以って合弁契約を解消した。
今後は、Cargill が全持分を保有することになり、将来の成長を目指してポリ乳酸ポリマーの生産・販売事業を継続して運営する。
NatureWorks は、1997年に Cargill と Dow の50/50JVのCargill Dow LLC として設立された。
2005年1月にCargillは Dow の持分を買収、100%子会社となった同社をNatureWorks LLC に改称した。
2007年10月、帝人が同社に50%出資した。
2007/10/6 帝人、Cargill のNatureWorks に出資
世界最大である年産14万トン規模のポリ乳酸ポリマー(PLA)の商業生産施設を有し、「Ingeo」ブランドのバイオポリマーを製造・販売してきた。
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今回、帝人は、事業の「選択と集中」を徹底する中で、独自開発の「バイオフロント(BIOFRONT)」に経営資源を集中し、技術開発・市場開拓をさらに加速していくこととした。既に2008年度にNatureWorks 出資に関わる損失処理を実施している。
帝人は2006年3月、武蔵野化学研究所と共同で新型耐熱性バイオプラスチックの開発に成功したと発表した。
ポリ乳酸(PLA)をはじめ、バイオプラスチックは耐熱性や耐衝撃性などの性能面において石油由来のプラスチックに及ばないが、新型耐熱性バイオプラスチックはポリ乳酸に使用されるL乳酸と、その光学異性体であるD乳酸を原料とし、両者のユニークな結晶構造が高耐熱性を生み出している。
・使用する原料が植物由来であるため、生分解性がある。
・融点は約210℃で、ポリ乳酸の融点を40℃も上回る。
(代表的な耐熱性プラスチックのPBTに匹敵)
・高耐熱特性により、既存のバイオプラスチック製の繊維では不可能であったアイロンがけも可能。
また、フィルムや樹脂の高温成型プロセスへの適合性も有している。
・透明性においても、PETを上回る高透明性を有する。
帝人は2007年9月、この耐熱性バイオプラスチックに帝人グループとして統一ブランドを「バイオフロント」とし、グループを挙げて具体的に市場展開を図っていくと発表した。
繊維 :帝人ファイバー
フィルム:帝人
樹脂 :帝人化成
その市場展開の第一弾として、帝人ファイバーがマツダと共同で、自動車内装に使用可能な品質と耐久性を有する「バイオフロント」繊維を100%使用した自動車用シートファブリックの開発に成功した。
本年6月、帝人は「バイオフロント」について、高温・高湿度下での耐久性を大幅に向上させることが可能な「加水分解防止技術」の開発に成功したと発表した。
バイオフロントは他のバイオプラスチックと同様に、高温・高湿度の環境においてはポリマーが加水分解を起こしやすく、PETなどに比べて使用条件に制限を受ける場合があった。
帝人では得意とするポリマー基盤技術の駆使と、分子レベルでの反応をコントロールする革新的な技術の創生により、 「バイオフロント」の本来有する耐熱性を損なうことなく、加水分解の原因となる要素をコントロールすることにより、それらの作用を極限まで抑制することに 成功したもの。
従来品と比較して10倍以上の耐加水分解性が発現することが確認されており、PETとほぼ同等の耐久性を 実現した。
これにより、既に採用されているカーシート用繊維として耐久性が向上することはもとより、電気・電子分野や自動車分野などにおいて、より高温・高湿度の厳しい環境にさらされる部品や部材として使用することが可能となる。
帝人は2008年7月に岩国事業所に年産200トンの実証プラントを稼動させたが、同時にトヨタから豊田市にある年産能力1,000トンの実証プラントを譲り受けた。(トヨタは実証実験にメドがつき、稼動を停止していた。)
解体して松山事業所に移設し、改造、本年8月から立ち上げるが、今回の改良技術を生かす。
同社は2011年度にも、年間3,000~5,000トンの生産規模で事業化する方針といわれている。
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付記
NatureWorksは7月9日、オランダに本拠を置く Avantium との提携を発表した。
Avantium は2000年2月にシェルからスピンオフして設立された。Pfizer、GSK、Eastman Chemical、WR Grace、Akzo Nobel などのコンソーシアムが出資し、戦略的パートナーとなっている。
同社は糖質からバイオ燃料、プラスチックを生産する技術を開発した。(製品名 Furanics)
Avantiumの製造技術とNatureWorksの市場開発技術を統合するもので、AvantiumのバイオプラスチックをNatureWorksがいろいろの分野でテストを行う。
* 総合目次、項目別目次
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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